ヒストリック視点から見る「ミスティカルアーカイブ」全カードレビュー

(カードレビュー部分は無料で全文読めます。投げ銭部分以降はおまけです)

・前書き

こんにちは、らすね(@Lacenaire_ssw)と言います。
あまり普段TwitterでMTGの話をしてませんが、実はヒストリック大好き太郎です。

 最近の活動内容はこんな感じです。
ヒストリック、特にマッチ戦は緩めのFNMみたいな楽しさがあるので、メタを貼ったアレンジデッキでラダーを登るのが趣味です。

 さて、ここからが本題。4月発売予定の最新セット「ストリクスヘイヴン:魔法学院」にて、ミスティカルアーカイブという形でこれまでのMTGの歴史にある強力な呪文が再録される事が発表されました。それと同時に、一部の強力なカードを除いて全てヒストリックで使用可能になることも明言され、身内のヒストリック界隈(主に自分)が大騒ぎ。
 そこから瞬く間に全てのカードと使用不可能カードが公表され、Twitterではヒストリックをやってる人もやってない人もみんな大騒ぎという状態になっています。

 スタンダードに既にあるカードを除くと、どれもかなり面白いカードだと思うのですが、同時に過剰に騒がれすぎじゃね?って思っているカードもちらほらあるので、Arenaのマッチ戦ラダーの環境を前提に自分視点でのレビューを書いてみようと思います。
 というわけで、上の《ディミーア家の食卓》を管理する者、オリバ氏の画像ツイートに乗っている順に、ヒストリックに初収録されるカードを全て1枚ずつ語っていきます。誤字脱字があったらTwitterかコメント欄でこっそり教えて下さい。

◆白

Teferi's Protection / テフェリーの防御 (2)(白)
インスタント
あなたの次のターンまで、あなたのライフ総量は変化できず、あなたはプロテクション(すべて)を得る。あなたがコントロールするパーマネントはすべてフェイズ・アウトする。(フェイズ・アウトしている間は、それらは存在しないものとして扱う。あなたのアンタップ・ステップにあなたがアンタップをするより先に、それらはフェイズ・インする。)
テフェリーの防御を追放する。

 ルールがハチャメチャにややこしい事で有名な統率者出身カード。最初の一枚なのにいきなり圧が凄い。ひとことで言えば、唱えたターン完全無敵になる効果を持っています。
 わかりやすく優秀で、【青白コントロール】なんかがゴブリンの猛攻を躱すために、メインやサイドにお守り代わりに取ると推測できます。今現在《残骸の漂着/Settle the Wreckage》が担当している枠ですね。名前通り《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》との相性は抜群で、ワンショットキルをいなしつつ返しに全体除去を撃ち込むシーンが発売後に各所で見受けられそう。コントロールやミッドレンジ相手でもPWを守れるため、有用性は非常に高い1枚です。

Day of Judgment / 審判の日 (2)(白)(白)
ソーサリー
すべてのクリーチャーを破壊する。

 再生できるようになった《神の怒り/Wrath of God》。ただしヒストリックに再生能力を持ったカードは1枚もありません。つまりは純粋な「2種類目」というわけで、たまに《翻弄する魔道士/Meddling Mage》を持ち出してくる青白系のウィニーやミッドレンジへの対策として2枚ずつに散らして採用されることになるでしょう。

Ephemerate / 儚い存在 (白)
インスタント
あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、それを追放する。その後それをオーナーのコントロール下で戦場に出す。
反復(この呪文があなたの手札から唱えられたなら、これの解決に際し、これを追放する。次のあなたのアップキープの開始時に、あなたは追放領域からこのカードをこれのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。)

