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HILLOCKsession#3

素敵なゲストをお招きし、HILLOCK初等部のコンセプトを肴に、ワクワクドリブンで語り合う会。
その名も「HILLOCKsession」

第3回のゲストに、一般社団法人 FutureEdu 代表理事/一般社団法人 Learn by Creation 代表理事の竹村詠美さんをお招きしました!
ご自身も世界を舞台にキャリアを重ねられ、現在は教育のアップデートに注力されている詠美さん。
世界の最前線の教育や学びなど、グローバルな視点から学びやHILLOCKの方向性についてお話しました。

蓑手:GIGAスクール構想で、学校では1人1台使わなければいけない、となっているが、実はイノベーションの可能性をかなり秘めていますよね。今までできなかったものができるようになった。学習環境として非常に理想に近付いてきている気がします。

竹村:子どもはICTをつかうと、どんどん学びの螺旋階段を登っていくことができます。絵は苦手な子と得意な子が分かれやすいけれど、ICTを使えばより気軽に絵を描いてみることもできますもできる。絵が好きになってきたら、あとになってデッサンのような基礎を学びたくなるかもしれません。必ず鉛筆からICTという順番に捉われず、チャレンジを促進するツールとしてICTを使っていくことが大切ですよね。

蓑手:物事を学ぶ順番は大切だけれど、順番に囚われすぎると先にすすめないことってありますよね。

竹村:そうなんです。人によって学び方や学ぶ順番が違っても良いはずです。例えば赤ちゃんが歩くステップを研究した本でも、一人ひとり歩くようになるプロセスはかなり違うことがわかっているんです。

蓑手:山の登り方はそれぞれ違うし、頂上を知っているから辛い山道も頑張れる。頂上を知らない子どもにそれを強いるのは、ちょっとおかしいですよね。

竹村:取り組んでいる活動に対して高い完成度のイメージを持てるといいですね。プロジェクトの始まりで、関連したワクワクする体験をしながら、探究の問いを深めるなかで、より高度な問いに向かう場合ので、徐々に頂上のイメージへの解像度を上げるのもよいでしょう。目指すイメージを高く持つことで、「自分がやっていることが足りない」と感じて、やり抜く力も育ちます。

蓑手:目的が分からない中でやり抜くとなると、大人の叱咤激励のみが学びの要因になっちゃいますからね。笑。

竹村:自分が発見したとか、自分で身についたという経験の積み重ねが学びの喜びに繋がりますよね。できるだけ早く正解に辿り着けるように丁寧にとき方を教えるような効率主義は、学びの楽しみを知る機会を奪ってしまうように感じます。

蓑手:社会が「はやい、やすい、うまい」にとらわれすぎてしまっているんですよね。それだけが幸せの形じゃない。自分も、スティーブジョブズのconnecting dotsではないけれど、自分のいろいろな経験が今生きている感じがするんです。うちは幼少期TVゲームが禁止でしたが、自分の弟たちにアナログゲームをつくってました。だからゲームクリエイターになったかと言われればそうじゃないけど、今の自分の学級経営とか授業作りにとても生きていると感じるんです。

竹村:自分も幼少期に切手を集めるのが好きで、自分でお店を調べて色んな場所のお店に行ってました。内発的な動機で動いていたので、自ら整理や分類をしたり、交換の交渉をしたり、文通相手を見つけて情報交換したり、さまざまな今にも活きるスキルを身につけることができました。

蓑手:周りの人が「邪魔しない」ことが大切ですね。弟も小さい頃からプログラミングをやっていて、ゲームをつくっては私にやってみてと言われたんですけれど、正直つまらなかった(笑)。けれど、それが続いた結果、小学校のうちに全国大会でグランプリをとったり、高校では人工衛星を打ち上げるサークルに入ったり。今はヘッドハンティングされて、AIの研究をして起業しています。

竹村:Hard funという「簡単には手に入らないけれど、努力の先に楽しみや達成がある経験」があることも大切で、それが生涯持ち続けられるように子どもの頃育めると良いですね。蓑手さんもそういう経験があるのではないですか?

