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『わたしを離さないで』カズオイシグロ(土屋政雄 訳)

主人公たちの冗長なやり取りが長く続き退屈な本だと思ったが読了後は「一生のうちに出会えてよかった本」の一冊となった。

緩やかに、逆らうことなく、決められた悲しい運命に身を委ねる登場人物に心を動かされた。

私が感動を覚えたのは、物語の展開が終始穏やかに進むことが大きな要因と感じる。アクション映画のようなスピード感や急展開はないが、それがこの物語の雰囲気とマッチし、唯一無二の読了感に繋がっているのではないか。

序盤中盤の冗長とも感じられた登場人物たちのやり取りのテンポで「提供」という終着に向かう、作者の独特かつ非凡な筆の進め方で他の著書とはひと味違う、哀しさ・虚しさを含んだ感動を味わうことが出来た。

名作といわれる所以が少し分かった気がした。

折を見て、いつかまた読み返したい。


読了日:2021/5/21








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