毘沙門天との出会い
「マスク付けない方は入店をご遠慮お願いします。」俺はこの言葉にキレてしまう、ふざけんな俺は地下アイドルMTに、このイケメンを見せる為に会いに来たんだ。奥に見える緑に染めた髪のMTに詰め寄ろうとすると、周りの男達、今で言うと囲い、厳密に言えば、その彼氏に真先に止められ、まずはその彼氏の顔をしこたま殴った。周りからは「キャ~」と言う叫び声を聞きながら、十分に殴った後に背後に衝撃を感じて眠りに落ちた。
?「私の声は聞こえますか?」
俺「MTの彼氏か?」
俺「いや、まさか、あいつは死んだ。漫画で読んだsaiか?」
?「いえ、私の名前は毘沙門天(びしゃもんてん)」
俺「毘沙門天?」
毘「人間の徳を得て成長する者です。」
俺「神様って奴か?」
毘「いえ、そこまで偉くはありません。」
俺「そうか、で?」
毘「あなたは悔しくありませんか?好きな人を取られて」
俺「あんな奴なんか、」
毘「それでは」
何やら頭の中に映像が流れて来る。これはMTと彼氏のエッチシーン、、悔しい、、
俺「何とかして見返してやりたい!」
毘「それでは囲碁を始めなさい。」
俺「囲碁?」
「、、、、」
目が覚めると目の前には木の檻があった。起きようとすると頭の後ろにズキッとし起きれずに居たら、ガラガラと昔の給食の配膳車みたいな音を立てながら部屋の前に止まり、白衣の男性が「ご飯だ」と言い、その次にダンボールの机に食べ物が置かれ、訳も分からずにご飯を食べていると、医師がやって来て私が人を殴った事で、自分が審議にかけられているのを説明され、ここは刑務所ではなく隔離病棟だと説明された。
俺「ここが鉄ではなく、何故か木の檻はそういう事だったんですね。」
医「、、、、」
その後、医師にコントミンとリスペリドンどちらが良いかと聞かれ、分からずに答えられなかったら、5分後に看護師数名に囲まれ筋肉注射をされ再び眠りに落ちた。
毘「あなたに囲碁の才能を授けます。」
俺「??」
注射から目が覚めても気を失った場所のままだが何か変だ。周りが真っ暗に見えるし、何かを取られた気もするし、なんて言うのか輝きが出せない。
毘「、、、、契約は成立しました。」
時々、誰も居ないのに声が聞こえる。
再び看護師がやって来るとご飯だと言われ、次は外に出されたが案内途中に注意すると、どの出入口にも屈強な看護師数名が待機している。
食事室の机には俺の名札があった。
「光れ」
名札と共に食事が置いてあり、隣の囚人達に取られる前に食べる事にした。
俺「あれ、やけに食事が美味しいぞ」
毘「それはリスペリドンのお陰です。」
しかし、朝食はなんて瑞々しい納豆なんだろ、この美味さは家で味わった事が無い。
毘沙門天「だから、リスペリドンのお陰だって」
俺「??」
毘「静かに、今からここを出る為の指示をするから従って」
思わず周りを見たが囚人達はご飯に夢中で、互いのおかずの量に不平を抱いているようだが、ん?見えるぞ、囚人達の考えている事が見える。
毘「それが私が授けた能力よ。」
俺は耳を疑った。
確かに動機が見えるし波動を飛ばしている方向まで分かる。こいつは前方型、こいつは戦闘向けでもないから波動が無い、こいつはやや前方より、普通は前への意識が高いみたいだな。
毘「筋が良いでしょう、他にも韓国のトップ棋士の魂を分け与えたので、あなたは囲碁棋士の経験も持ち合わせてます。」
周りを見渡すが俺へ注意を向ける者は居ない、俺の心へ直接話しかけているのか??
毘「今は早く食べなさい」
急いで食べ終わり部屋に戻ると、すぐに看護師から俺に面会希望があるを伝えられた。俺には心配する親族も友達も居ない誰だろうか?ちなみに両親は山に埋まっているはずだが、変な意味に取るなよ?ちゃんと死んで埋葬しているはずだ。
?「よ、久しぶり」
俺「!!!!」
面会室に緊張が走る。マスクでよく見えないがちゃらけ方からMTの彼氏、そして顔面にあるはずの傷は大きなマスクで隠れているが、それでも俺の拳のせいであろう、鼻にかける部分のマスクが歪んでるのは痛々しい。
?「痛かったぞ」
くそ、生きてやがったのか、俺の心を読んだように会話の先手を取られてしまった。
?「これから、お前は刑務所に行く訳だが何かあるか?」
俺「い、囲碁で勝負、いえ、囲碁で一生償わせて下さい。」
ムショに行きたくない、とっさに出た言葉がこれだった。
?「囲碁が打てるのか?」
そうするとMTの彼氏はバックから碁盤の模様をしたハンカチを広げ、ソフトボールぐらいの大きな袋を2つ出した。
?「俺に勝てたら無罪にしてやる」
MTの彼氏はこんな物を持ち歩いているのか?俺は俺で緊張で石を持つ手が震えながらも、俺が黒を持ち初手星で進み54手目
白はミスをしたように見える。遠くの左の白に繋がるつもりなら、そうすれば良いが遠過ぎる、上に顔を上げ顔色を見ても焦った様子も見えない、こんなのが勝負手か?受けてやろう。
白に生きるスペースを与えない、そうお前は死ね死ね。
よし、ここも殺した。
いや、死んだのは俺だ。
反対を守るしかない。
要石が取られ情勢は反対になり、黒は厚い部分が反対に薄くなる。
打ちながら白から聞こえるのは、俺の意思とは反対の生きろ!生きろ!だ。しかし、地を稼げず生きるしかない、そうだ障害基礎年金だけみたいで涙が止まらなかった。
俺「負けました。」
?「ん?もう一回」
俺「人生に負けました。」
この閉鎖病棟にはティッシュも無く、涙も鼻水も出し続けたままでしかない。
?「俺は広島アルミ優勝者だぞ?」
確か女性の名前が優勝したのをネット記事で見た気がした。
?「森 日気子」
「俺の名前は森 日気子、もし、次に対戦して勝ったら無罪にしてやる。お前の先生は誰だ??」
俺は思わず主治医の名前を答えた。
森「そんな先生居たかな?」
森「いいだろうスマホ返してやるが、次の対戦するまでにせいぜい鍛えておくんだな、負けても良いぞムショは人生の糧になる。」
そして俺には奴からビニール袋が渡された。
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