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蓮の花茶会のおはなし

はじめに

こんにちは。シンガーソングライターの引田香織です。

季節を感じる大人のがっこう「te+te」(てとて)さんの、人気爆あがりイベント「蓮(はす)の花茶会」が、ご近所(家から3分!笑)で開催されていて。
毎回すぐ満席になっちゃうのですが、前夜にキャンセル枠が出たとのおしらせ!ラッキーなことにドタ参加させていただきました。

te+te さんの素敵なガレージ。

今日はその体験レポートをお届けしたいと思います。
炎暑の8月がはじまりましたが、ひととき自然を感じて、心も体もゆったりと涼みながら、こちらの記事を楽しんでいただけましたらうれしいです。

Facebook での文章をまとめたものなのですが、なかなかボリューミーなので、お時間のあるときにでもよかったらどうぞ!笑

無農薬・無肥料で育てる蓮のおはなし

2022年7月29日(金)新月。
この日のイベント会場は、千葉県長生郡長南町。
蓮根農家・細田美紀さんの畑。

朝8時半の集合でしたが、夏真っ盛り!暑〜い!
蓮の花、実、そしておおきな葉っぱが揃うのは、食べるレンコンを収穫する秋の、手前。7月8月の、真夏の時期なのです。

みんなで日陰をつくるテントを立てて、淹れたての蓮のお茶を味わいながら、農家・美紀さんのお話を伺っていきます。

参加者に思いを伝える美紀さん

太陽の光と風、きれいな水。
そこに集まるドジョウやゲンゴロウや微生物たち。
無肥料無農薬、自然のちからだけで育てる蓮根。

以下は、美紀さんのお話のごく一部から。

ザリガニなんかは、やっと出た蓮の芽を切ってしまう、厄介者の大敵として扱われているんだけどね。彼らは、自分のテリトリーをきれいにしたい!という思いで、そういう行動をとっていて。水の中の生態バランスがうまくとれていればよくて、彼らは「悪者」ではないんだよね。
最初はどうしよう、と悶々としていたのだけど、ある時から、そこにいていいよ!と思うようになった。それで、ずいぶんと気持ちが楽になったの。そしたらもう、楽しい!しかなくて。
わたしは気分よくいたいだけ。それだけなの。
自然といっしょに仕事をするから、毎日いろんなことが起きるけど、とにかく、楽しい!だけで、育てているんですよ。

今年で4年目だという蓮田でそう話す美紀さんは、少女のようであり、神さまのようであり。年齢や性別を超えたパワーを放っていました。

このままそうっと水平移動!

長い棒を使って蓮のつぼみをはさんで掴むのは、UFOキャッチャーみたいで意外と難しかった!落っことしそうになってギャーギャー笑いながら、お茶にするためのいのちをいただきました。

お茶にするのにちょうどいい開き具合のつぼみ

こんな体験をさせてくれる農家さんなかなかいない。ただ育てて売るだけじゃなくて、こんなふうに、みんなにも感じてもらいたいって、貴重な場をシェアしてくださること。ありがたいし、これからも応援したいな!って、あらためて思いました。

花のつぼみをお茶にして

さあ、今日のメインはなんと言っても「花茶」!

before

ぷっくりとしたつぼみを収穫したら、お皿のうえに小さなカップで固定して立て、てっぺんからお湯をゆっくり注いでいきます。

after

少しずつ花びらが開いてめくれていくようすは、神聖なシーンだし、どこかちょっと・・・エロい。笑笑
注いでいる湯気から立ちのぼるのは、なんともエキセントリックで濃厚な甘い香り。極上のアロマセラピーでした。

乾燥させた葉の中国茶なんかは飲んだことがあったけど、生の花茶はもう、全然ちがった。
紅茶や緑茶、ほうじ茶の飲みくらべもさせていただいたのですが、どれもほんとうにうっとりする味わい。

