巨峰食う
うへのはうより粒取つて巨峰食ふ 岡田一実(『光聴』)
本の中にどんな風にいちごが表れているか興味深くて、いちごに注目しながら読んでいる。
見つけると人に報告することもある。
今日はこういういちごを見つけたよ、とか、この人はこんないちごの使い方をしていたよ、いちごとたばこ、いちご憲法、この世界にはまだまだ知らないいちごがあるみたい。
大学の頃に、本の中のいちごを研究すればよかった。いちごの発表をすればよかった。
なにをされてる方なんですかと言われたときは、主にいちごの研究をしています、と言えばよかった。主にいちごの研究をしていますが、主以外もいちごです。
まあつまりほとんどほぼいちごなんです。
最近、どっと、いちごを送られた。
真夜中眠れないときに大皿の中からいちごを手に取って食べている。
すごく悪いことをしているような気持ちにもなったが、誰に悪いんだろう。具体的な顔があふれては消えていく。きみときみときみ。
私はここまで生きて、こう食べている、それ以外いちごに対するやり方はなかった、と思った。
いちごを食べる音以外、凄く静かだ。
真夜中のとがったところには時々いちごの崖のようなところがある。
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