ぼくはまだ青空にいる
ぼくはまだ青空にいる 平気 妹尾凛(『Ring』)
眠る前に月って星なのか気になって電話をかけたことがある。
「月って星なのか?」と。
「星でいいよ」と相手は答えたように思う。たぶんそれは「星じゃなくてもいいよ」とも言っていたように思う。
月が星だったとしてもそうじゃなくても、あなたはあなただし私は私だし、それにもう、私、ゆくから。
そういう感じだった。ゆく、っていうのは、私もう深い場所にねむりこむの、という意味だ。深夜は、感じ、だけで会話が行われることはわかっていたけれど。
ぜんぶ、感じが支配してゆく。
私は電話を切って、月って星なのかなあと思って眠る。
もしかしたら、学校の廊下で誰かが私に言ったかも知れない。
「ねえ、ひからびたひとくん、月は星なんだよ。あなたは何年もしてきっと思い出すから覚えておいて。きっと少しだけ役に立つよ。月と星のことだけ思い出して。私のことを忘れても私はずっと平気だから」
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