 反復つきブリンク。同系のカードでは破格のコストパフォーマンスを誇っており、パウパーなどで暴れた実績もあるカードです。
 しかしながら、ヒストリックではブリンクというアーキタイプがいまいち奮わず、既に《一瞬の瞬き/Momentary Blink》などが同アーキタイプのテコ入れとして実装されていますが、カジュアルレベルですら成立はできてない感じ。ヒストリックの範囲では「軽くて」「使い回すだけでアドが増える」「クリーチャー」全てを満たすカードがほとんど存在しておらず、どうしてもパーマネント全般を対象とできる《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》には敵わない印象があります。
 優しい言い方をすると「これからのカードプールの拡充に期待」と言った感じでしょうね。あのまつがんも「同じ役割のカードが2種類あればデッキになると言っていたので、《熟考漂い/Mulldrifter》のようなカードの実装を待ちたいところ。

Gift of Estates / 土地の寄進 (1)(白)
ソーサリー
対戦相手1人があなたより多くの土地をコントロールしている場合、あなたはあなたのライブラリーから平地(Plains)カードを最大3枚まで探し、それらを公開し、あなたの手札に加える。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

 白の平等系土地サーチカード。如何にヒストリックと言えど、ここまで圧倒的なアドバンテージを稼げる軽いカードは貴重なので、ハンドの変換手段があれば輝くかもしれません。今あるアーキタイプに絞って言うなら、デッキほぼ全てをアーティファクトにしている【茶単】系のデッキが、サイド後に《不屈の巡礼者、ゴロス/Golos, Tireless Pilgrim》の踏み倒し能力のためにこれで土地を集めて来るプランを取ったりするのかな、という感じはしますね。もともと土地の種類は問わないデッキ且つ、マナファクトを潰されると途端にプランが崩壊しやすいデッキなため、これ1枚でリカバリが迅速に行えるのは見逃せない気がします。

Mana Tithe / マナの税収 (白)
インスタント
呪文1つを対象とし、それを、それのコントローラーが(1)を支払わないかぎり、打ち消す。

 最近は時のらせんリマスターでも再録され、古参を大いに湧かせた白の珍しい打ち消し呪文。
 アグロをメタる側の人間なので、アグロ側がこれを使って全体除去やPWの着地を妨害することを想像すると胸が苦しくなります。やめてくれ。《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》と合わせることで実質的に2マナ要求打ち消しみたいな事をしてくるのが容易に想像できます。(税収撃つ側も1マナ増えるけど)

◆青

Mind's Desire / 精神の願望 (4)(青)(青)
ソーサリー
あなたのライブラリーを切り直す。あなたのライブラリーの一番上のカードを追放する。ターン終了時まで、あなたはそのカードをそのマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。(それがそのマナ・コストの中にXを含む場合、Xは0である。)
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにそれより前に唱えた呪文1つにつきそれを1回コピーする。)

 前書きで触れたとおり、2021年3月27日現在MTG界隈を騒がせている問題児。登場時点からヴィンテージやレガシーで規制されたという華々しい(?)悪名を持つカードであり、ストームの悪印象と言えばこいつというイメージのある大悪人です。
 そんなカード実装してどうするねんウィザーズ?ついに売上のために環境破壊か?と言われがちですが、個人的にはそこまで暴れないんじゃないかと思っています。
 というのも、登場当時のスタンダード・エクステンデッドで【精神の願望】デッキが暴れた下地であるマナ加速手段、いわゆる「フリースペル」や「0マナのマナアーティファクト」がヒストリックにはほとんどなく、加えて手札で揃えるコンボを強烈に咎める《思考囲い/Thoughtseize》が黒いデッキには標準搭載されているため、手札で揃えてからスタートするチェインコンボは厳しいと思っているからです。……というより、ヒストリックの「強いデッキ」はほぼ「囲いを強く使える」デッキと言い換えても過言ではないほど、ヒストリックはコンボに対する圧力が強い環境となっており、騒がれたほど活躍せず消えていったデッキはとても多いです。(【エムリ―パラドックス】とか、【宝物探し】とかね)
 もし【ストーム】がTier1と言えるほど流行った場合、《エメリアのアルコン/Archon of Emeria》や《減衰球/Damping Sphere》が積まれたフェアデッキが出てきて【ストーム】を食い潰して終わるぐらいじゃないかな、というのが自分の予想です。外れてヒストリックがめちゃくちゃになったら笑ってください。

