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16.いつもみているから

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これは2016年に制作した「玉兎」というタイトルの作品です。

玉兎というのは、月に住む架空の生き物の名前です。臼と杵で餅をついているだの、薬を作っているだだのと言われています。

この作品を制作した2016年にわたしは人生二度目の個展を大阪で開催しました。一度目の個展は2012年で同じく大阪で行いました。一度目はとにかく自分の作品を見てもらいたい、という気持ちが先行していてテーマもなくただ、それまでに描き貯めた作品を並べた正直お粗末な展示だったと思います。(でも1回目なんてそんなものでいいんです!)そこから、もしも2回目をやるなら、とずっと考えていた展示は「星」に関する展示でした。どうして星なのかといえば有り体にいうと宇宙兄弟という漫画にハマっていたからです。宇宙兄弟をきっかけに色々な宇宙を舞台にした映画などを見て、宇宙や星を科学や物理などの視点からみたりする楽しさ、そして神話や伝承といった空想的な視点から見る楽しさがあると思えるようになりました。

ずっと自分の作品は「思春期の少女」をモチーフに自分自身の考えや感じることを描いてきたのですが、「星」をモチーフとしたこの展示はそれまでの作品とは違って、「世の中が星をどう見てきたか、そしてわたしが星をどう見ているか」というものをテーマにしていました。まだまだわからないことが多い宇宙は、現実なのにフィクションのようで、理自分の想像を易々と超えてくるところについつい夢を見てしまいます。きっとスターウォーズやスタートレックなどの宇宙を舞台にした物語が人を引き付けるのはそのせいなんだろうと思っています。そして多くの人が自分のユニバースを作品として発表するように、自分も何か形にしたいと思いました。

この作品は「世の中が星をどう見てきたか」に分類される作品です。満月に見える月面の陰影を「月のうさぎ」とみたてて生まれた伝承を自分の解釈も交えて描きました。わたし自身、子供の頃は月にうさぎはいると信じていました。加えて、その頃車の中から月を見ているといつも不思議に思っていることがありました。こちらが移動していると月も同じ方向へ動いて見えていたのです。実際には短時間で目視できる速度では動いてなどいないのですが、子供のわたしにとって、どこまで遠くに行っても見える月は自分のあとをついてきて見ているように思えました。昔、月のうさぎの存在を信じた人達もわたしのようにうさぎがこちらを見ていると思ったのかもしれない。そんなことを考えながら制作していました。


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