第十八回ヒマラヤなんちゃって句会 winter special 「ヒマラヤ地」発表!!
Twitter@himahira19で行っていた句会の結果発表の三日目です。
毎回毎回書いているようですが、今回も混戦でした。
ものすごく大きく分けて「寒いきびしい」路線の俳句か「ふわっと優しい」路線の俳句となんとなく分かれるような気がして、俳句を選ぶという事においてどっちをとるのが正解なのかしばし悩みましたが、ここは「ヒマなん」です。気に入った句をやはり選び抜きました。
やっぱり『雪』はいいなぁー!チェーン巻くのはいやですけど。
本日はまず、今回の画像を提供してくださった村瀬っちさん・・・いや、
第57回北海道俳句協会賞唯一の受賞者の村瀬ふみやさんの選んでくださった「村瀬っちっ地」の発表をいたします!!
雪しづかあなたの星も夜ですか くもしろ薔
静かに降る雪を見て、遠くにいる人や亡き人を想う。そして語りかける。その二人の関係性が静かに心に沁みてきます。「も」が効いていますよね。「自分はひとりじゃない」「あなたもひとりじゃない」という絆を、作中主体が無意識に感じているんじゃないかな、と思いました。
ともしびの外なら雪でいられるね ツナ好
「ともしびの外」とは、つまり室外だろうか。室内は暖かいから、雪は溶けてしまって雪ではいられない。なるほど、確かに、うまい表現だなぁ。
でも、それなら当たり前すぎるので、これは「室内」と言うだけではなく、何かもっと深い意味があるんだろうな。 明るく暖かいところ以外でなら自分自身の真の姿を保つことができる。本当の自分の姿を見失わないために敢えて輝かしいと思われているところから外れる生き方。そんな矜持を感じました。そして、それを「いられるね」という、優しい語りかけで表現しているところが素敵でした。
さぁ!!そしていよいよ「ヒマラヤ地」はこの句です!!
凍星と微糖のファイア塾の帰路 阿部八富利
ボクの子供のころとは違って今の子供は勉強も大変なのでしょう。そんな子供が寒さに端を発して社会にいら立ちを覚えてついに魔法を使ってしまうのです。そう『ファイア』!!・・・。
いやいや、これは当然缶コーヒーでしょうよ。FFじゃあるまいし。
そもそも『微糖』って書いてあるじゃないですか。誤読なく缶コーヒーに誘導する『微糖』の存在はおもしろく句の後編に響いてきます。『塾の帰路』という事は塾講師の可能性も若干ありますが、まぁ学生で高校生くらいでしょう。だって『微糖』なんて飲むのは小学生じゃないんじゃないかと思うのです。少なくともボクは中学生くらいまでコーヒーなんて飲めなかったですしね。うん。
高校生の少年が暖を求めて飲む『ファイア』。『塾の岐路』に不意につくため息の先に光るのは『凍星』。希望の星でしょうか。なぐさめでしょうか。
繰り返す明日からの勉強の日々に『微糖』な思いを感じずにはいられません。ですが今夜の星は『凍星』なのであります。
どんなふうに見えているのでしょうか。
若き学生では長く感じるでしょうが、受験、卒業までほんの数か月なのです。『凍星』が希望の星であり、未来を照らす星であれと願うばかりです。
こっち向かない「また雪」と言ったきり このはる紗耶
一見してどうご覧になりましたか?