Blue Sun's Zenith / 青の太陽の頂点 (X)(青)(青)(青)
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードをX枚引く。青の太陽の頂点をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。

 元手3マナのXドロー。ただちょっと令和では微妙な性能かもしれない。散々騒がれた《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》ですら使われてないわけで、そもそも「完全に相手の動きをコントロールしつつ、スキを見て大量ドローする」という動きがあまり現代的ではない気もします。ヒストリックブロール向けかなこれは……。

Time Warp / 時間のねじれ (3)(青)(青)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはこのターンに続いて追加の1ターンを行う。

 追加ターンの定番カードがヒストリック入り。ヒストリックで使える追加ターンはどれも癖の強いカードだったので、素直な性能のこれは純粋に嬉しいところ。ただ、追加ターンという効果は盤面から勝ち筋が作れない限り「大振りな1ドロー+1土地プレイ」にしかならないことも多く、派手な効果の割に有効に使えるデッキがあるかと言えば難しいところ。既存のデッキなら、【スゥルタイ根本原理】の《アールンドの天啓/Alrund's Epiphany》の枠はこれに代わるでしょう。あのデッキだと1ターン稼いでマナを伸ばすのも無駄になりませんし。

 Brainstorm / 渦まく知識 (青)
インスタント
カードを3枚引き、その後あなたの手札からカードを2枚、あなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。

 下環境で大人気の青の定番カードが、モダンを飛び越えてヒストリックに参戦。てっきり使用不可枠だと思ってたのでびっくりしました。マジで。
 普通に使ってもゲームプランを作れて強いカードですが、前述の通りヒストリックでは《思考囲い/Thoughtseize》が大流行しているため、それの対策としても人気になりそうな感じ。あとはヒストリックでは数少ない手札→デッキトップの操作カードなので、《集合した中隊/Collected Company》や《集合妖術/Collected Conjuring》の前準備としてもどうぞ。

Memory Lapse / 記憶の欠落 (1)(青)
インスタント
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。その呪文がこれにより打ち消された場合、それをそのプレイヤーの墓地に置く代わりに、オーナーのライブラリーの一番上に置く。

 アドバンテージではなくテンポを取る打ち消し。コントロールデッキでは《検閲/Censor》などの確定カウンターの方が優先されるため、このカードは1ターンの価値が重たいデッキで使ってこそという感じ。【バントランプ】や【スゥルタイランプ】で《成長のらせん/Growth Spiral》と合わせて見ることになりそう。もしかしたらブレストと合わせて青単テンポなんかの復権もあるかも?

Compulsive Research / 強迫的な研究 (2)(青)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを3枚引き、その後そのプレイヤーは土地カードを1枚捨てないかぎり、カードを2枚捨てる。

 主に墓地を肥やすためのドロー呪文。これも青頂点と同じで「昔は使われてたけど……」枠な感じがします。インスタント版の亜種である《知識の渇望/Thirst for Knowledge》や《意味の渇望/Thirst for Meaning》ですらほとんど見ないカードなので……。ただ「ソーサリーである」という点は逆に差別点になり、《集合妖術/Collected Conjuring》を使った【イゼットフェニックス】はこれを積む必然性があります。実際に組んでみるとわかるのですが、ヒストリックのソーサリーで手札を切るカードは《航路の作成/Chart a Course》を除くと、ほとんど赤の「先に捨てる」カードばかりのため、意外と貴重な一枚だったり。同時に来る《信仰無き物あさり/Faithless Looting》と組み合わせてあるいは?

