未来の手紙

「僕を愛してくれる人と一緒にいる僕へ。」

「未来の僕」は、僕を愛してくれる人を大切に愛することができていますか?

「じゃあね。体調に気をつけて。」

妻が出ていって5ヶ月。

「1ヶ月に1度は食事に行こうね」

妻からそう提案され、約束した。

たまに、俺を心配してLINEがくるが、
俺は「うん。」と返すことしかできなかった。

1度大きくぶつかり、離ればなれになったお互い気持ちは、なかなか元に戻せずにいて。

そんなある日、溜まりに溜まった郵便物を整理していると、1枚のハガキが目に止まった。

「タイムカプセル開封式。」
そう書いてあった。

「タイムカプセル?」

あー、高校の終わりにそんなの埋めたっけ。

あれから、12年なんてあっという間だな。

最近、楽しいことも何もないし、気晴らしに行ってみるか。

それからしばらく経ってその日がやってきた。

懐かしい友達にも会えて、久しぶりに何も考えず笑顔になれた気がした。

肝心のタイムカプセルはというと、トレカやらゲームのカセットやら、500円玉やら、全然覚えてなかったが色々入っていた。

その中に1通手紙らしきものが入っていた。

昔の手紙なんて何を書いてるか分からなくて、恥ずかしいから、折りたたんでポケットにしまった。

その日の夜、誰もいない真っ暗な家に帰ってきた俺は、

電気をつけて、ソファに座り、いつものように酒を飲む。

しばらくして、ポケットを入れたものを思い出した。

取り出してみる。
封筒には何も書かれていない。

中身開けると、こう綴られていた。

「僕を愛してくれる人と一緒にいる僕へ。」

今、この手紙を書いている僕には、僕を愛してくれる人はいないです。

この先、僕に愛する人ができて、そして僕を愛してくれる人ができることを信じて手紙を書くことにしました。

僕は人見知りだし、カッコよくなければ、勉強ができるわけでも、スポーツができるわけでもありません。

だから、僕を愛してくれる人は優しくて、愛情深く、僕のことをよく見てくれている素敵な人なのでしょう。

僕は、不器用でだらしないとこもたくさんあるから、僕を愛してくれる人に苦労をかけてしまうことも、怒らせてしまうこともあるとは思います。

けど、僕は、僕を愛してくれる人を何があっても守るし、世界で一番愛する自信があります。

これを読んでいる「未来の僕」が、今、どんな僕になっているか僕は分かりません。

けど、僕にとって「未来の僕」のあなたは、
この手紙を書いてる今の僕であることは確かです。

「未来の僕」は、僕を愛してくれる人を大切に愛することができていますか?

未来のことは、分からないけど、
僕は「未来の僕」を信じています。

「未来の僕」と僕を愛してくれる人に愛を込めて。

18才の僕より。

手紙を読み終えた俺は、涙を止めることはできず、

酒も入っていたせいか、俺は嗚咽しながら、しばらく下を向くことしかできなかった。

次の日。

俺は、妻に連絡して会うことにした。

この先、どうなるかは分からないが、
自分からも妻からも、逃げずに向き合うことにした。

今、確かに変わらないことは、
俺は、妻を愛しているということだ。

ポケットに手紙を入れたまま、
妻に会いに行く俺の顔は、
なぜか少し微笑んでいた。

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