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リカちゃんのふくらはぎ

歩いたことないリカちゃんのふくらはぎ  八上桐子(『hibi』)

この句を見たとき凄くびっくりしたのは、リカちゃんって歩いたことないんだよね、という事実だった。
一緒に歩いたような気になっていることがある。ちゃんとその足でここまで一緒についてきてくれたよねリカちゃんありがとう、と涙ぐむことも。

でも私歩いたことないんだよね、あなたが思っているだけで、でもそう言ったらみんなに悪いような気がして黙っていたけれど。

そうリカちゃんが話している間にリカちゃんのふくらはぎがぱんぱんに膨れ上がってくる。
私はごまかすように笑って相づちを打ちながらリカちゃんのふくらはぎが気になって仕方ない。なんとかふくらはぎが巨大化するのを止めなきゃと思うけれど、このふくらはぎにもし夢や時間や未来が詰まっているのだとしたら、私一人の手でそれらを台無しにするわけにもいかない。
こどもの悲鳴、私の動悸、ふくらはぎの鼓動。
リカちゃん、ここまで歩いてきた私たちは誰だろう。

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