Tezzeret's Gambit / テゼレットの計略 (3)(青/Φ)
ソーサリー
((青/Φ)は(青)でも2点のライフでも支払うことができる。)
カードを2枚引く。その後、増殖を行う。(望む数のパーマネントやプレイヤーを選び、その後すでにそこにあるカウンター1種類につき、そのカウンターをもう1個与える。)

 実質無色3マナのドローカード。おまけとして増殖がついています。ヒストリックのラダーでは、ボーラス様各種をフィニッシャーに据えた【グリクシスコントロール】は人気が高いので、これはその補助として色事故を起こさないドローとして使われそうな感じもあります。もしくはセレズニアカラーの+1/+1カウンターデッキに引きまし+全体強化要因として入れてみても面白いかも。その場合は《スカルドの決戦/Showdown of the Skalds》あたりが対抗馬ですかね。

◆黒

Crux of Fate / 命運の核心 (3)(黒)(黒)
ソーサリー
以下から1つを選ぶ。
・すべてのドラゴン(Dragon)・クリーチャーを破壊する。
・すべてのドラゴンでないクリーチャーを破壊する。

 珍しい黒の(ほぼ)無条件全体除去。ただし、条件付きの全体除去の性能は近年に入って向上しており、ヒストリックでも《衰滅/Languish》や《影の評決/Shadows' Verdict》が広く色んなところを取れる定番カードとして居座っています。つまり、このカードを使う場合はドラゴンを巻き込まない事で差別化するしか無いのですが、現状それに見合うカードがあるかと言うと……。結局ドラゴンは高マナのカードが多いんで「マナ総量N以下」除去で事足りるのが悲しいですね。《仮面林の結節点/Maskwood Nexus》を使って自分だけ巻き込まない全体除去にするとか……? うーん。

Tainted Pact / 汚れた契約 (1)(黒)
インスタント
あなたのライブラリーの一番上のカードを追放する。このカードが、これにより追放された他のカードと同じ名前を持たないかぎり、あなたはこのカードを自分の手札に加えてもよい。あなたがカードを手札に加えるか、同じ名前のカードを2枚追放するかするまで、この手順を繰り返す。

 ややこしいことが書いてあるサーチカードであり、普通のデッキではほぼ使いません。これの真骨頂は「土地まで含めて全て別名のカード(=ハイランダー)にすることでデッキを全て追放する」事にあり、現に統率者戦では《タッサの神託者/Thassa's Oracle》の相方として有名です。軽いカード2枚で済むコンボのため、ヒストリックでも似たようなことができそうではあります。ちょうど、カルドハイム氷雪土地も来てハイランダー自体は難しく無くなってますしね。

Inquisition of Kozilek / コジレックの審問 (黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中から点数で見たマナ・コストが3以下の土地でないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。

 囲いの次に強い1マナハンデスカードと言えばこれじゃないでしょうか。【ラクドスアルカニスト】のようなハンデスを連打して相手を追い込むデッキをさらに強化する1枚になりそう。囲いと違ってライフが減らないので、中速系デッキのアグロをメタるサイドとしても確実に使われるでしょう。

Sign in Blood / 血の署名 (黒)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚引くとともに2点のライフを失う。

 いぶし銀なドローカード。ライフロスするドロ―の基準点のようなカードであり、これ以降の亜種はほぼおまけがついて3マナになっています。地味に相手に撃ってフィニッシュできるのもポイント。《才気ある霊基体/Gifted Aetherborn》《ファイレクシアの抹消者/Phyrexian Obliterator》などを得てもいまいちカジュアルデッキを脱せなかった【黒単】の救世主になりうるか? あるいは《死の影/Death's Shadow》の相方に積んでみるのもありかもしれません。

Tendrils of Agony / 苦悶の触手 (2)(黒)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは2点のライフを失い、あなたは2点のライフを得る。
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにそれより前に唱えた呪文1つにつきそれを1回コピーする。あなたはそのコピーの新たな対象を選んでもよい。)

 ウィザーズによるヒストリックでの【ストーム】推しを感じる1枚。個人的には【スゥルタイ根本原理】で根本原理から唱える3枚を「精神の願望+これ+巣穴からの総出」にして、どの2枚を選んでもそれなりの被害が出るようにするのが強いんじゃないかと疑っています。それが【ストーム】デッキかと言われると怪しい感じはありますが……。

Doom Blade / 破滅の刃 (1)(黒)
インスタント
黒でないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。