『こっち向かない』のは作中主体でしょうか、それとも一緒にいる誰かでしょうか。この二人はどういう二人なのかと考えると、ふと二人しかいないことに気付きます。『「また雪」と言ったきり』雪を見つけ続ける人と、『こっち向』いてほしい人。何気ない冬の一コマのなのかもしれません。
ひとつの例として、ですが、雪を見続ける人は、雪の多い地域から東京に来た人かもしれません。東京の雪はきっとそんなに積もりませんが、空から舞い落ちる雪に故郷を思い出しているのかもしれません。住んでいた時には日常で、散々苦しめられていた雪を懐かしく見続けているのでしょうか、故郷を象徴する雪を愛おしく眺めているのか。
もともと東京の人かもしれません。東京でも全く降らないわけでもないですから、数年前降った雪に思いを馳せているのかもしれません。
そんなこんなですが雪を見ている人に『こっち向』いてほしい人がいます。
別に特別な用事もないでしょう。けど、振り向いてほしい。恋人か夫婦かもしれませんね。けど、この人は声をかけず、「雪を見ている人」を見ている人になるのです。きっと雪を見ている人の心情を察しているのかもしれません。淡々とした書きぶりであるのに、なんと優しい気持ちの交差する俳句でしょうか。七・五・五のどこかさびしい余韻がこの句には合うとも思いました。
とある髙田さんからバースデーカードをいただいたのですが、開くとケーキやろうそくが飛び出してくるかわいい仕組みになっていたのですが、この句の構造もバースデーカードのように立体的な句じゃないかと思いました。
冬銀河指に鉛筆刺した跡 想レベル7
改めて「きごさい」で『冬銀河』を調べました。
「冬の夜空にかかる天の川のこと。冴え冴えとした趣がある。秋の天の川と違っていくらか明るさが弱い。」
一見派手な季語ではあるのですが、どこか凛としていて、どこか憂いがありますね。『指に鉛筆刺した跡』との取り合わせに唖然とします。
大きな大きな空から指にある小さい傷にズームインするという句ですよね。
見れば見るほどショッキングでしかたありませんでした。
尖った『鉛筆』を自分の『指』に何かしら『刺した』のでしょうが、細かい話になりますが傷を示す「痕」ではなく『跡』という字を使ったというのは大きな意味があるのかもしれません。むかしむかしの子どもってイジメるという意図もなく、尖った『鉛筆』を友達に『刺』すことなんてけっこうありました。もしくは喧嘩したのかもしれません。
ですが、たんなる傷痕の事を言いたいんじゃなく『指に鉛筆刺』すに至った軌跡を、『冬銀河』と取り合わせたのかもしれません。ほら!軌跡にも『跡』って漢字あるし。
ふざけあってか、またはつまらない理由で喧嘩した友達に『鉛筆』を刺してしまってそれを悔やんだとき、刺された子には「痕」は消えても、『跡』が残ります。刺した子に傷痕はつかなくとも、罪の意識や後悔という傷『跡』は残ることも。そんなこんなで色んな人に薄く心に残った『鉛筆』の傷跡を思いながら、『冬銀河』を見上げるのかもしれません。
大人になって傷が跡形もなくなって、そんな時代もあったねと『冬銀河』を見上げているのかもしれません。
うまく説明できていないかもしれませんが武田鉄矢の少年期を思い出しました。たくさんの傷の『跡』に心当たりがある人には『鉛筆』のように刺さる一句かもしれません。
雪しづかあなたの星も夜ですか くもしろ薔
「ヒマラヤ苺」でも雪と作中主体、または空と雪の美しき距離感を味わわせていただいた句を紹介させていただきましたが、こちらもロマンティックで素敵でした。素直に読み込むと作中主体は遠い遠い星に想いを馳せているのでしょう。手塚治虫の漫画のような壮大な遠距離恋愛です。パイロットに恋しているのでしょうか。まさかのモビルスーツ乗りかもしれません。
しかし注目していただきたいのは季語を含んだ上五『雪しづか』。
雪が降る夜であれば、『あなた』なる人物がいるかもしれない『星』は、きっと、厚い雲に阻まれて見えないのです。織姫と彦星のようですね。
まぁどうせ『星』を見ることができたとしても、どの星でどこにどうしているかなんてどうせわかるわけでもないですし、『星』が見えるかどうかは問題ではないのかもしれません。例えばそれが、『星』となってしまった人だったとしてもです。
『しづか』に降る『雪』は、想像を絶する遠くからボクらのいる地上に舞い降りてきます。いづれ溶けるというのに、白で町を隠してしまうように。
ひょっとしたらもっともっと遠くにいる『あなた』からのせめてもの送り物なのかもしれません。明日になったら溶けてしまう『雪』は、遠い『あなた』からの「空が明るくなって、『雪』が溶けるように忘れてもいいんだよ」というメッセージなのかもしれません。
『夜』のままでいたいであろう作中主体の呟きのような一句が、また哀しいですね。
本日はこれにて以上です!
明日はなつかしの「ヒマラヤ天」予想の日!
さぁどの句が「ヒマラヤ天」でしょうかね??ぜひ予想を!!
お楽しみに!
第十八回 ヒマラヤなんちゃって句会 FINAL!!
「ヒマラヤ苺」発表!!
「ヒマラヤ龍」発表!!
「ヒマラヤ天」発表!!
選句 本文 編集/ヒマラヤで平謝り
兼題画像/村瀬っち
SpecialThanks/髙田祥聖 カニくん
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かちょふげラヂヲ 第一夜 「花」「鳥」メガファイル
かちょふげラジヲ 第二夜 「風」「月」メガファイル
かちょふげラジヲ 第三夜 「会心の一句 1」メガファイル
かちょふげラジヲ 第四夜 「会心の一撃句 2」メガファイル
お試しで作ってみた項目ですので、本当にサポートしていただかなくてもいいのですが、万が一なんとなくそんな気分でしたら・・・!