2021年に聞いた音楽

 要は年間ベスト企画です。私は好きなアーティストの年間ベストを毎年楽しみにしているし、みんながその年にどんなものに感動したりいい気分になったのかを知ることは勉強にもなるし単純に楽しい。あとは自分の1年を振り返るメモ書き的なものにもなるから、ざざっと書き連ねていくことにする。なお当方Apple Musicユーザーなので載せるのもそのようになっとります。

Boris & Merzbow「2R0I2P0」

 ライブラリの「今年」の項目で一番古かったのはこのアルバムだった。2020年の秋発売のアルバムだけど、今年に入ってから知ってそれから1年中聞いてた。タイトルの意味は“Twenty Twenty R.I.P.”で、厳しかった2020年への鎮魂と未来への再生の意味が込められている。両バンドの良さが出まくっていて、広がりのあるノイズと浮遊感と爆発力が自分の好みにかなり刺さった。2021年は2020年ほど厳しい1年ではなかったけど、コロナ関係なく自分の日常にある辛みを葬ってくれた1枚。


Ahh! Folly Jet「犬の日々-THESE DOG DAYS」「Abandoned Songs From the Limbo」

 友人に教わってから、自分の「人生ベスト」に仮登録してある曲「犬の日々」が今年ついにデジタルリリースされたから即購入。さらに「Abandoned Songs From the Limbo」がサブスク解禁と、ありがてえニュースが続いた。「犬の日々」は原曲よりもAhh! Folly Jet版の方が好きで、完璧すぎる、歌詞もサウンドも!「Abandoned Songs From the Limbo」の方も名曲「ハッピーバースデー」含めアルバム全体がとても気持ちいい。車を手に入れたら絶対に流しながら一人でドライブしたい。前職で一人スタジオに籠って写真を撮りながらよく流して仕事してたのを思い出す。
 2019年にMOCKYと対バンがあったのに行かなかった私は本当に愚か者だ。



スワヴェク・ヤスクウケ「ミュージック・オン・キャンバス」

 「雨と休日」さんのTwitterをフォローしておけば、良質なアンビエントやピアノ系の音楽を知りまくれる。その中でスワヴェク・ヤスクウケのこのアルバムは一番聞いた一枚。2020年も「Park Live.」というほんとに公園で演奏しているアルバムが良かったけど、今回のはきちっと録ってあるやつ。ピアノの残響音が深くてずーんと届いてくる、特に低音がすごい。海に抱かれているみたい。タッチも綿みたいに柔らかくて、気持ちがフラットに整えられる。
 コロナ禍に入ってからピアノのアルバムを聴く頻度がかなり高まった。本能的に音楽に癒しを求めまくっているからだと思う、ほんとに、疲れたもんね。

宇多田ヒカル「One Last Kiss」

 

 説明不要!すぎる曲。どうしてもかの映画にイメージを引っ張られてしまうけど、いや一つの楽曲としても最強でしょう。バケモン。1曲に詰まったアレンジの数々、サウンド、歌詞、無敵すぎて全員土下寝するしかない。可能な限りいい音響環境で聞こう。
 ところで1番のAメロからBメロへ移るときの拍の取り方がいまだにわからないから助けてほしい。

 

サトミマガエ「Hanazono」

 Grouperがアンビエント界の頂点な自分にとって、この音楽はぶっ刺さりすぎた。アシッドフォーク的などんより一生曇り空なギターと引きずり込まれそうな歌声。ちょっと自分には効きすぎて危険だけどドストライク。いやほんとに危険だから、メンタルの調子が悪い時には聴くのを控えた、手が伸びそうになるのを抑えて。
 教えてくれた友人が「リアルにリリィシュシュがいたらこんな感じかも」みたいなことを言ってたけど、ほんまそれです。


阿部海太郎「Cahier de musique / 音楽手帖」

 ”舞台や映画音楽で活躍してきた阿部海太郎が、NHKのTV番組に書き下ろした楽曲をまとめたアルバム” 僕は阿部海太郎さんのことは知らなくて、このアルバムもどこで知ったかすっかり忘れてしまったけど、これもめちゃんこリピートして聞いた一枚。どの曲もすさまじいクオリティで、聞いた後の満足感がすごい。NHKに出しているだけあって、正しく清くまっすぐな音楽という印象で、驚くほど自分の中にもすっと入ってくる。
 7曲目の「Reflections in a palace lake」はベンチャーズが渚ゆう子に提供した「京都慕情」という曲のカバーなんだけど、これが一番のお気に入り。歌詞は京都と恋のことを歌ってるけど、なぜか自分の故郷のことや家族の暖かさを思い出して、2年帰省できていなかったのも相まって少し泣いた。