自然そのものの、やさしいグリーン

そして葉っぱはジョウゴにも早変わりしたり、お皿にも、ランチョンマットにも使えて、食卓で大活躍する逸品だなぁと思いました。

蓮の実も、はじめて食べた!
ドングリ食べてた小学校のころを思い出す味。でもドングリよりはパサパサカスカスしていなくて、ピスタチオとの間、くらいかなぁ。
蓮のエネルギーがぎゅぎゅっと詰まっていました。

蓮の実は、シャワーノズルみたい。
開ききった花はこんなかんじ

自然の恵みを楽しむランチタイム

お昼になったら、ピカピカの蓮畑を眺めながらお楽しみのランチ!
主催のあっこさんが、真心こめて用意してくださった御膳です。

花生姜の葉のお皿や、竹筒のカップ・箸置きも!

メニューはその日によって変更があると思うのですが、トウモロコシのスープに、お稲荷さんと手鞠ずし、旬の野草を使った天ぷらやお浸し、さらに蓮の実やエキスを使った寒天も!夏にぴったりの味つけで、おいしかった〜。

みんなでワイワイおしゃべりしながら、風に吹かれて食卓を囲める贅沢。

さりげないおしゃべりの中に

なんにも排除しない生き方。
それって実はとても、むつかしいことで。
邪魔なもの迷惑なものは、どうあがいたってこちらにとっては、邪魔だし迷惑なのだ。

ランチをしながらのざっくばらんなおしゃべりの中で、感じることがたくさんあったのですが、特に印象に残った美紀さんのお話を、ひとつご紹介したいと思います。

イノシシなどの動物に荒らされないために、畑に電柵を張りめぐらす。罠を仕掛けて殺す。虫に葉を食い破られていたら、その虫をつぶす。管理しきれなくなった広大な田んぼに、おじいちゃんが除草剤を撒いていく。

それらの行為を、そんなのダメだよ!農薬は体によくないし、動物たちもかわいそう!と言う人は一度、自分でやってみればいい。
綺麗ごと言ったってムリなもんは、ムリだから。

地元の人たちはみんなそれぞれに、この景観を大切に守ってくれている。持てるお金や時間、体力も関わってくる。その中で、バランス取ってやってるんだよね。

ふつうはさ、自分が無肥料無農薬で、丹精こめて作物を育てている真横で、農薬を散布されていたらムッとしませんか。笑

でも美紀さんは、自然や生き物に対する優しいまなざしを、同じように人間にも向けている。
つまりおじいちゃんを、敵や悪者にはしない。

わたしはここを無農薬で育てています。おじいちゃんの土地だけど、ここの部分だけはわたしが草刈りを引き受けるので、除草剤を撒かないでいてもらえませんか?
と、頭を下げておねがいをする。

もちろんそういった交渉で、すべての問題ごとが解決するとは限らないと思う。やなこった!って口を尖らせる人もいるかも。

だけど「敵を作らない人は無敵」なんだよなぁ。
みきちゃんは「楽しんでいる人」だから。

「わたしもここまでくるのに時間かかりましたよ。」

そうクスッと笑ったときのみきちゃんの声色は、ああああ!今の!今の録音したかった〜!って、シビれるくらい穏やかで満ち足りた音楽そのものでした。

うれしい紅茶のおみやげ

さて、おみやげに持たせてもらった蓮の花紅茶。
おうちに帰ってからも楽しめるのは、とってもうれしい。

摘みたての花をそうっと優しくひらいたら、ティーバッグを3つ、中に入れこみます。乾燥しないよう、おおきな蓮の葉でくるんで結び、涼しい場所に置いて。2日ほど寝かせたら完成!

