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駄文 #33 夏風邪、とんでゆけ

こんにちは、抽斗の釘です。

雨の多い季節になりました。
じめじめしとしと。と、すっきりしません。
調子が出ないという方も多いのではないでしょうか。

ところがです。私はなぜかそうではありません。

雨が降ると気分が晴れる。
湿度が上がると気持ちも上がる。

朝起床して雨だと分かるとぐっと調子が良くなります。
活動的に動きたくなり、考え事もはかどります。
無性に外に出かけたくなったり、誰かに会いたくなったりと、躁鬱でいうところの躁状態に近くなります。

これにはおそらく自律神経が作用していて、ふだん神経をくしゃくしゃしながら生活し、疲れ果ててしまう私にとって、多少低気圧を食らう方がちょうどいい塩梅になるのだと解釈しています。

ともかく雨の多い六月は私にとってゴールデンマンス。
生活と活動を充実させるため、何かと大事な月になる、はずでした。

しかし夏風邪。

誰がどこからもらって来たのか。
もはやそんな詮索も馬鹿馬鹿しくなるほど、我が家は波状的に続く夏風邪に苦しめられました。

ある晩、唐突に発熱です。
続いて鼻、喉、気管支とまるで低気圧の移動のように各所が崩れていき、二週間強が経過した今でも咳で寝付けないという状態が続いています。
それが家族全員に訪れました。

お医者いわく、風邪だか細菌だかで免疫が弱ったところにまた別の風邪をひいて連鎖的に続いているのでは。と。

我が子は保育園に通い始めた一年目。
いわゆる「保育園の洗礼」を受けているのだとお医者は鼻にずれたマスクを直し直し言いました。

検査の結果、インフルエンザも新型コロナもみられず。
我が子にしてもアデノだの手足口だのRSだの、幼児性のウイルスも出て来ません。
つまり名もなき風邪。

「ただの夏風邪ですね」
と、お医者は言いました。

もともと人は年に4、5回は風邪を引くそう。
たかが風邪など、日常生活を行っていればいつしか治っているものでした。

しかし年々辛くなる「ただの風邪」
寝込むことも増えてきます。
これがマスク生活の反動か。それともただの衰えか。

私自身はそれでも症状が鎮まりつつありますが、
家族などは鼻水や発熱を繰り返したりと、かなりしつこい症状が続きました。
とりわけ咳はひどく、私がこれまで経験したインフルエンザやコロナとは比べ物になりません。だのに名前がつけられていないただの風邪。

だいたい風邪のウイルスは200種類以上あるのだそうで。なので特定は難しいし不可能なのだそう。
しかし種類が違うということが判明しているならば、その面構えもきっとそれぞれで違うのでしょう。
私たちを苦しめた風邪。きみは一体どんな面だ、何者なんだと尋ねたくなります。

実際、インフルエンザや新型コロナの発熱は辛いとはいえ、幕引きはあっさりしたものでした。自宅療養を含めると費やすのは一週間程度でしょう。
二週間以上の眠れない咳を勘案すると、私にとってむしろこの「ただの風邪」の方が強烈な印象です。療養しながらの生活の維持に、気持ちは疲弊してしまいました。

そして気が付けば六月も終盤。
生活の復旧を考えれば一ヶ月費やしました。
私のゴールデンマンスは失われつつあります。
この損失は精神的に参ります。
常に書き続けることが、より大きな成長に繋がるはず。
だからこそ書く時間の確保は私にとって重要です。
ただの風邪ならばひきながらでも書けたでしょう。
しかし家族は自宅療養。
お世話も平素より気を使います。
40度近い発熱に、目を離すわけにもいきません。
そして自分の咳により削られる睡眠時間。
疲弊するパートナー。
ノートパソコンは開かないまま充電が切れていました。

風邪、きみは一体どうしたんだと、昔はあんなにあっさりした奴だったじゃないかと、肩をゆすりたくもなります。

本音を言うと、実際辛いのは、自分の症状でも家族の苦しみでもありませんでした。
ものを書くという日常に戻れない。
ものを考えて書くという状況に落ち着けない。
その状況が、なにより私にとってつらいものでした。

たかだか一ヶ月です。
私は非情で身勝手なのかもしれません。

今年はこういった咳風邪が流行っているとのことです。
お世話になっている薬局のお姉さんは「夏風邪は長いですよ」と、育児の先輩として忠告してくれました。
しかしすぐ、「でも、いつかは治りますから。」と微笑みました。
そこには確かに親として時間と労力を費やしてきたという、優しさの形跡が見えました。

多くの人が、親が、そうやって家族や人のために時間を費やし、失ってきている。
自分が生きてここにいる以上、自分の親もその一人でしょう。

そういう大きな流れの中に自分も含まれていて、同じ道をたどっている。
そんなでまかせの考えをめぐらしながら、もっと優しさだけになりたいと思ったりします。

咳は徐々に収まりつつあります。
夏風邪が、どこかに消えていく感じです。
それと一緒に、非情さや身勝手、イライラする心なども一緒に連れて、梅雨空に飛ばされていけばいいと、そんな妄想をする次第です。


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