預かっている大きな足

一晩だけ預かっている大きな足  樋口由紀子(『めるくまーる』)

最近現代川柳をずっと読んでいてふっと思ったのは、現代川柳って童話の世界なんです、と言ってしまえばもう一つの答えになってしまうんじゃないかということだ。

俳句って童話なんです、とか、短歌って童話なんです、っていうと足りなくなっちゃうけれど、川柳って童話なんですよ、っていうと、まあだいたいそうなんだよな、と答えが事足りてしまう。

一晩だけ大きな足預かっちゃうしなあ、とも思うし。
私は今でも時々お菓子の家のことやピーター・パンにそそのかされて自分が泣きながら空を飛んでいるところを思い浮かべることもある。
そろそろ童話いいんじゃない? と言われたこともあった。「もうやめなよ」

ただなんていうか、パチンコをやめられない人もいるみたいに、童話に赴くことをやめられない人もいる。
やっぱり泉に行って、落としたのは金と銀と銅の三本の斧です、と嘘をついて泣いている自分がいる。アニマルたちにきびだんごをばらまき、桜に灰を投げつけている自分がいる。きんいろのがちょうを抱いて走っていくおろかものと村では呼ばれるじぶんがいる。

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