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『グレート・ギャッツビー』スコット・フィッツジェラルド(村上春樹 訳)

・ということは、あの六月の夜に、彼が熱いまなざしを送っていた相手は、空の星だけではなかったのだ。その瞬間、彼は意味なき散財という体内をすっと抜け出し、僕の眼前で血肉ある存在となった

・その願いのあまりのつつましさに、僕は言葉を失ってしまった。彼は五年間わきめもふらず彼女を待ち受け、豪華な屋敷を買い求め、そのへんの行きずりの蛾たちに星明りを気前よく分け与えてやったのだ。

・彼は創造的熱情をもって、その幻想に全身全霊を投じていた。寸暇を惜しんで幻想を補強増大し、手もとに舞い込んでくる派手な羽毛を余すところなく用いて日々装飾に励んできたのである。いかに燃えさかる火も、いかなる瑞々しさも、一人の男がその冥府のごとき胸につみあげるものにはかなわない。


2章くらいまでは本作を好きになれなかったが、気付いたら大好きな一冊となっていた。

物語の展開・描写・登場人物のキャラクター すべてが美しく、魅力的だった。

村上春樹が最も愛した一冊だけあって、あとがきも読みごたえがある。

個人的には、フィッツジェラルドの生涯と本作の関連を訳者の視点で解説されている点が、一層この本を好きになるきっかけとなった。


まだ本作の素晴らしさのほんの一部しか理解できていないだろう。

いつかまた読み返したいし、いつか原文でも読んでみたいと思った。


読了日:2021/5/21

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