 平成中期あたりの定番除去。これもどちらかと言えば懐古よりのカードな気がしますね。《無情な行動/Heartless Act》《致命的な一押し/Fatal Push》との差別点を考えると、カウンターを乗せるクリーチャーが多く、かつマナ総量3・4のクリーチャーが多い【グルールミッドレンジ】に対しては腐りづらい除去になるので、このデッキがメタに上がってくるなら選択肢の一つになり得ます。

◆赤編

Chaos Warp / 混沌のねじれ (2)(赤)
インスタント
パーマネント1つを対象とする。それのオーナーはそれを自分のライブラリーに加えて切り直し、その後、自分のライブラリーの一番上のカードを公開する。それがパーマネント・カードである場合、そのプレイヤーはそれを戦場に出す。

 カラーパイを捻じ曲げまくっていることで有名な赤の除去。統率者戦ではよく見るカードですが、正直なところ二人対戦環境の強さが未知数すぎてよくわかりません。定番サイドになってる《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》と組み合わせることでクリーチャーも「ハズレ」に出来ますが、そこまでする必要があるのか?という。少なくとも赤には出来ない確定除去を実現してくれるカードなのは事実で、期待できる1枚ではあります。

Mizzix's Mastery / ミジックスの熟達 (3)(赤)
ソーサリー
あなたの墓地にあるインスタント・カード1枚かソーサリー・カード1枚を対象とし、それを追放する。これにより追放されたカードをコピーする。あなたはそのコピーをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。ミジックスの熟達を追放する。
超過(5)(赤)(赤)(赤)(あなたはこの呪文をその超過コストで唱えてもよい。そうしたなら、あなたの墓地にある各インスタント・カードやソーサリー・カードをそれぞれ追放する。これにより追放された各カードにつき、それをコピーする。あなたはそれらのコピーをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。ミジックスの熟達を追放する。)

 「呪文をリアニメイトする」ような挙動のカード。クリーチャーのリアニメイトと違って墓掘りの檻が効かないのがポイントで、実は精神の願望よりコイツの方がヤバいかもしれないと思ってたり。これも混沌のねじれと同じく、多人数戦セット出身カードなせいで実力の方は未知数ですね。どちらもヒストリックブロールでは大人気になりそう。

Increasing Vengeance / 高まる復讐心 (赤)(赤)
インスタント
あなたがコントロールするインスタント呪文1つかソーサリー呪文1つを対象とし、それをコピーする。この呪文があなたの墓地から唱えられていたなら、代わりにその呪文を2回コピーする。あなたはそれらのコピーの新しい対象を選んでもよい。
フラッシュバック(3)(赤)(赤)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)

 これ上記2枚と同じで、構築よりはカジュアルで人気のカード。ただし、現在のヒストリックには《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》をメインギミックとして動く【ラクドスアルカニスト】がいるため、「墓地から唱える」という条件は悠々と達成可能。火力呪文が3倍になって飛んでくる構築が生まれる可能性高しです。そうでなくても、一回目のキャストの時点でさえコピー系呪文としては相場通りのコストのため、普通に追加ターン呪文をコピーしまくる面白いデッキが組める気もします。

 Grapeshot / ぶどう弾 (1)(赤)
ソーサリー
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。ぶどう弾はそれに1点のダメージを与える。
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにそれより前に唱えた呪文1つにつきそれを1回コピーする。あなたはそのコピーの新たな対象を選んでもよい。)

  ストーム呪文その3。同時実装の他のストーム呪文と異なり、少ないストームではほぼ軽微な被害しか起こせないため、実質的にコンボ専用カードと言えるでしょう。ただし、何度も述べているる通りヒストリックではストームを稼ぐ手段が少ないため、このカードに声が掛かることは無さそうな感じも。最近スタンダードを騒がせている【ヴァドロックストーム】あたりのフィニッシュ手段としてワンチャンあるかな?