簑手:「ない中でどうするか」という思考はすごくしている気がします。ゲームがなくても、家にチラシやテープがいっぱいあったので、それを使って遊ぶ物を作ったり。ゲーム禁止だったころは、親が買い物している時にこっそりやったり(笑) 教員時代もそのような「ハックをする」という感覚はありました。竹村さんのおうちはゲーム、どうしてますか?

竹村:ゲームだから禁止、ということはないですね。ゲームから学べることもたくさんあります。子どもたちが何に、どの様に夢中になるかについては、たくさん会話をする中で、親としては可能性を広げるお手伝いを心がけています。

蓑手:私も子どもが2人いるんですけれど、「ずらす」ということをやっています。電車の何が好きなのか、音なのか、形なのか、いろいろな視点がありますよね。そういう要素を見つけて、似たようなものを紹介することもあります。学びにおいて大切なのは仲間が大切。仲間がいると色々な視点が集まるので勝手に「ずれる」んですよね。

竹村:そうすると視点が増えますものね。

蓑手:自分の好きなことをより具体化していくといいのではないかな、と思います。駅員さんがいいな、と思ってもこの先駅員という仕事がなくなるかもしれない。けれど、電車にどう関わるのが好きなのかを考えると色々な関わり方がある。自分がこの要素の何が好きなのかと考えられるといいと思います。

竹村:お子さんのキャラクターによっても違いますよね。承認されたいのか、つくりたいのか、何を求めているのかを理解するのが大切ですね。

蓑手:HILLOCKでは「先生」と呼ばず「シェルパ」と呼んでいます。「シェルパ」はヒマラヤ登山のプロガイドから来ているのですが、いろいろな山の登り方を紹介できればいいなと思っています。

竹村:おっしゃるとおり、登り方を色々知るなかで、自分らしい登り方を見つけて行って欲しいですよね。主体的に自分の人生を生きるには、自分らしい学び方を知ることは大事ですよね。自分も就職活動をしていたときも同じですね。働き方に重要視していたのも、転勤しやすさで選んでいたと思います。
子どもが2人いたんですが、上の子が小学3年生の時にあまり楽しそうではなかったんですね。当時の自分にはどうして楽しくないのかわからなかったんですが、子どもの一日の生活をなぞってみるとつまらない理由がわかってきました。そうすると教育自体に興味が出て、海外の事例なども調べるようになりました。個人的には、受験の時に学びが嫌いになった時がありましたが、そのあと学びがあらためて好きになりました。

蓑手:自分も学校の勉強が大嫌いだったのですが、大学に入っていろいろな物に触れた時、学びがあらためて楽しくなりました。もし竹村さんが学校をつくることになったらどんなことをしたかったり、伝えたかったりしますか?

竹村:自分を大切にする、ということを伝えたいですね。自分が大切だからもっと成長したい、となると思いますし。自分を大切にするという習慣を持てるような学校にしたいですね。外側のことを学ぶことばかり求められすぎてる。もっと自分のことを理解する機会を増やしてあげたいですよね。

蓑手:HILLOCKでも、自分を理解するということを大事にしたいと思っています。流れの中で「社会性と情動の教育(SEL)」に行き着き、そこで竹村さんのお話もかなり参考にさせていただいてます。w
自分たちの実践を理論に結びつけたり、「これしか教えちゃいけない」という条件だったら何を教えるか、といったところから、自分たちの教育観のルーツを洗い直す作業もしていますね。

竹村:HILLOCKの学びは教科の学びと探究の学びどちらも大切にしているところがいいなと思いました。西欧的な「分解することと、それをつなぎ合わせること」を大切にされているなと思いました。

蓑手:はい。今はハッティなどの学習科学の本などを読み合わせしていて。学びが成長につながる中で、自分に対する気付きであるとか、自己肯定感・自己効力感につながることってあるんだよなと、学校現場で多く感じてきました。

竹村:自分のことを大切に思えないと社会のことも大切に考えられないと思います。個が幸せになるからこそみんなも大切にできるというか。
同時に評価の難しさも感じます。多面的な評価をどうしていくかが大切ですね。この評価が絶対だ、と思い込まないことが大切ですよね。最終的には自己評価が大切だと思います。

蓑手:HILLOCKでも、福利(ウェルビーイング)を最上位目標に掲げています。それが拡張されていく、なりたい自分になれる実感を、子どもたちには体感して欲しいと思っています。
ありがとうございました!


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