てるてる坊主みたい。

花の香りを移したティーバッグは、ストレートで淹れてもミルクティーのような、まろやかな舌ざわりとほのかな甘い香りに包まれて。
なんてことないふつうの紅茶よ〜ときいていたけれど、見事、高貴な茶葉に生まれ変わっていました。

国産無農薬の茶葉に花の香りを移して


豊かさってなんだろう。

昔のわたしは、自分が食べるものや飲むものに、お金をかけて注力するということの意味が、正直よくわかっていなかった。

コーヒーはブレンディの粉でいいし、紅茶はリプトンで充分でしょ。(ブレンディとリプトン、ごめんw)と思って過ごしていた。

そんなことより新しい洋服を買いたいな。友達との外食にだってお金はかかるし、旅行もしたい。自分が日常で飲むためのお茶なんかに、そんなお金かけて、贅沢なことしてらんないよ。

だけど、このごろ思うのは、お金をかけないと贅沢できない、ということ自体が、情報からの刷りこみだったのだなぁということ。

だって友達の育ててくれている蓮の花は
どこにも、売ってなどいないのだ。

飲みたい!と思ったときに、蓮農家のお友達に電話をかけて、ひとつだけ摘ませてもらってもいい?とお願いをする、が、唯一の花紅茶を飲む方法。
きっと美紀さんは、わたしがいくらかお金を払う、と言ったら、じゃあ今度、蓮畑で歌って〜!そのほうがうれしい!と笑うだろう。

(もちろんイベントに参加すると飲めますよ!これは、日常のたとえ話ね。美紀さんはわたしのライブによく足を運んでくださいます。)

なにが言いたいかというと
そういう素敵な人と出会い、つながり。自分の愛を差し出して、信頼関係を築いていくこと。そうして自分の口にするもの(=自分自身)にも、あなたとの一瞬一瞬を大切に思ってるよって、伝えるエネルギーを注いでいく。
お金を使って簡単に贅沢をするのではなくて「こころを込めるという豊かさごと味わう」。
そっちのほうに本質があるんだということ。

田舎暮らしをすぐにスタートできる状況にいない人のほうが現実的には多いと思うので、都会で生活をしつつそういった体験をしたい人に向けて、自宅を開放して宿泊できる環境を整えたり、リトリートの要素を持ったコミュニティースペースづくりにも取り組んでいきたいなぁ、と考えている。

わたしの本業はシンガーソングライター(作った歌をうたう人)で、楽曲制作やライブ演奏のオファーをいただき、その収入を糧に暮らしているのだけど、声の楽器はこころとからだ、である以上、どんなふうに生きてどんなふうに命を鳴らすか、ということに対して常にアンテナを張りめぐらせている。

そうすることが、仕事のクオリティを決定づけるし、おおげさじゃなく「どう生きるかが歌声を構成する全ての要素」だ。
だから地域のためにとか誰かのために、とかはちっとも思っていなくて、自分自身のために、やりたいことだけをやらせてもらっている。

そういえば明日は、長南町(ちょうなんまち)のお隣、長柄町(ながらまち)の農業体験、グリーンツーリズムの親善大使を務めることになってその委嘱式に出席する日(こちらはこちらでまたあらためて記事にまとめます笑)だし、今月末には、はじめての狩猟免許の試験が控えている(こちらもこちらで、以下略、笑)。

やっていることはバラバラに見えるだろうし、オイオイどこに向かってるんだよ?と笑われることも多いのだけど、わたしの脳内では、一直線につながっていることばかり。

参考までに、わたしの目指すビジョンのベースを以前綴った記事をシェアしておきますので、ご興味がありましたら。どなたかに、お役立ていただけますように!

消費から贈りものへのシフトチェンジ

お金について感じたことを少し。
今回のイベント参加費は5,500円でした。
みなさんはこれを、高いと思いますか、安いと思いますか?

