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宇宙の館「否定と肯定と子育て」

門番「おい、自分を肯定してくれる人がいたら、嬉しいだろ?自分を否定してくる人がいたら、悲しいだろ?」

門番は、唐突にヒカリに話しかけた。

門番「難しく考えるな。単純な感情だ。なぜお前に、他人の意見を否定する権利があるのだ?他人の意見に、異なる意見を言うのは良い。ただそこに否定の感情などいらない。意見をそのまま伝えること。なるべく言葉に感情を乗せない方が、穏便に過ぎるだろう」

続いて門番は、呆れた様子で言った。

門番「お前は何様だ?今後一切、否定をするな。相手の意見を受け止めてあげろ。もし受け付け難い意見であれば、感情を乗せず、自分の意見だけを伝えろ」

ヒカリ「確かにその方が、穏便に済むと思うけど、なんだかそれで人とのコミュニケーションって成り立っているのかな?感情のキャッチボールって必要ないのかな?」

門番「感情をぶつけ合う先には、憎悪しかないぞ。人間は感情を乗せると、段々と感情的になっていく。しまいにはなぜわかってくれないんだ!自分の考えが正しい!となる。他人と分かり合えると思うな。そこからもう、欲が始まっている。なるべく冷静に穏便に会話することが、大切なんだよ。」

ヒカリ「・・・・・・」

門番「特に、子供相手には気をつけろ。彼らは純粋な好奇心で、物事を判断している。それを変な大人の価値観を押し付けるなんて言語道断。彼らの好奇心を潰すな。親であっても、子供たちの好奇心を潰す権利などない。

ヒカリ「でもたまにさ、英才教育的な感じで、幼少の時から習い事をきっちりさせている親子がいるじゃない?それはどうなの?」

門番「最も大切なのは、本人の意志だ。物心つかない年齢から、その事に自然に触れていたら、気づいた時にはそれが習慣になっていて、それをするのが当たり前だと思い込んでいる。ある意味、洗脳に近いがな。でもある程度の年齢になってくると、周りの子供はゲームや外で遊んでいる事に、疑問が生じてくる。「自分も遊びたい!」という意志を持ったなら、親がどんなに頑張っても途中で挫折したり、結果がついてこなくなったりするだろう。」

門番「しかし、そこに気付きながらも目標を持ち、更なる高みを持とうという意志を持つ子もいる。その子達は伸びるだろう。最初は親の努力は必要だが、10代になったら本人の努力や意志がなければ、進んではいけない。細かな感情ではあるが、親の為、親が喜ぶ為にやる子もいる。でもそれが本心であれば問題はない。しかし、親に怒られるのが嫌だから、親の言われた通りにならなければ等の、歪んだ感情があれば、上手くはいかない。つまりは、親が子供の幼少期にどんな言葉をかけて、向き合ってきたかが鍵になってくる。否定的な言葉を使っていたら、歪んだ感情を持ち、心も歪む。反対に、肯定的な言葉を使っていたら、自分の本当の気持ちに沿った心が出来てくる。子供のうちの心の歪みは、簡単に直すことができる。しかし10代後半になってくると、難しくなってくる。子育てとは、1人の心を育てていく事。心は見えない。だから大事なんだ。背が小さい、大きい、太っている痩せているなどの、見えるものは何でもいい。大事なのは、見えない所だ。」

門番「子供にも意志がある。本人の意思に勝るものはない。子育てとは、親が子供を尊重することを学ぶ機会だ。親の価値観に閉じ込めるな。子供の純粋な好奇心を潰すな。子供を育てるにあたり、そこが大事だ。」

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