Urza's Rage / ウルザの激怒 (2)(赤)
インスタント
キッカー(8)(赤)(あなたはこの呪文を唱えるに際し、追加で(8)(赤)を支払ってもよい。)
この呪文は打ち消されない。
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。ウルザの激怒はそれに3点のダメージを与える。この呪文がキッカーされていたなら、代わりに、これはそれに10点のダメージを与え、そのダメージは軽減されない。

 なつかし枠。
 新しい常盤木能力の「護法」持ちの強いクリーチャーが増えたら、それを踏み越えられる火力として選ばれる可能性がないではないと思います。というか、そのためにミスティカルアーカイブに入ってそう。

Faithless Looting / 信仰無き物あさり (赤)
ソーサリー
カードを2枚引き、その後カードを2枚捨てる。
フラッシュバック(2)(赤)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)

 シンプルにして最強の手札交換カード。1マナで2枚掘れるだけで強いのに、何故かフラッシュバックが付いているという破格さ。ヒストリックのルーターが《来世への門/Gate to the Afterlife》《航路の作成/Chart a Course》《機知の勇者/Champion of Wits》しかないところにやってきた劇物。墓地対策がマスクと同じぐらい流行っているヒストリックでこのカードがどこまでやれるか、楽しみですね。

Stone Rain / 石の雨 (2)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。

 あらゆる赤の土地破壊カードの始祖がここに来てヒストリック入り。ランデス、好きな人は間違いなく居る戦略ではあるんですが、まあ当然メタには入ってこない印象です。有用な特殊土地を割るだけなら《幽霊街/Ghost Quarter》とその亜種がいっぱいありますし。集合妖術からハンデス呪文と一緒に唱えることで、相手の反撃手段を全部潰すようなスーパード陰キャデッキが組まれる可能性も無きにしもあらずかも。

◆緑

Primal Command / 原初の命令 (3)(緑)(緑)
ソーサリー
以下から2つを選ぶ。
・プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは7点のライフを得る。
・クリーチャーでないパーマネント1つを対象とし、それをオーナーのライブラリーの一番上に置く。
・プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の墓地を自分のライブラリーに加えた上で切り直す。
・あなたのライブラリーからクリーチャー・カードを1枚探し、それを公開し、それをあなたの手札に加え、その後あなたのライブラリーを切り直す。

 ザ・丸さの化身。5マナと重い代わりに絶対に腐らないカードと言っても過言ではないでしょう。丸さよりはシナジーを重視されるヒストリックでどれだけ使われるかはわかりませんが、個人的にかなり好きなカードなのでランプ系デッキに2枚ほど積むと思います。《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth》などと組み合わせて、4番目のモードで土地もサーチできるようにするのもおしゃれですね。

Abundant Harvest/豊穣な収穫 (緑)
ソーサリー
土地か土地でないかを選ぶ。選んだ種類のカードが公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ公開していく。そのカードをあなたの手札に、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。

この中で唯一の新カード。正確には発売予定のモダンホライゾン2からの先取りカードだそうです。《豊穣/Abundance》のソーサリー版となっており、次の展開に必要なカードを加えられるものの、あまりに不安定過ぎて採用には値しないように見えます。土地でないカードを一種類に絞る事で最終的に確実なサーチに出来ますが、コンボになるデッキはあるかなあ……。

Regrowth / 新たな芽吹き (1)(緑)
ソーサリー
あなたの墓地からカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。

 マジック黎明期に生まれた回収カード。しかしながら、令和のマジックではこれで回収するぐらいなら回収したいくらい強いカードを最初から4枚積んでおけばよく、また墓地回収に絞っても《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》という優秀なプレインズウォーカーがおり、さらには初動で引いても腐りづらい《バーラ・ゲドの復活/Bala Ged Recovery》という優秀な後輩もいて……と、コストパフォーマンスは良いものの他の強みがなく、ちょっと肩身が狭そうです。

 
Harmonize / 調和 (2)(緑)(緑)
ソーサリー
カードを3枚引く。

 シンプルイズベストなドロー呪文。ヒストリックにはタイムシフト元の《集中/Concentrate》もその亜種も存在しないため、この調和が最高のコストパフォーマンスのドローになります。強力なPWやシステムクリーチャーが多いマナ帯とは言え、ノーリスクで2枚手札が増えるのはこのカード独自の強み。ハンデスで消耗戦になることが多い環境なため、ランプ系のデッキで数枚積まれる事がありそう。

