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HILLOCKsession#1 さとさんを迎えて

素敵なゲストをお招きし、HILLOCK初等部のコンセプトを肴に、ワクワクドリブンで語り合う会。
その名も「HILLOCK session」。
記念すべき最初のゲストは、一般社団法人こたえのない学校の藤原さとさん。


実は何を隠そう、私たち3人は「こたえのない学校」が催行している探究学習実践型研修プログラムLearning Creators Labの同期、しかも同グループなのです!
半年間探究プログラムを回しながら、理想の教育観について深め合った経験は、今回の学校作りのきっかけとしても大きいです。
そんな思い出話も飛び出しました。

(みの)Learning Creators Labでは、ダイバーシティを大切にしていますよね。
(さと)教員だけではなく、さまざまな教育に関わる人たちを巻き込もう、というのはもともとは軽井沢風越学園校長の岩瀬直樹先生のアイディアなんです。いろいろな人が集まっている集団って、ただ優秀な人たちの集団よりもよいものができることが多いというデータもあるんですよね。何年かやってみて、教員と民間教育者や保護者、学生などがつながるよさを実感しています。


(みの)教員と学校外の人が繋がってプロジェクトをするのって、外から見ててもやはり難しいですか?
(さと)目黒区では、子ども教室事業といって公立学校の教室を一般開放して、外部者の人たちが子どものためにプログラムを実施できる仕組みがあったんです。私たちも、発酵の専門家さんと連携し、小学生がリンゴの酵母を家に持って帰りながら数週間育て、酵母の働きを観察し、学びながら家庭科室で酵母をつくったパンケーキをつくるワークショップをしたり、地域のスーパーと連携して、どこからどのような食べ物がきているのかをゲーム形式で学んだり、近くの公園の遊具取り替えの時期に目黒区さんと連携して、公園の使い方についてワークショップをやったりしました。そういう仕組みがないと、なかなか続けることは難しいですよね。良い探究的な学びをつくるには、準備やつなげるサポートに時間をかける必要があります。学校では、せっかく繋がりができても異動などがあって繋がりを継続するのが難しいですよね。他にも、謝礼の問題も正直なところありますね。スタッフに交通費も出せないようでは続きません。。
(みの)イベントやワークショップの効果ってどう感じてますか?
(さと)ワークショップは、毎日一緒に居る子たちではないから、成長を見届けられないというジレンマはありました。定期的に探究のプログラムをするようになってからは、学校に違和感を感じるような子が来ることも多くなりました。でも、そんな時学校では話せないことでも話せる空間を作ることで、子どもが生き生きする場所をつくれたことは励みになりました。
(みの)授業と単発のワークショップって、作り方が全然違うんですよね。子どもたちに多様な場所を作る意味でも、学校外の繋がりは大事だと思っています。でも、先生たちは外との繋がりに慎重になっているんです。癒着や情報漏えいなど、難しい問題もあるんですよね。
(さと)HILLOCKでは子どもたちにどんな子になってほしいと願っているんですか?
(みの)地域とつながっていきたいと思っています。例えば、砧公園のゴミ問題を子供と大人が一緒に解決していくような。大人も地域性が希薄になっていますよね。ヒューマンライブラリ(学校に協力できる大人のリスト)をICTベースで構築してつくって、外につながる機会、専門性のある人と繋がれる機会をつくりたい。趣味レベルでもいいんですよね。人とつながるだけでもとても有意義。セレンディピティにも期待したいです。
(さと)そうそう、有名な人である必要はないんですよね。青年会議所とつながると面白いですよ。二世の社長さんなども集まるので。横でつながっていることが多いんです。有名かどうかではなく、仕事を心から楽しみ、地域に貢献したい人と子どもとを繋げることが大事だと思います。私たちのキャリアプログラムでは、プロの方に、仕事上で何を一番大事にしているのかを聞き取ることからスタートしていました。あるデザイナーさんのプログラムの時には、デザインでは「おもいやり」が一番大事だということだったので、「お母さんのためのコースター」をつくることにしました。そのデザインの中では、結露がコースターにしみないか、てなじみがいいか、もしくはお母さんの気持ちを明るくするような色がいいのか、などなど、さまざまなことを子どもたちは考えました。
