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ひかるぶんどきと木

ひかるぶんどきです!

Twitter(@hikarubundoki)の方に匿名でメッセージが投稿出来る「お題箱」を貼っております。そちらに子供の頃の思い出を書いて欲しいとのご投稿を頂きました。ひかるぶんどきの思い出を一緒にのぞいてみましょう。

小学二年生頃だったと思います。当時全国の小学生の間では「ハイパーヨーヨー」や「バトルえんぴつ」が大流行。公園ではヨーヨーを回し、教室の机の上ではえんぴつを回し、世の小学生達は何かに取り憑かれたかの様に夢中で物を回していました。

しかし当時ひかるぶんどきのクラスで一番流行っていた遊びは「ハイパーヨーヨー」でも「バトルえんぴつ」でもありません。
「ひかるぶんどきの物を高い所に投げる」でした。

教科書、ノート、筆箱…とにかく僕のものを手に取っては、校庭の木や焼却炉の高い所に向かってぶん投げるというアグレッシブな遊びが流行っていました。

僕は「ヤメロヨーwww」なんて言いながら満面の笑みでみんなを追っかけ回していました。みんなに構ってもらえる事が嬉しくて、おれめちゃくちゃ人気者じゃん!と思っていました。当時のメンタルの強さを何処に落っことしたのでしょう。

そんなある日、クラスメイトのヒライ君(仮名)がうちに遊びに来ました。ヒライ君はいわゆるパワータイプ。考えるよりも体が動く人で、裏表の無い人気者。休み時間に一緒に遊んだりお互いの家でゲームをしたりと、かなりの仲良しでした。

ある日いつもの様に僕の家でスーパーファミコンやゲームボーイをして仲良く遊んでいた時の事。ゲーム中にヒライ君が突然スッと立ち上がりました。

すると何を思ったのか、僕のゲームソフトがまとめて入っていたカゴを持ち出して全力で外にダッシュしました。

キラキラした目で駆け出したかと思えば、近所の○○公園に到着。公園の真ん中にある大きな木の下でおもむろに立ち止まり、葉っぱが生い茂る木の上部に向かって僕のゲームソフトを次から次へと投げまくりました。

枝や葉っぱの中に飲み込まれていく僕のゲームソフトたち。後に理由を聞いたら、こうすると僕にウケると思ったらしいです。当然そんなワケはなく(普段物を投げられてもヘラヘラしているので仕方ない…?)、いつもは何を投げられても「ヤメロヨーwww」で済ませていた僕ですがそこで初めて「やめろよ!!!」と怒鳴りました。

いつもの「ヤメロヨーwww」ではなく「やめろよ!!!」が炸裂した事に、さすがのヒライ君もやりすぎた事に気が付きました。

珍しく怒りを露わにした僕の姿に圧倒されたヒライ君はその場で泣き出してしまいました。いつも元気なヒライ君が泣いている姿を見て何故か僕も怖くなって泣いてしまいました。その後反省してちゃんと謝ってくれたし悪気が無いのも分かっていたので、無事仲直りする事が出来ました。

でも問題なのはここから。大きな木に引っかかった数十本のゲームソフトたち。どうやって取り戻そう。太くて背の高い木だし、まだ体も小さかった僕達は登る事も困難。

とりあえず木を揺らしてみる事にしました。するとボトっ、とゲームが一本木の上から落ちて来ました。全力で蹴ってみるとまたボトっとゲームが落ちて来ました。

大きな木なので、全力で蹴ってようやく少し揺れるか揺れないかのレベル。今日で全てのゲームを回収するのは無理だと判断し何度か木を揺らして数本回収した後、残りは明日以降に持ち越す事に。

もしゲームが木に引っかかっている事がみんなにバレたら先に取られちゃうかもしれない。この事は僕とヒライ君だけの「極秘」にして帰宅しました。

そして翌日の昼休み。初代ポケモンのエビワラーの変なポーズのモノマネをして爆笑をとっている僕を、廊下から手招きする人物が。彼は隣のクラスのカツラギ君(仮名)。我が校随一の情報屋で、新鮮なゴシップを僕にいち早く横流ししてくれる悪友です。

