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現物株とキャッシュ+先物買いのペイオフの確認

前回、現物とキャッシュ+先物買いのペイオフは同じという話をしました。証券アナリスト試験を受けたことがある方は馴染み深い無裁定条件による先物の理論価格を思い出せばすぐに確認できます。

まず、現物のトータルリターンから確認しましょう。期初の時点のある株価を$${P_0}$$とし、$${P_0}$$のキャッシュを保有しているとします。これでこの株を1単位購入します。期末時点の株価を$${P_1}$$、配当を$${D}$$とすると、期末時点の時価総額は、$${P_1+D}$$で期末株価と配当の合計になります。

これを期初時点の株価で割って1を引けばリターンになるので、$${ \frac{P_1 + D}{P_0} -1=r_e+d  }$$となり、株価リターン$${r_e= \frac{P_1}{P_0}-1}$$と配当利回り$${d=\frac{D}{P_0}}$$合計になります。

さて、次にキャッシュをそのまま保有し、先物を1単位買い建てるケースを考えます。以下より期初時点の先物の理論価格は、$${ P_0 \times (1+r_f-d) }$$です。ここで、$${r_f}$$は短期金利(リスクフリーレート)です。ここでは簡単のために1期を考えます(以下の日数が365日)。

出所:大和証券(https://www.daiwa.jp/glossary/YST0634.html)

期末時点ので時価総額は先物の損益にキャッシュで運用した$${(1+r_f)P_0}$$を合計したものです。期末時点の先物の損益は反対売買を考えればよいですが、満期の先物理論価格は現物と同じです(上記で日数を0にすればよいですね)。よって、期末時点の時価総額は$${P_1 - P_0 \times (1+r_f-d)+(1+r_f)P_0 = P_1+dP_0=P_1+D}$$で現物と同じになりました。期初の時価総額$${P_0}$$でこれを割って1を引けばリターンがでますが、結果は現物同じ、$${ \frac{P_1 + D}{P_0} -1=r_e+d  }$$ですね。

理論上、現物とキャッシュ+先物買いのリターンが同じことが確認できました。この結果は不思議でもなんでもなく、そうなるように先物の理論価格を定めるからです。理論価格から乖離すれば裁定取引が可能なので結局、理論価格に収れんすると考えます。

違う言い方をすれば先物には配当がないので配当利回り分、先物の理論価格は安くなるのです。そうでなければ誰も先物を買いません。その結果、先物価格が下がるわけですが、どこまで下がるというと無裁定条件が成り立つ配当利回りの$${d}$$分、割り引かれるところまで下がるのです。

短期金利(リスクフリーレート)についても同じことが言えます。先物を買い建てることでキャッシュを保有したまま株式のリターンが手に入ることになってしまうので、キャッシュのリターン(短期金利)分、キャッシュ+先物買いの方が有利です。この結果、先物の価格が上がるわけですが、どこまで上がるかというと、やはりここでも無裁定条件が成立する短期金利分の$${r_f}$$だけ先物の理論価格が高くなります。

結果として、先物の理論価格は$${ P_0 \times (1+r_f-d) }$$となるのです(簡単化のため期間1期とした場合。期中であれば以下(再掲)のように日数按分の項が入ります)。

出所:出所:大和証券(https://www.daiwa.jp/glossary/YST0634.html)

ご参考になれば幸いです。


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