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雨の日、カメラロールを遡る

雨の日。少し憂鬱な気持ちになる。

伸ばしていた髪が少し波打つ。前髪があっちゃこっちゃにいってしまう。耳から聴こえてくる歌はaikoの二人。目の奥がツンとして、なんだか泣きそうになる。

今日はカメラロールの整理をしていました。何千枚にもなってしまった思い出を整理していくのは、楽しくて、寂しい。

少しおめかしして向かった新国立美術館。ルーブル美術館展のパネルで写真を撮ったこと、つい先日のように思い出せる。

井之頭公園で有名なたい焼きを食べた日。どきどきしながら路地裏でたい焼きを買ったこと、あの子はまだ覚えていてくれているだろうか。

体育祭。たくさん汗をかいて、笑って、大声を出して、走って、踊って。大好きな行事、体育委員長をやって本当に良かった。

大切な思い出たちを撫でていた指が止まる。あ、夏祭り。

ずっと好きでなんとか付き合えたあの人は、背が高くて、肩幅が広くて、笑ったときにきゅっと口角が上がる、そんな人だった。

追いかけ続けて、行きたかった花火大会に誘って、二人で食べた屋台の焼きそば。ソースがしょっぱくて困っていた私に水を買ってきてくれた。やっぱり、すてきな人だなあなんて思っていたら、もう最後の大玉が打ちあがっていた。真っ黒な空に打ちあがった華は、ぱっと光ってすぐに消えてしまった。


ブランコで酔ってしまう私をだせえ~とからかいながら、隣で無理するなよと言ってくれるあの人のやさしさに何度甘えたか。心配してほしくて、わざとブランコに直行したりして。今思えば幼稚だったなあ。

独りよがりだと思っていたけれど、好きだと言ってくれたのは貴方からだった。もちろん、私は好き好きアピールばっかりだったからとっくに気づいていたのだろうけど、それでも貴方から言葉が聞けたのが嬉しかった。

付き合って、公園じゃない場所で遊ぶようになって。それでも最後はブランコに乗る、二人の約束があるデートが、私は好きだった。目的地の近くにある公園を探してしまう癖は、恥ずかしいけれどまだ直らない。



新しい生活。もう貴方に会うこともない。お互い、新しい生活が始まっている。高校卒業間近、友達から聞いたあの人の近況は、なんだか自分とは遠いものになってしまったような気がして、ほんのすこし、寂しかったけど、私はもう泣かない。前を向いて、また新しく一歩を踏み出さないといけないんだ、がんばろうね私。


カメラロールから完全に貴方がいなくなったとき、私の心はすこし、晴れやかになっていた。


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