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ヒッグス粒子


 神の粒子と呼ばれるヒッグス粒子は、他の素粒子に重さを与える素粒子です。標準理論における17種ある最後の素粒子が、ヒッグス粒子でした。標準理論とは、素粒子がどのように相互作用するかを解説したものです。最近、強力な加速器によって、ヒッグス粒子を人工的に作り出すことに成功しました。ヒッグス粒子は、その存在が予言されてから発見された素粒子です。

 【真空の相転移】

  すべての粒子は、ビックバン直後は質量がありませんでした。ビックバンの膨張によって、宇宙の温度は下がります。温度が1000兆度に下がった頃、全体の状態が変わり、真空の相転移と言う現象起こりました。真空に相転移とは、宇宙が誕生したばかり時の大進化のことです。真空の相転移によって、ヒッグス粒子が空間に充満しました。ヒッグス粒子が充満している方が、エネルギーが低い状態になります。例えエネルギーがなくても、真空はヒッグス粒子の性質を持っているのです。何もないように見える真空でも、ヒッグス粒子は存在しています。

 宇宙の温度が下がることによって、素粒子の自由度は増えました。均衡状態にあったものが、自ら崩れ安定することを自発的対称性の破れと言います。本来、どちらでも構わないものが、ランダムにある特定の方向を選んで、一つの状態に固定化することです。ヒッグス粒子の存在によって、さまざまな質量を持つ素粒子が誕生しました。 

 【質量の起源】 

  ヒッグス粒子は、粒ではなく、他の素粒子に質量を与え、「重さ」を作るものです。「重さ」とは、素粒子の「動きにくさ」のことであり、この動きにくさの度合いが、質量の大きさになります。ヒッグス粒子の発見によって、「重さ」の正体が判明しました。素粒子の動きにくさとは、すなわち抵抗です。ヒッグス粒子の抵抗は、素粒子の質量という形で現れます。素粒子は、ヒッグス粒子の抵抗を受けながら移動しており、その抵抗こそが質量です。これは、水中で水の抵抗を受けて速く走れないことに例えられます。もともと質量のない素粒子が質量を獲得する仕組みを「ヒッグス機構」と言います。 

 【ヒッグス場】

  ヒッグス粒子は、ヒッグス場という波です。全ての素粒子は、波でもあり粒子の性質を持ちます。場とは、ある状態が互いに隣り合っているものに波のように伝わっていくことです。ヒッグス場は、磁力の磁場と同じように空間的に広がった状態に例えられます。現在の宇宙は、ヒッグス場の中に浸った状態です。

 このヒッグス場には、目に見えない相互作用が働いています。素粒子の質量を決めるのは、ヒッグス場との相互作用の強弱です。相互作用の強弱によって、素粒子の移動速度が変化します。素粒子の質量が軽く、動きが早い場合は、ヒッグス場との相互作用が弱い状態です。逆に相互作用が強いと、質量が重く、動きがゆっくりとなります。

 つまり素粒子の質量とは、ヒッグス粒子との相性です。光子は、ヒッグス粒子との相性が最も悪く、何の障害もなく光速で移動します。物質の最高速度は、光速です。質量ゼロだと、素粒子は光速で走り回ります。もともと全ての粒子は、高速で飛び回っていました。それに重さを与えたのが、ヒッグス粒子です。ヒッグス粒子には、くっつく性質があります。まとわりつかれた粒子は運動しにくくなり、光の速さでは移動出来ません。このまとわりつかれやすさが質量となります。


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