レビー小体型認知症介護⑤『失禁・点滴・看護師の言葉』
毎日
尿失禁をする。
トイレの床が
ビシャビシャになっている。
お尻を床に擦って移動する為
廊下も尿の跡がついて
汚れている。
脱衣所も、台所も
玄関も、茶の間も
義母の部屋も
ソファーも座布団も
義母が移動した床
全部に、
尿臭がついた。
毎日、毎回、
洗濯洗剤を霧吹きで撒いて
床を拭き、
アルコール除菌をした。
うんざりした。
大人用紙オムツを渡し
説明した。
拒否すると思ったけど
すんなり履いてくれた。
後前は
見てないと間違える。
お尻を擦って動く為
尿とりパットは
ズレた。
尿とりパットをしないと
尿が漏れて
ビシャビシャになったが、
それでも、
布パンツよりは
マシだった。
座布団カバーの下に
犬のトイレシートを入れた。
布団の上とシーツの上には
防水シーツを敷いた。
お尻の部分には
もう一枚
半分の大きさの
防水シーツを巻いた。
失禁で濡れた衣類は
尿臭に強い
介護専用の洗剤を使った。
それでも、
完全には取れない。
自分の服に使うには
匂いの強い
柔軟剤を使った。
尿臭よりはマシだから。
オムツをしてる事を忘れて
トイレに行き
便座カバーやマットを
ビシャビシャにする。
もれなく廊下も。
『オムツしてるんだからトイレ使わないで』
は、
言っても無理な話で
だんだん
イライラしてきた。
でも、
犬達を怖がらせたら
いけないと思い
怒鳴ってしまいたい
気持ちを
毎日
必死に抑えていた。
使用済のオムツは
新聞紙に包んで
ダンボールに袋を被せて
その中に捨てていた。
夏
尿路感染症になった。
抗生物質を飲ませると
下痢をした。
湯船の中に
便が出てしまう。
洗っても洗っても
便が出て
キリが無いので
もう
オムツを履かせてしまおうと
タオルで拭くと
タオルにも便がつく。
どんなに気持ちを殺しても
臭いは避けられなかった。
辛かった。
病院の先生に
この事を相談すると
下痢止めの薬を出してくれた。
そしてそのまま
過呼吸を起こし
病院で
ニンニクの点滴をしてくれた。
暑い日だった。
診察前、
待合室にいた私を見て
看護師さんが
経口補系飲料水を
持って来てくれた。
「顔色が悪かったから大丈夫かなって思ってたのよ。」
「頑張ってるのね」
と言ってくれた。
その日
病院で
私が倒れたので
義母は
ケアマネージャーが迎えに来て
施設に泊まった。
「キツくなったらいつでも言ってね。いつでもいるから。」
「頑張った、頑張った」
と言って
看護師さんは
肩をさすってくれた。
頑張ったね
と言われて
涙が出た。
旦那に
過呼吸になってニンニク点滴してもらったと
話すと
「良かったじゃん」
と言われた。
「良かったじゃん」?
義母の下痢を止めてくださいと
相談に行って
過呼吸を起こして
ニンニク点滴をされて
良かったじゃん?
この時初めて
旦那に対して
嫌気がさした。
自分の置かれた
状況が
ハッキリとした。
あ、
ダメだ。
この人の意識は
こんなもんなんだ。
…は?
「良かったじゃん。」
じゃねーよ。
そこじゃねーよ。
誰のせいだよ。
次の日
施設から帰って来た。
下痢は相変わらずで
下痢止めは
気休めだった。
多少塊になる程度。
畳の隙間に
便が入り込む。
自分で取り替えようとする
義母の手や太腿にも
便がつく。
空気清浄機が気合を入れても
間に合わない。
デイが無い日は
便と尿に追われる日々。
義母を車椅子に乗せて
病院に行った時
看護師さんに
「何暗い顔してるの」
と言われた。
別にそんな意識は無かった。
でも、
その頃の私は
疲れていた。
レビー小体型認知症。
夜中寝ない。
布団に寝かせて
電気を消して
2階に上がると
下でガタガタ
音がする。
深夜
幻覚を見て
部屋の中を
グチャグチャにしたり
オムツを脱いで
布団に隠していたり
普通に歩ける人だったら
外に徘徊してたような
行動が
毎晩続いていた。
便と尿の始末と
匂い。
そんな時
看護師さんの
何気ない一言
心配してくれていたかもしれない
一言が
頭にきた。
「何暗い顔して。」
何って
何?
分からない?
どうせ…
結局
分からないんだ。
と…。
それから
内科の通院は
デイやショートの日に
連れて行って
もらうことにした。
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