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23.夢をみるジレンマ


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これは2014年に制作した「不眠」というタイトルの作品です。

この作品を制作したのは、友人と一緒に病院をテーマにアートイベントに出たことがきっかけでした。それにあたって何を描くべきか、考えたのですが健康優良児ゆえに歯医者以外の病院にろくに行ったことがなくて。当時の自分にとって身近な悩みだったのが不眠症でした。

前にも不眠症と羊という絵は描いていたのですが、好きなモチーフは何度でも描くので気にしません。

わたしは眠るのが好きで、しかし厳密に言うと夢を見ることが好きなのです。一年間のうち1回か2回くらいしか悪夢は見ません。打率9割で楽しい、もしくは不思議な夢を見ます。それゆえに眠って夢を見ることはわたしにとっての現実逃避となっています。現実でショックなことがあっても眠ってしまえばそれを忘れてしまえるし、しんどいことも夢の中ではなかったことになります。

明晰夢を見れるというほどの制度はないにしろ、夢はわたしにとって心地よい世界なのですが、睡眠と同じくらい夜更かしも好きなのです。20代前半の頃、昼間に会社員として働き夜は作品を作ることをルーティーンとしていました。とにかく、働いている以外の時間以外は絵のことをずっと考えっていたように思います。今思えば、作家活動というものを定期的に行ったり、他の仲のいい作家からいい刺激を受けたりしてとても充実した盛りの頃だったのだと思います。その勢いにまかせて活発に創作をすることで心は満たされていったのですが、体は常に疲労感を少し残したままのような状態でした。それに加えて、悩みとなったのが不眠です。

この絵の少女は夢の中にいながら、眠れていないという状態を描いたものです。夢を見ているはずなのにそこに安らぎはない、眠ることができず、つらいばかりの病の状態、というイメージです。

人によって不眠の理由は様々かと思いますが、わたしの場合は睡眠時間をたくさん取れないという理由でした。眠りが浅いのか、4時間以上連続では眠れません(当時も今も)そしてその短い眠りの中で夢を見ていて、ぐっすりという感覚にはとんとお会いできていないのが現状です。そうなってくると次第に体以上に心が疲労を感じて思考が落ち込んでいくというのがわたしの20代の教訓です。

夢(目標という意味の方)のために寝食を忘れて打ち込むという考えはいまどきな考えじゃないんだろうなと年々思います。それはわたしがそれなりに老いてきたからたどり着いた意見であり、社会の風潮からも察せることです。過労死という言葉が英語で通じてしまうようになったり、仕事を苦に自死を選ぶ人が後を立たなかったり。自分自身の健康と安らぎを大切にすることは基本中の基本であるはずなのに、それができない人はこの国で珍しくありません。無理をしないこと苦労しないこと=手を抜いて怠けているという考えもなかなか払拭できていない世の中です。近頃そんな社会を変えていこうという声が若い人の間で上がっているのを見ると、少し心が軽くなったような安心感を感じています。

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