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少しずつ部屋
少しずつ部屋に命の缶運ぶ 竹井紫乙(『ひよこ』)
少し、って好きだなといつからか思うようになった。
少しだけ電車に乗るとか、少しだけ眠るとか、少しだけいない感じを出すとか。
少しが、好きになっている。
こどもの頃、テストにも本当はこう書きたかった。
少しだけわかりました、少しだけ2です。
少しだけわかった答えを書く。少しだけ、まるをもらう。それでよかったんじゃないか。
少しだけ嬉しい。少しの命の缶のようなもの。
「先生、少しだけ家に帰っていいですか?」「だめです」
少しはときどき拒絶される。
でも少しだけのひとは時々少しだけ好きなひとといる。
好きとか嫌いではない。ぼんやりしたものがお互いをいったりきたりする。
二人は二人でいるのに、少なくなってゆく。
どんなふうかはわからない、少しだけぼんやりしたまま、少しだけの二人になってゆく。
「今、少なくないですか?」と突然相手から言われる。
「今、少なくないですか? なんとなく」
たぶん明日いろんなことを忘れてしまうんだろうなというのもわかってる。
きっとあなたも私も忘れてしまうんだろうね。
でも少しだけ続く。少しが永遠に残って。続く。
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