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FIRE思考のトレンドと危険

想像以上に若者はFIRE思考が強い

経済的自立と早期退職

FIREという言葉が近年話題になりました。
Financial Independence Retire Early を略してFIREという言葉で、解雇を意味するFIREと微妙に掛かっていて記憶に残る設計です。
端的にいうと、「投資をしましょう」というもので、根拠として古い研究のトリニティスタディというものを軸に確立しています。

若者は「諦め」の感情を育んでいる

FIRE思考は徹底した倹約と、資産を投資にまわしていくことで肯定されます。家賃の見直し、保険の解約、スマホの格安化、カーシェアリングなど家計をシェイプアップし、浮いた資金を投資にまわしていくという財政健全化は日本人の国民性と相性がよさそうに見えますが、この原動力はどこから発生しているのでしょうか。

国土交通省の調査で、若い世代は資産や収入、今後の見通しにおいて中高年よりも不安感が強いこと、自身のキャリアアップや昇給に肯定的な未来を描けていない傾向が強いことがわかります。

高齢化を続ける日本や、イノベーティブに感じない旧態依然の体制を目の当たりにするたび日本の未来や自身の未来は明るくないと考える傾向があるようです。
そのリスクヘッジとして、自身の収入増以外の安心材料として、海外のファンドの成長株によるキャピタルゲインに期待を寄せているということがあるのではないでしょうか。

円安と新NISAの後押し

長期投資を前提とするFIRE思考においては、資産形成初期における不況到来はむしろ有益なトレンドであるという考え方がある一方で、心理的負荷を嫌う日本人には市場撤退を誘発する要因になります。
現在は世界的な地政学的リスクの上昇や産油国の減産など、企業活動においてはマイナス要因が多くありますが、こと日本人個人投資家から見ると円安による為替差益が株価下落を包摂してむしろ数字上は利益があるように見えています。また投資の税に非課税制度を活用して運用しやすくする政策が若者に投資を促しています。

行き過ぎた摂生が、孤立傾向を強める

我々支援者は、コロナによる若者の孤立に非常に強い警戒感をもっていました。
ようやく感染症における警戒感解除傾向にコンセンサスが得られ始めてきた時期に、今度は関係性の無駄排除や、節約、コスパ、タイパなどといったコミュニケーションの縮小を肯定するような考え方が若者を中心に流行していて、生活や関係性のミニマル化を進めていくことが、トレンディでスマート、リテラシーの高さを表すといった価値観が当たり前のように共有されていく傾向に合理的な説明を持って向き合う必要があると感じました。

もう一度動機を振り返る

そもそものFIRE思考を強めた動機は将来に対する不安や自身のキャリアアップへの諦めといった負のインセンティブから始まったものだったはずです。不安や諦めといった負の感情を持つことを迫られる社会情勢における、孤立や摂生は個人への影響において相性が悪いはずです。精神福祉を推進する立場からこのトレンドは非常に危険だと思えてなりません。

スイートスポットには消費しよう

散々FIRE思考を批判的に記述をしてきましたが、「投資するな」といったメッセージを送りたいわけではありません。
ここでは所属するコミュニティの多さが精神の安定において重要であるという発信をしてきました。

職場と自身の生活だけにコミュニティを絞ってしまうのは危険です。
ご自身の支出には、無駄なものと、必要なものが混在しています。削れるはずだから削ろうという考え方ではなく、自身の好みや必要な無駄すら認識してしっかりと必要な無駄遣いは維持していく重要性を発信する必要があると感じました。

また昨今のインデックス投資ブームは、過去の利回りを基に構築された空論です。今後しばらくブームに乗って上昇を続けることになると考えられますがブームは必ず去るものです。すでに構成銘柄を1企業とみなして株価収益率を計算すると割高に見えるPER、PBRになるファンドも多いです。また今後日本のYCC修正やFRBのFF金利誘導目標の変更が円高をもたらす可能性も高いと言えます。円高は日経においても海外資本の撤退を招き向かい風として機能します。
日経に投資していても基軸通貨であるドルストレートは大きく影響します。米国の雇用統計やCPIには注意して、思考停止で投資信託でいいという甘言に騙されないように気をつけてください。

ひきこもりには理由がある

「親がしてはいけないこと」と銘打ち「ひきこもりには理由がある」を合言葉に、いまひきこもっているひとが、いまどういう状態なのかを考えています。ひとは理由なくひきこもりません。根源的な課題解決なしに性急に回復したような状況だけを求められてしまう当事者はたくさんいらっしゃいます。その環境出力だけを達成しても予後がよくない傾向にあります。いまどういう状態なのかをきちんと考える事で、一時的な状態変化に惑わされず、いま必要なものが考えられます。
当事者にとっても、家族などの身近な伴走者にとっても、理解してほしい、一度考えてほしい内容になっています。ご一読くださいませ。

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