(みの)探究の授業も一緒ですよね。先生も、すべての専門家ではない。一緒に面白がれる人の方が、案外子どもと熱量が一致したりするんですよね。先生が大変ってよく言われますが、それって探究の大変さよりも雑務の大変さの方が大きいと思っています。探究は本来楽しいものなので。
(さと)探究は「子どもに学ばせる」ではなく、「一緒に学ぶ」ことで、大人も得する学びです。子どもは子どもにしかない目線と楽しみがあるんですよね。それを面白がれるかどうか。子どもと一緒に学ぶということが、自分の学びでもあるという視点に立てるかが大切だと感じます。
(みの)公立小学校時代に、子どもを知る時間を作ってました。給食の時間にリクエストされる音楽や貸してもらった漫画から、学びのきっかけが生まれたりするものです。
(さと)何からでも学べると思ってほしいなら、教師も何からでも学ぶ姿勢が必要ですよね。
(みの)アーティストや科学者は心から「子どもってすごい」って思っていますよね。知識量でなく、感性の素晴らしさは特に子どもから教わることが多い。さとさんは学校を作ろうと思ったことはないのですか?
(さと)時々聞かれますが、それがないんですよね。子どものみとりひとつとっても、先生のほうが上手ですし。時々ビジネスマンが教員を批判することもありますが、「一度教壇に立ってみたら?」と言いたくなります。教員は教員の素晴らしいスキルとプロフェッションがあります。企業時代もプロフェッショナルを支援することが好きだったので先生たちのプロフェッションを尊重しつつ、先生ができないところで協力できればと思っています。
(みの)プロデューサーの堺谷さんも前に出ないタイプなので、似ているかもしれませんね。私自身は、思いついたらやりたくなっちゃうタイプです。笑。Learning Creators Lab発足のきっかけは何だったのですか?
(さと)当時は子どもむけのプログラムをそのままよくしていきたいと思ってました。でも、当時一緒にやっていたメンバーが、大人向けのものをやりたいと言って。でも、私たちが研修したところで、だれかが来てくれるとも思えないし、イメージがつかないまま1−2年過ごしていました。そんなある日、知人の医師がチーム医療で、年間のプロジェクト研修をしているのを見て。これを教育に応用できないかと思ったんです。そこで、そのアイディアを仲間とつくり、講師になっていただきたい先生がたに見てもらったところ、トントンと話が進みました。全体のアドバイザーを岩瀬直樹先生が引き受けてくださったのも大きかったです。
(みの)学校の職員室ってチーム体制を取りにくいんですよね。みんなが同じことをしないといけない。得意なことをやった方がいいのではと、ずっと思ってきました。コラボレーションの大切さを理解できるといいですよね。最後に。HILLOCKでやってみたい授業ってありますか?
(さと)「教育」というフィールドに私がいるのは、世の中を渡っていけるような勝ち組の子たちを単純に育てたいからではないんです。そうではなく、いい社会をつくりたいと思っているんです。なので、個人プレーで、能力を伸ばすだけよりも、学校にはいい社会の担い手を育ててもらいたいと思っています。今、海外脱出がかっこいいことになっていますが、そんなお金と能力のある人ばかりではありません。障害があったり、お金がなかったりする人ほど、その国を出ていくことは難しい。そんな中で、「あなたたちはこの国に相応しくないから出ていってくれ、死んでくれ」というのであればナチスと一緒です。弱者と言われる人には海外脱出の選択肢はないんです。私が公教育を好きなのは、学校自体が将来の社会の担い手を育てられるからなんです。肢体不自由があっても誰かの役に立てます。。知識や勉強ができるよりも、思いやりをもてる子になってくれたらうれしいと思ってます。
(みの)クラスって一つの国みたいなものなんですよね。クラスでできることは将来社会でもできる。
(さと)HILLOCKはオルタナティブなので、公立とは違う。でも、多様な子がいればいいというわけでもありません。環境によっては、その子たちが冷たく扱われることでマイナスになることだってある。そういう意味でもオルタナティブや私学が、ノブレスオブリージュの感覚を育むことはとても大切。知識は大切だけれど、それだけではない、よりよい社会に向けた学びをしてほしいと思っています。期待しています。

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GW明けの平日夜でしたが、80名近い方にご参加いただきました。
チャット欄でも示唆に富むコメントが多く寄せられました。
さとさん、ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました!



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