また、選挙に行かなかった。
朝、気持ちが良くて、たくさん眠っている。
昼は、木陰で風を感じると心地良い。透谷の詩がよく合うね。
夕方は、少し歩くと緑が柔らかい。
夜は、少しの玄米と鯖を焼いて、粗い塩を少々。味噌汁は甘めが好き。出汁も忘れずにね。
梅雨も明け、日が長くなってきて、ちょっと優しい気持ちがある。
テレビも新聞紙も何もない家に、開けてもいない選挙通知の封筒が落ちている。
そこで、ああ、また選挙に行かなかったと知った。
そんな今日は慰霊の日。
また、選挙に行かなかった。
またがつくのは、前回も行っていないから。
選挙といえば、行かない選択肢もあるはずだけれど、行かなければ良くない雰囲気を浴びせられるし、わざわざ投票していないという人間もいないだろうかな。
毎日を過ごしていたら、選挙に行かなかった。
行けなかったのかしら、行く気がなかったのかしら、情報収集不足かしら。
数ヶ月後にはこの町を出ていくというのに、明日と何年後の未来までも考えて投票なんてできなかった。「あなたの清き一票が未来を変える」と言われ、そんな未来を担えなかった。動くのは、選ばれし者と少しの私たちかもしれない。しかし、私はもうこの町から出ていってしまう。ただ勇気がなかったのかもしれないね。無投票でも、意思を示すとよかったのかしら。「投票していないのだから、今の制度に何も言う権利ないよね」と言われればそれまでかしら。私たちには、ただ一瞬の権利しかないのかしら。
どこかしらから税金が高いやら物価が上がったやら声が聞こえてきて、私も救いに見せかけたすかすかの光に痛みつけられながら、しがみつくのかしら?
まだ、わからないことばかりね。
明日の朝を知りたいと願う人間がいながら、ぎざぎざだるだるざらざらの人間には敵わないのか。
どう考えても、お金が命を買っているじゃない?
私もきっと、朝を知りたいと願いながら、どうにもできないのかもね。
ごめんね。あなたが泣いていても、私はどうにもできないの。
だから、あなたの横で一緒に泣かせてほしい。
いかにも正しいと信じ込ませる言いっぷりは、全部良くない。
あなたにも、良くないのではないかしら。
だから、「うん」と言い聞かせて、話を聴くの。
そしたらあなたの番だから。
そうして、私が「うん」と頷くから、あまり無理せず伝えてくれたら良い。
人間の中身なんて、一人なはずがない。
あなたらしさなんてない。
晴れると息がしやすいけれど、梅雨時は湿気で息がしにくいものでしょ?
あの町に帰ったら、選挙に行くよ。
あなたにどうにもできないと言わないように。言わせないように。うん。
あと、鯖、本当に美味しいよ。
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