▼しょだいのエビワラー

エビワラーのモノマネを早々に切り上げた僕をひと気の無い場所まで誘うカツラギ君。周囲に誰もいないことを確認し、とっておきの情報があると定番の前置きを据えた上で教えてくれた情報が
「○○公園にゲームの成る木があるらしい」でした。

カツラギ君は他校にも友達(カツラギ君いわくスパイ)が多くいます。
昨日僕達が木からゲームを収穫する所を他校のスパイが目撃して情報が流れた様でした。この時点で木のゲームソフトが僕のものである事をカツラギ君は知りませんでした。

その後カツラギ君に真相を話して放課後ヒライ君にも声を掛け三人で○○公園に行ってみると、他校の小学生と思われる集団が例の木の周りを包囲して揺らしたり蹴ったりのお祭り騒ぎを起こしていました。

楽しそうに木に衝撃を与えている他校の男子達。僕とヒライ君は誰にも漏らさなかったのにアッと言う間に他校にまで知られる僕たちの「極秘」。小学生間の情報伝達ネットワークはGoogleにも引けを取らないものがあります。

揺れる木。木から落ちてくる僕のゲームソフト。一本、また一本と彼らの手に回収されて行きます。

ちょっと待て!それ俺のゲーム!と言う勇気が出ず、言った所でゲームに名前を書いていなかったので証拠も無い。絶望で膝をつく僕。
そんな僕の肩に手を置き、ヒライ君が力強く放った言葉を僕は忘れません。

「おれたちも揺らそうぜ!」

先客達に混じって全力で木を揺らす僕とヒライ君の二人(カツラギ君は公文に行きました)。小柄な為思うように木を揺らせず苦戦していると、その時!
激しい夕立が発生し、瞬く間に公園に小さな海が形成されました。今まで体験した事の無い激しい土砂降りに襲われて、その場にいた全員がずぶ濡れで帰宅しました。

夜になると雨は激しくなる一方。途方に暮れる中、ここでぶんどき少年に天才的閃きが。
「今なら誰も公園に来ないじゃん!」
気がつくと僕は家を飛び出して豪雨の中公園に戻り、再び木を揺らし始めました。

真っ暗な中ずぶ濡れになりながらもひたすらに木を揺らす。寒いし痛いしビッショビショ。
そもそも何でこんな事しなくちゃいけないんだ?次第に怒りと悲しみと虚しさが心を支配し、僕は大粒の涙を流して大声で泣きました。大雨に降られて泣き叫びながらも一生懸命木を揺らしました。

永遠とも思える時間泣きながら木を揺らし続け、その甲斐あって元々所持していたゲームソフトのおよそ7割を回収する事か出来ました。途中からいくら揺らしても落ちて来なくなった為、残りは既に取られてしまったのでしょう。
でも絶対に取り返したかったゲームは全て回収出来たのでとりあえずホッと胸を撫で下ろして帰宅しました。

その後数日間は他校の小学生達がゲームを狙って木を揺らしに来ましたが、何も落ちて来なくなった事で諦めたのか次第に誰も来なくなり、この件は収束を迎えました。


後日。おつきみやま入口のポケモンセンターで主人公にコイキングを売りつける怪しいおじさんのモノマネで爆笑をとっていた僕に、カツラギ君が新たな情報をこっそり教えてくれました。
「例の木あるだろ?あの木、夜になったら大声で泣くらしいぞ…!」
カツラギ君のお兄ちゃんが塾帰りに公園の横を通った際に木の泣き声を聞いたそうです。
それ木じゃなくておれが泣いてたんだよ、とは恥ずかしくて言えず乾いた返事で誤魔化しました。カツラギ君ごめん。

▼コイキングうりつけおじさん

「ゲームの成る木」として一躍有名になった公園の木は「大声で泣く木」に転生し、近所の小学生達のごく一部でほんの数日間だけ再ブレイクを果たしました。

追記
先日実家に住む母から○○公園の写真が送られて来ました。およそ十年ぶりに見る○○公園は様相が変わっており、例の木はだいぶ前に伐採されたらしく跡形も無くなっていました。
少しだけ小声で泣いた。

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