夜間痛を呈する肩の原因、特徴、アプローチ
リハ塾の松井です!
肩関節の痛みにおいて夜間痛を訴える方おられると思います。
そんな方のリハビリでこんな悩みありませんか?
・夜に痛むと言われても再現性がないから困る
・就寝時のポジショニングを指導するが、あまり痛みが変わらない
・何をしていいか分からないので、結局マッサージして終わってしまう
確かに、夜間痛の訴えがあってもリハビリに来た時にその痛みを再現できるかと言うと難しいので、何をしていいか分からなくなりますよね。
ですが、分からない理由としては、夜間痛が発生する原因を知らないからです。
肩関節における夜間痛は、肩峰下圧の上昇が原因と言われています(参考文献①)。
なので、夜間痛を軽減するには、肩峰下圧が上昇してしまう原因に対して介入しないといけません。
今回は、夜間痛と肩峰下圧との関係を踏まえつつ、肩峰下圧が上昇してしまう原因とそれに対するリハの考え方を解説します。
夜間痛と肩峰下圧の関係
夜間痛には肩峰下圧の上昇が関与しているとされているわけですが、その背景にはどんなことがあったのか。
緑川らは、透析肩に対して肩峰下腔の内容量増加が疼痛に関係していると予測し、鏡視下デブリードメントによって疼痛の軽減に成功しています(参考文献②)。
内容量の増加によって内圧が高まったのをデブリできれいにしたことで、減圧できたので疼痛も減ったという例ですね。
小西池らは、夜間痛の症例に対し、烏口肩峰靭帯の遠位および靭帯直下における圧が夜間痛の症例では有意に高かったと報告しています(参考文献①)。
これは、肩峰下圧の上昇の結果として、烏口肩峰靭帯の圧が高まったと考えられます。
肩峰下滑液包には自由神経終末が豊富に分布しているので、圧が高まることで疼痛を誘発してしまう原因になると考えられます(参考文献③)。
肩峰下圧上昇の要因
肩峰下滑液包には自由神経終末が豊富で、圧の上昇が夜間痛に関係していることが分かっています。
では、肩峰下圧を上昇させてしまうのは何が原因なのでしょうか。
一次的な要因と二次的な要因に分けて考えてみましょう。
<一次的要因>
・肩峰下滑液包炎
・腱板炎
・肩峰下骨棘の増殖
・烏口肩峰靭帯の肥厚
<二次的要因>
・肩峰下滑液包と腱板の癒着
・腱板の浮腫、短縮、攣縮
・上関節包靭帯の拘縮
一次的なものはさておき、二次的な要因は理学療法でも改善できる部分なので、今回は二次的な要因に対する介入を紹介します。
腱板の中でも、肩峰下滑液包との癒着を起こしやすい棘上筋との滑走性を引き出すことで、夜間痛を改善できる場合があります。
夜間痛を呈する肩の特徴
いくつかの報告を参考に、夜間痛を呈する肩の特徴を以下にまとめました。
・回旋制限を伴う(特に下垂位外旋、結滞動作制限)
・屈曲、伸展制限を伴う
・gleno humeral angle(GHA)の増加(肩甲骨下方回旋の増加、相対的な肩関節外転)
(参考文献④、⑤、⑥、⑦)
臨床的にも、下垂位での外旋制限や肩甲骨の下方回旋を呈する症例は夜間痛を訴えることが多い印象を受けます。
夜間痛へのアプローチ
今回は、肩峰下圧と肩甲骨下方回旋に焦点を当て、以下にアプローチを紹介します。
具体的には肩関節内外転運動に伴う、棘上筋の収縮-伸張の反復を行いますが、棘上筋は肩関節軸を跨いで前部・後部繊維の2つに分かれています。
前部繊維は内旋に、後部繊維は外旋に作用するので、繊維に合わせて内外旋肢位を使い分ける必要があります。
1.側臥位になってもらう
2.腋窩にセラピストの手をいれる
3.肩関節内転に合わせて、腋窩に入れた手を上外側に動かし骨頭を外側へ引き出す(肩甲骨下方回旋を組み合わせるとなお良い)
4.棘上筋前部繊維を狙う場合は外旋位で、後部繊維を狙う場合は内旋位で内転する
5.繰り返し内転する
内転に合わせて肩甲骨を上方回旋させると、肩上方はより伸張します。
痛みがない場合は、上方回旋も組み合わせて実施するとより効果的です。
肩上方組織は制限となりやすいので、よく滑走性を促しておくべきなので、是非試してみてください!
参考文献
1.小西池泰三:肩峰下滑液包の圧測定-夜間痛との関連-. 日整会誌. 1993;73:S461.
2.緑川孝二 他:透析肩に対する鏡視下手術成績. 日整会誌. 1998;72(2):S212.
3.富田恭治 他:肩峰下滑液包における自由神経終末の分布と肩関節痛. 別冊整形外科, 1995.;27:12-14.
4.伊藤 創 他:肩関節疾患の夜間痛改善に関係する理学所見と治療内容. J Musculoskeletal Medicine. 30(3):292-299. 2019.
5.山本 敦史 他:腱板断裂における夜間痛の背景因子と腱板修復術の術後成績に与える影響. 肩関節. 2009;33:419-422.
6.石垣 範雄 他:腱板断裂に伴う痛みが臨床所見に及ぼす影響. 肩関節. 2000;32:645-647.
7.林 典雄 他:夜間痛を合併する肩関節周囲炎の可動域制限の特徴とX線学的検討-運動療法への展開. J Clin Phys Ther. 7:1-5. 2004.
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