見出し画像

31.夜と朝の間にあるもの

画像1

これは2015年に制作した「あさぼらけ」というタイトルの作品です。

あさぼらけ、というのは夜明け頃、日が昇り始め空がだんだんと白んでくる頃合いのことです。この少女は朝顔の擬人化で、鶏同様に朝を心待ちにするモチーフたちです。

この作品は2015年に開催した星をテーマにした大阪での個展「twinkle」で発表しました。太陽というもののもつ陽のプラスのイメージから、夜明けを待ち望む、なにか新しく生まれ出ずるものを待ち望むような気持ちを描こうと思いました。

自分自身とてもとても夜型人間で、夜更かし大好き早起き大嫌い、なんなら日光すら苦手なほどでした。夜のいいところは静かで涼しくて自分だけの時間だからです。対して昼はうるさく賑やかで誰かと社会で交わっている時間。どちらかといえば陰キャといって遜色ないタイプのわたしは、人混みと大きな音と太陽が作り出す空間が鬼門でした。

夜は好きな音楽をささやかなボリュームできいて、絵を描いたり、映画を見たり、ベッドの上で考え事をしたり、友達と電話で夜にしか話せないような話をしたりやりたいことが多すぎて寝てる暇なんてありません。そうすると夜明けはあっという間にやってくるのでした。しかしながら、わたしは夜の時間で一番好きなのが夜明け前、あさぼらけなのです。ひときわ空気が冷たいころにぼんやりと景色は反比例して温度を上げていく。鳥の鳴き声がどこからか賑やかになってきて、新聞配達のバイクが家の前を過ぎていくエンジン音に気づいた頃には、自分の体はヘトヘトなのに頭はギンギラと冴えていて。ベランダに出てぼんやりと空のグラデーションが変わるのをみるとき、夜の活動の達成感がぐっと高まる気がするのはわたしだけではないはず。無事に夜が終わり、また新しい1日が始まる感覚を強く感じるのはあさぼらけタイムではないでしょうか。

朝早起きして感じるあさぼらけも、夜更かしの果てにあるあさぼらけもどちらも良いものです。シチュエーションに差はあれどあの感覚の良さを言葉で言い表すのはなんだか難しく、たとえ同じ時間を誰かと共にしたとしても微妙に違いが生じるのではないかと思います。百人一首のうたには、「あさぼらけ」から始まるものが2つあり、一つは宇治川の朝霧に、もう一つは有明の月に焦点を当てています。わたしならばあさぼらけの次に何て言葉を紡ぐだろう。鶏なら?ほころぶ朝顔なら?あの時間帯の中、目を覚ましているそれぞれは何を感じているのだろう。自分だけの時間が終わる頃、そんなくだらないことを考えながらもそもそとベッドに潜り込む時間がとても愛おしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?