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26.絶対安全領域

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これは2016年に制作した「安全な世界」という作品です。

オルゴールメリーの下で過ごした穏やかな時間。お人形のように可愛いと愛でられた日々。赤ちゃん返りというのは子供だけではなく大人にもままあることです。子供の場合は親に甘えたい、かまってもらいたいと思って注意をひくために起こると言われていますが、大人の場合は自己防衛なんじゃないかなと思ってます。雑に言うと「甘やかされたい」というか、無力で非力な自分を肯定され愛されたいという状態なのかも、といった感じ。幼い頃の義務も責任もなくのびのびと生かされていた時代を羨むような。わたしの場合、そういった気持ちになるときは決まってストレスにさらされていたり、自己肯定がうまくできなくなって精神的に弱くなっているときでした。

幼い頃といえば最近、自分が小学生くらいに流行っていたアニメや漫画のリバイバルがよく出ます。一番くじだったり、コスメとコラボしたり。そういったものに触れるとき、楽しかった子供の頃の思い出がふんわりと胸に満ちて少しだけ幸せな気持ちになりませんか?子供の頃にはお小遣いの範囲内で我慢していたことも、大人の自分ならばお財布の許す限りそれらにお金を費やすことができます。きっとマーケティングの世界では30代前後の世代をターゲットにこういったムーブメントが起きているのでしょう。それにまんまと乗せられて、マッチを売る少女が冬空の下でつかの間の暖をとるように次々と買ってしまう。ほどほどにしたいなと思いながらなかなかやめられないことです。

幼い頃の記憶に縋るのはそんなに悪いことではないと思うのです。幼い頃に限らず、過去の自分を幸せにしてくれた経験たちがあるからこそ今の自分が苦境の中でも何とか立っていられるのです。

この絵の中のオルゴールメリーは彼女にとって核シェルターのような絶対の安全世界です。誰も何も自分を傷つけない場所へつかの間逃げ込む日があってもいい。その場所が大切な人の隣であってもいいし、自分の部屋のベッドの上、職場のトイレ、学校の保健室でもいい。実際の場所でなくても、心を逃避させる過去の記憶の中だっていい。逃げ込むことに負い目を感じず、自分を守ることがこの絵のテーマでした。

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