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コーチングで活用するマインドの仕組み(その2)

さて、先日のページでは、コーチングに関するマインドの仕組みとして、

  • エフィカシー

  • スコトーマとRAS

を紹介しました。エフィカシーは「自分にはできる!」と自らを評価する力、RASは脳が無意識に感じている重要性に基づいて情報をフィルタする機構、スコトーマはそれによって生じる心理的盲点のこと。

今回は、「ホメオスタシス」「コンフォートゾーン」、「セルフトーク」について紹介します。

ホメオスタシス

ホメオスタシスとは恒常性維持機能とも呼ばれる生物が持っている性質のことです。wikipediaには以下のような定義が載っています。

恒常性(こうじょうせい)ないしはホメオスターシス: ὅμοιοστάσις、: homeostasis)とは、生物において、その内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のことである。

この機能は、人間にも備わっています。たとえば、人間の体温は人によって個人差はありますが、大体35.5度から37.5度くらいのゾーンで保たれるようになっていて、外の温度が上がっても下がっても、この間に収まるように発汗などの機構を通じて無意識的に調整されています。この機能がホメオスタシスです。

ホメオスタシス

コンフォートゾーン

さて、このホメオスタシスですが、人の認知機能にも備わっています。人間にとっての適正な体温のゾーンと同じく、自分の無意識が慣れ親しんだゾーンの中に収まるように調整する力が心にも働きます。
この無意識が慣れ親しんだゾーンが「コンフォートゾーン」です。言葉通り、「自分が居心地の良い空間」です。元々、心理学由来の言葉ですが、認知科学でとらえると、ホメオスタシス(恒常性維持機能)によって維持されるゾーンのことです。

居心地の良い空間ですから、自分のパフォーマンスが発揮できる空間でもあります。ホメオスタシスがあるから人は適正な体温を維持して生きていけますし、認知科学の観点でもホメオスタシスのおかげで心のバランスが崩れたときでも自然に元に戻してくれます。コンフォートゾーンに戻ろうとする力こそが実は人のモチベーションです。

しかし、良いことばかりではありません。コンフォートゾーンは自らのパフォーマンスの限界を決めてしまっています。コンフォートゾーンの外は、その人にとってスコトーマ(心理的盲点)になっています。ホメオスタシスの働きでコンフォートゾーンの内に戻ろうとするから人は変わりにくく、人の集合体である組織や社会が変わりにくいのも元を正せば個々の人のホメオスタシスの働きです。

現状とコンフォートゾーン

さて、先日の記事で、コーチングでは、現状の外にゴールを設定する、と説明しました。あらためて、ここで言う「現状」とは何でしょうか?
wikipediaでは以下のような説明があります。

現状(げんじょう、ラテン語: status quo)とは、今そのままの状態という意味のラテン語の成句。現状維持。同類の語句に、初めの状態という意味の原状 (status quo ante) がある。

「今そのままの状態」には、「今の延長線上で実現されるであろう未来」も含まれます。
誤解を恐れずに書くと、この「現状」、つまり、「今そのままの状態、及び、今の延長線上で実現されるであろう未来」は、人にとっての「コンフォートゾーン」になっています。

現状の外にゴールを設定することは、つまり、自らの現在のコンフォートゾーンの外にゴールを設定すること、を意味します。

want-toに基づいているゴールなので、やりたいとは思うけれども、今の居心地の良い空間の外。このままですと、ホメオスタシスの力ですぐにコンフォートゾーン≒現状に引き戻されてしまいそうですね。では、どうすれば、ホメオスタシスの力に打ち勝ち、現状の外のゴールに向かうことができるようになるのでしょうか?

コンフォートゾーンとホメオスタシス

ゴール側のコンフォートゾーン


答えは、

現状の外にあるゴール側に新たにコンフォートゾーンを創りだす

です。

ゴール側のコンフォートゾーン

ゴールは、今の現状の物理空間にはなく、自分が妄想した情報空間にありますが、本当にやりたいこと=want-toに根差していればそれは自分のありたい未来です。情報空間にしかない、自分のありたい未来をコンフォートゾーンとして捉えることができれば、ホメオスタシスの働きでそこに戻ろうとするモチベーションをゴール側に持つことができます。

ただし、マインドの制約として、人はコンフォートゾーンを2つ同時に持てません。現状にあるコンフォートゾーンと、ゴール側に創り出したコンフォートゾーン。前者は物理空間に、後者は情報空間にあります。このどちらか一つを選ばなければなりません。では、マインドはどちらを選ぶか?

