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若いんだから20皿食べなさい

今日は久々の、なんにもない日曜日でした。

お金に余裕はないのですが、こういう日にはまずくら寿司へ行き、うどんと珠玉のお寿司2皿を食べるという頭脳プレーをした後、カフェで台本を書くのが黄金ルートになっています。

くら寿司のカウンター席に着くやいなや、隣の席の人に肩をトントンされました。ちっちゃいおばあちゃんでした。

タッチパネルの扱い方が分からなくて、しかも98歳で目もあまり見えないとのことだったので、一応説明しながら注文のお手伝いをしました。

おばあちゃんは私の対応がすごく嬉しかったらしく「今日はおごらせて」と言ってくれました。

「いやいや!さすがにそれは!」と一度はお断りをしたのですが、「隣に座った縁でしょう?それに98歳で一人暮らしだから、お金を使いたいの」と説得され、挙句、

「あと2年で死ぬ。キリがいいから」とギリギリ笑えないジョークを言ってきたので、お言葉に甘えることにしました。

「せっかくだからたくさん食べなさいよ!若いんだから20皿食べなさい!」と言うおばあちゃん。

私は胃が小さいタイプのポッチャリなので、20皿はさすがに無理だ…と思ったのですが、経験上、シルバーのみなさんは若者の遠慮を一番悲しむということを知っていたので、いつもより頑張ることにしました。

しかし私は、初手でうどんを頼んでしまっていました。

おばあちゃんは、たくさんお話をしてくれました。

家がバスで1時間くらいかかることや、コーラと水が好きだということ、友達に勧められて今日初めてくら寿司に来たことなど、私の肩を叩きながら嬉しそうにしていました。

そして「美味しいねぇ」と、サーモンを3皿連続で食べていました。

その様子を見て、おばあちゃんが楽しいなら良かった、と普段食べないイカを食べました。

私がお寿司を食べると、おばあちゃんはますます嬉しそうにして、もっと食べなさい!もっと食べなさい!と催促しました。

普段食べない赤えび一貫も食べました。

頑張りも虚しく初手うどんが効いてしまい、結局4、5皿しか食べられませんでした。到底20皿には及びませんが、これ以上無理しても仕方ないと思い、「もうお腹いっぱいになったよ」と伝えると、さっきまでニコニコしていたおばあちゃんは暗い顔をして、小声で話し始めました。

「ごめん、600円しかなかった」

ん〜

シルバー詐欺師?

たくさんおだてておいて、逆に奢らせるという魂胆かもという嫌な考えが一瞬よぎりましたが、おばあちゃんは私の手を握って「6000円だと思っていたの」と言いました。

これは本気のやつだ。

うちの祖母もかなりおっちょこちょいなので、こういうのには慣れています。

「全然大丈夫だよ!ありがとう!」と伝えましたが、「おごるなんてカッコつけたのに情けない。ボケちゃって、いやね」と目を潤ませて自分の頭をポコポコ叩き始めてしまいました。

その気持ちなんか分かるな、と思いました。

おばあちゃんの気持ちが嬉しかったのは事実なので、それを何度も伝えると、私の手を力いっぱい握りしめていたシワシワの手が、脱力していったのが分かりました。

ちなみに「ゼロ一個足りひんかったか〜!笑」という渾身のユーモアフレーズに関しては、無視されました。

ずっと居ても逆に気まずくさせてしまうと思い、「また会おうね」と口約束をして先に退店。

きちんと予算オーバーしていたので、カフェには行かず(行けず)帰宅しました。

ご飯をいっぱい食べただけの生き物になりました。

おばあちゃんが落ち込んでないかが心配なので、本当にまた会えたらいいなと思います。

なんとしてでも2年以内に

本日の雑学: おばあちゃんの一人称は「おばあちゃん」

馬場光

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