少女☆歌劇 レヴュースタァライトの楽曲たち

 リアルタイムで見たときにこの作品のことを理解できなかった当時の自分に9時間説教したい。お前は何を見ていたんだ。
 作品のことはいったん置いといて、いや置いとけないけど、とにかくレヴュー曲も主題歌も、どれもこれも大好きな曲ばかり。特に劇場版2作品の主題歌の溢れるパワーたるや。辛い時期にずいぶんと助けられました。

まぶしいからきっと見えないんだ
私たちの行き先
すぐに見つけに行くからね
丁寧に合わす衣装のように
私にピッタリの未来が待ってるんだ

「私たちはもう舞台の上」 より

九九組に心からの感謝を。
アクリルスタンドはよ届いて。


ずっと真夜中でいいのに。「あいつら全員同窓会」

 ずとまよとか、この周辺の音楽は全然自分の好みじゃないと思っていだけど、この曲だけはなぜかハマってしまって一時期リピートして聞いてた。何かに共感したわけじゃなく、1回目のサビでぐっと音数を減らしてちょっとスカスカにするアレンジがいいなと思った。インターネットだなぁ。


宝鐘マリン & Yunomi「Unison」

 我らが船長が夏ごろに投下した電子ドラッグ爆弾。あの頃狂ったみたいにこればかり聞いてたな。いやしかし、改めて聞いても素晴らしい曲ですね。Yunomiさんの曲ももちろんものすごいんだけど、これ何より船長の歌表現がめちゃんこいい。歌詞に合わせた多彩な声色や込められた感情、特に最後のサビはもはや泣きそうになってくる。いやこれは「君たち~」として訓練されすぎたせいだろうか…。
 Vtuberというコンテンツに爆ハマリした1年だったけど、音楽面に関しては全然いいと思える曲がなかった中でついに来たかという曲だった。V関連だとあとは委員長のアルバムとぷてちの曲も良かった。


パソコン音楽クラブ「See-Voice」

 アルバムの完成度メーターが振り切れてしまっている傑作。全体を通して自分の記憶や想像の中の”海”を全部引っ張り出されてしまう、映像的なアルバム。パ音らしい見事なインターネット的音作りも非常に好みで、5曲目の「Aqua Glass」は完全に”昔のRPGの名曲”なんだけど架空。通して40分程度に詰まった青い世界には、息継ぎ不要で何度でもダイブ可能。
 これ聴いて「海行かなきゃ!」ってなったのに結局行っていないのは雑魚でしかない。


Grouper「Shade」

 10月末の個人的絶望のさなかにリリースされた、愛するGrouperの新譜。ありがとうという気持ちでいっぱいだ。
 Grouperの音楽はどこまでも孤独。けどそれは世間にあるようなネガティブな孤独ではない。それが自分がGrouperのファンになった理由だと思う。どんな場所にいても、このアルバムを聴けば自分の一番深いところで独りになれるし、そこで記憶とじっくり対話することができる。失いかけていた感情だったり、ぞんざいに扱いかけていた大切なものたちを抱き上げることができる。日の当たる部屋にこれからも住んでいたいと思える。これからも孤独でいたいと思える、ネガティブな意味ではなく。
 この作品を通して見えてくる景色に、必ず自分の足でたどり着きたい。常に自分の声に耳を傾けながら、きちんと休息をとりながら、正しく誰かを愛しながら。



宗藤竜太「magenta」

 なるべく多くの人が、このアルバムを聴いてほしいと切に願う。


さいごに

 ディガーではないので、あまり真新しいような音楽はここに無かったかもしれないけど、最後まで読んでいただきありがとうございます。みなさんの2021年も知りたいので、何かしらの手段でみんな発信してほしい。
 はっきり暮らしと聞いたジャンルがつながっているのがわかるようなラインナップで、音楽ってそういうものだなと再確認。来年もしっかり生きて、いい作品に出会えるのを楽しみにしています。





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