マインドはどちらのコンフォートゾーンを選ぶのか?

ゴール側のコンフォートゾーンの臨場感を上げる

答えは、「人間のマインドは臨場感の高いほうを選ぶ」です。人は、情報空間にあるゴール側のコンフォートゾーンの臨場感が高ければ、そちらを自身のコンフォートゾーンと捉えることができ(それが人間のすごいところですね!)、コンフォートゾーンは移動します。

臨場感を上げてコンフォートゾーンを移動させる

コンフォートゾーンは、現状であり、自分の内部表現でもありますが、これが移動するということは、つまり自分の内面が書き変わるということです。自分の中で物事に対する重要性が変わり、RASが発火し、スコトーマが外れて、達成に向けての道筋も見えてきます。

セルフトーク

普通に暮らしていれば、現状にあるコンフォートゾーンは、日常にあり、物理空間にあり、リアリティを高く感じてしまいます。ホメオスタシスの力が現状側に働いて元に戻ってしまいそうですよね?
なんとかして、情報空間にあるゴール側のコンフォートゾーンの臨場感を高め続けなければなりません。そのときに役立つマインドの仕組みが「セルフトーク」です。

セルフトークは自分が自分自身に語りかけている言葉です。たとえば、「今日は元気いっぱいだな!」とか、「腹が減ったな」とか、「面倒くさいな」とか、口に出して発する言葉も、頭に浮かんでくる言葉もどちらも含まれます。無意識に発する内省的な言葉は本人の自覚がないことも多いかもしれませんが、なんと1日に3万~5万回、人は語りかけているといわれています。

コンフォートゾーンは自分のパフォーマンスの限界を決めている、と説明しましたが、セルフトークはコンフォートゾーンが決めた限界の内で、自分の今のパフォーマンスを決定しています。車のスピードにたとえると、パフォーマンスの限界はその車が出せる最大速度(たとえば280km/h)のようなもの、今のパフォーマンスは現在の車の速度(たとえば80km/h)に相当します。

何か新しいタスクに取り組む際に、「できそうだ!」とポジティブなセルフトークが浮かぶ場合と、「自分には難しい、できそうにない」とネガティブなセルフトークが浮かぶ場合では、パフォーマンスに大きな差が出てきます。セルフトークをネガティブなものから、ポジティブなものに変えていくことは、人のパフォーマンスを左右する大きな要因です。

人間は言葉で思考していて、言葉によるセルフトークから、頭の中に映像が喚起され、その映像が感情を想起させます。積み重なって、自己イメージが形成されます(自己イメージのことをビリーフシステム、内部表現とも呼びます)。自己イメージのうち、自分が高く評価するものだけを集めたものがコンフォートゾーンを形作ります。

さて、ゴール側のコンフォートゾーンの臨場感を高める話に戻りましょう。この強力なセルフトークの力を臨場感を高めるために使います。臨場感の高さはセルフトークの回数の多さに依存するので、ゴールに関連するセルフトークを作り、繰り返し唱えます。たとえば、「私はxxxをしている」「私は一流の〇〇だ」とゴールが達成されたあとの世界を表現する言葉を作って、毎日唱えるようにすると、そこから映像が喚起し、感情が想起され、臨場感が高まっていきます。この作業はコーチングが扱う領域であり、コーチが手伝います。

まとめ

コーチングで活用している重要なマインドの仕組みとして、「ホメオスタシス」、「コンフォートゾーン」、「セルフトーク」について紹介しました。
人の認知機能はホメオスタシス(恒常性維持)の性質を持っており、現状にあるコンフォートゾーンを維持しようとする力が働いています。この力があるために人は変わりにくいのです。
現状の外側のゴールを達成するためには、自分の情報空間にあるゴール側にコンフォートゾーンを新たに創りだし、臨場感を高めます。すると、人の無意識は新たなコンフォートゾーン側を選択し、コンフォートゾーンが移動し、ホメオスタシスはあらたなコンフォートゾーンに対して戻る力として働きます。
カギは、ゴール側のコンフォートゾーンの臨場感を高めること。人が毎日自分自身に語りかけているセルフトークの力を使います。

最後に

私自身、コーチングの学習をしている途上ですが、本記事を読んで、コーチングに興味を持った方、コーチングセッションを受けてみたい方、セッションを受け付けています。
以下のページをご覧ください。



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