Krosan Grip / クローサの掌握 (2)(緑)
インスタント
刹那(この呪文がスタックにあるかぎり、プレイヤーは呪文を唱えられず、マナ能力でない起動型能力を起動できない。)
アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とし、それを破壊する。

 狙った置物を確実に破壊するインスタント。その分帰化より1マナ重くなっており、ヒストリックの環境においては「自分をサクって起動する」系の能力を持ったカードも「この置物を打ち消しで守って勝つぜ」という戦略もそう多くないので、今のところは《萎れ/Wilt》でも十分かなといったところ。新たな芽吹き、調和と合わせてカジュアル統率者線では定番のカードなので、ヒストリックブロールを組んでいる人には朗報な収録だと思います。

Weather the Storm / 嵐の乗り切り (1)(緑)
インスタント
あなたは3点のライフを得る。
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにこれより前に唱えた呪文1つにつきこれを1回コピーする。あなたはそれらのコピーの新しい対象を選んでもよい。)

 今回実装される他のストーム呪文とは違い、「守り」に特化した1枚。現状のメタゲームで使うことを考えるならこれが一番採用の目があるカードだと思います。アグロデッキと対峙したときに、相手のターンのエンドに《成長のらせん/Growth Spiral》→これと撃つことで、相手が動いているなら12点、そうでないなら9点回復できるのはめちゃくちゃ強い(日本語の注釈文だとわかりづらいですが、相手の唱えた呪文もカウントします)。「ライフを得るたび」能力と相性がいいのもポイント。

◆多色

Electrolyze / 電解 (1)(青)(赤)
インスタント
1つか2つのクリーチャーとプレインズウォーカーとプレイヤーの組み合わせを対象とする。電解は、それらに2点のダメージを望むように割り振って与える。
カードを1枚引く。

 オタクがめちゃくちゃ好きなカード(当社調べ)。性質は大きく異なりますが、アドバンテージを損なわない火力としては《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》がライバルになりそうです。あるいは両方使ってスタンダードで活躍した【イゼット・フラッシュ】のようなデッキを組むのもいいかも。

Lightning Helix / 稲妻のらせん (赤)(白)
インスタント
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。稲妻のらせんはそれに3点のダメージを与え、あなたは3点のライフを得る。

 電解とならんでオタクが好きなカード。火力弱体化が叫ばれて久しい令和の世の中においては「《稲妻の一撃/Lightning Strike》の不特定マナが白になっただけでゲインがついた」としか言えない最強カードです。現状のヒストリックではコントロールと言えば青白ですが、このカードの登場でジェスカイに移行する可能性も十分あります。稲妻の一撃と合わせてフルバーンが組まれる可能性もありそう。それぐらい期待値の高いカードです。

◆あとがき

この時点で総計12700文字。ここまで読んでくださった方、長々とお疲れ様でした。この文章を書いた時点では、まだミスティカルアーカイブが全判明しただけでストリクスヘイヴンのカードはほとんど見えておらず、ヒストリックの環境がどうなっていくかはまさしく未知の領域となっております。最初に述べたとおり、ヒストリックは競技税の集まるスタンダードに比べて大変「ゆるい」フォーマットであり、ワイルドカードが多数必要なことを除けば、おもしろギミックの実験場として楽しめる遊び場だと思っています。これを読んで興味を持たれた方、是非ヒストリックのランク戦に遊びに来てください、5テフェリーで土地を起こしてお待ちしております。

それでは。

(今回から投げ銭を導入しております。めちゃくちゃに熱意を込めて下調べをして書いた文章なので、「良かったぜ!」と思ったらよろしくお願いします。オマケとして、有料エリアには今月のヒストリックでダイヤ1まで上げるように使ったラダー登る用デッキと簡易ガイドをお付けします。)

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