自分の人生にとっての大きな気づきを贈ってくれる、こういう人たちと生きていきたいんだなって再確認できて、絶大なる勇気をわけてくれる。そんな価値ある場を生み出している人たちに対して、わたしは率直に、もっと対価を支払いたいなぁ。10,000円でも参加したいよな、と感じました。

ただこれは、実際に体験したから感じたことで、写真や文章を見ただけだったら同じように感じるかはわからない。

農家の美紀さんや、主催のあっこさんに直接お会いして、同じ時間を過ごせたからこそ、これからもどんどん開催していってほしい!って心から思えて、そこでイベント存続を支援していくための費用が5,500円っていうのは、破格だなと感じたわけです。

リアルな参加者であるわたしが、自然とそう感じた。そこではすでに、原価や時給うんぬんという既存のマネー概念をすり抜けた、きもちの贈り物、感謝を伝える手段としてのお金、という意味合いが、軽やかに生まれている。

それって実はすごいことだよなぁ。と、あらためて彼女たちからあふれる情熱とその魅力を思い浮かべながら、ポットへじっくりとお湯を注いでいきました。

今、圧倒的な時代の境い目に、わたしたちはいて。
笑ってても泣いてても、世界は音を立てて崩れている。いよいよ狂っている。止めることはできない。

だけど、あたらしい世界、なつかしい感覚を自分の肌でちゃんと感じたいと願う人が、その扉をひらきたくなったときにいつでも「どうぞ〜!」って迎えられる準備を、汗かいて踏ん張って進めてくれている人たちがいる。
今日も明日も。誰になにを言われなくとも。

それって本物のにんげんの力、だし
嘘じゃない希望、だとも思う。

イベント参加者のみなさんと

最高に豊かな未来の風景って、きっと自分ひとりじゃ叶えられないんだけど。こんな素敵な人たちがいるから大丈夫、自分にもなんかできるかも、まだまだ、やれることあるかも!?って勇気をもらえた、素晴らしい時間でした。

ハスの花もレンコンも、大好きだったけど、もっともっともーっと好きになった日。

移住してきた長南町っていいなぁとあらためて思った日。

そして、かおりっていう名前でよかった。おかあさんありがとう、って感じた日(すごい香り!いい香り〜!最高の香り!って、みんなから何十回もほめてもらえた笑)。

イベントで感じたことの記録や、蓮畑の美しい風景をみんなにも共有したいなと思って、ちょっと時間をかけて綴ってみました(気づいたら6000字超えだって〜!長すぎたよね、申し訳ない笑)。

湯気の香る、花紅茶を淹れながら。
さいごまでお読みくださり、貴重なお時間をどうもありがとうございました。

おわりに

突然だったけど快く迎えてくれた主催のあっこさん。素晴らしい場を提供してくださった農家の美紀さん。そして個性ゆたかな楽しい参加者のみなさん!お世話になり、本当にありがとうございました。

2022年9月22日(木)には
「蓮の花茶会」を主催されている「te+te」さんのガレージにて、秋の実りをお祝いする音楽をお届けさせていただきます。お誘い合わせの上、ぜひご予定くださいませ。

こちらの記事は、無料でお楽しみいただけます。
noteには、応援のきもちを贈る機能がついていますので、もしウキウキな気分で投げ銭をしてくださる方がいらっしゃいましたら!
「気に入ったらサポート」のボタンから、どうぞピンときた金額を、引田香織にバーンと突っ込んであげてください。笑

愛情と優しさのこもったお金は、次のイベントへの参加費用に大切に充てさせていただき、また素敵な体験をみなさんにシェアしていくエネルギーをまわしていきたいです。もちろん、いいねやフォローだけでもすごく励みになります!
笑顔あふれる人生を、みなさんとご一緒できますように。これからもどうぞよろしくお願いいたします!

毎日とっても暑いので、どなたさまも夏バテに気をつけてお過ごしくださいね〜!


おまけ〜まめまめ知識〜

  • 蓮の花は咲くときにポンッ!て鳴る説は、わりと嘘。朝5時ごろにジワジワとひらく。

  • 蓮根は、じつは根っこじゃなくて、茎。

  • 野草の天ぷらの味は、ポテトチップスに似ている。

  • 蓮の葉は、雨傘にはちょっと造りが甘い気がするけど、日傘には、ガチで使える。

かおり


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