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奥の部屋からくる手紙

いつからか奥の部屋からくる手紙  樋口由紀子(『現代女流川柳鑑賞事典』)

テレビを見ていたら又吉直樹さんが、自分は物を書くときはいろんな場所を移動しながら書く、ふらふらしながら書く、と話していて、ああそうなんだなあと思った。

ふらふらして書くと、街のあちこちから小さな手紙を受け取ることになる。

「今日あの人と別れてね、どうして別れちゃったんだろう、あんなに想いが通じ合っていたのに、凄い別れ方をしてしまった」

ふっとそんな話をしている人達がいる。

街には今日出会った人や今日別れた人が普通の顔で歩いていて、普通の椅子に腰掛けてカフェラテを飲んでいたりもする。そうして少しだけ今日あったことを話して小さな手紙を飛ばす。明日消えてしまうとても小さな手紙を。

今日は街をふらふらと歩いた。手紙は書かないけれどラーメンを作っているラーメン屋さんという場所があって、私はくるくると吸い込まれるように入って行った。

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