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shinobuk
海賊になろうよ
海賊になろうよ雛が育ったら 松岡瑞枝(『光の缶詰』)
「ねえあのね、ジョイスは『ユリシーズ』をベッドに寄りかかりながら書いたんだって。文学って寝ていてもできるからすごいね。眠った後に始まるのかもね」
本から顔を上げて君が言う。私は黙って聞いている。窓を開けなくちゃ。
「眠ってる間に書くことって育つのかもね。眠って、眠って、こんなに眠ったらもう世界から見放されちゃうとも思って、でもまだ眠って、つけっぱなしのテレビからはときどきニュースが流れてる、今こんなスイーツの習慣が流行っています、朝からスイーツです、でも私は眠ってて、その間に誰かは誰かと大事なことを決めていて、私はその間もずっと眠ってる、そうしてふっと目が覚めて、何か書かなくちゃ、って思う。育ったんだからって。たくさん眠ったら物書きになれるね」
私は窓を開けた。風が吹きこんでくる。「ううん、海賊になりたかったな」とふっと君が言う。
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