改めて考える。VTuber楽曲ってなんだろう?

先にことわっておくけれども
これは別にぼやきとか、愚痴とか、そういうものではなくて
ごく純粋に疑問に思ったので、考察というか、考えを整理してみたいなって思いつつ書いてます。

論争を巻き起こしたいわけでもなく、マジの独り言みたいなものだと思っていただければ幸いです。

「VTuber楽曲」はカテゴライズなのか?

「VTuber楽曲」という言葉は、カテゴライズのような気もするし、そうでない気もする。

みんなの動画や記事での扱い、Twitterでの様子などを察するに
VTuberが関与している楽曲」が「VTuber楽曲」として扱われているようにみえるし、私自身もそういう扱いをしている。

関与の仕方は様々であり
・VTuber自身がボーカリストとして歌うもの
・VTuber自身が作曲したもの(インストも含む)
・VTuberが作曲し、他の誰かに歌ってもらったもの
もっと枠を広げれば
・VTuberのために書かれたファンメイドの楽曲
 ⇒向けられた本人が歌唱を行うケースも多く存在する

こういったものがVTuber楽曲としてカテゴライズされている。

ただこのカテゴリーはもはや、アニメに関係している歌をすべて「アニソン」としているようなもので、カテゴライズとしては段々と意味をなさなくなっているようにも思える。

誤解しないていただきたいのが
これは「アニソン」「VTuber楽曲」という括りを否定しているわけではないし、メリットもある。

アニソンで括るメリットは「アニメ好きに聴いてもらいやすい」だと思う。
クラブイベントなどで「アニソンオンリー」と掲げるのは、アニソン好きが集まるからだと思うし、お客としても好きな曲に出会えそうだから行く。
VTuber楽曲という括りも、同じような性質をもっていて「VTuber好きに聴いてもらいやすい」というメリットがあると思う。

このメリットは強く、好きなVTuberが歌ってるからという理由だけで、普段あまり聴いてこなかったジャンルの曲を聴くようになった人も少なくないのではないだろうか?

具体的にいえば、キズナアイちゃんが初のEDM楽曲に挑戦した「melty world (Prod.TeddyLoid)」によって初めてEDMに触れた人のなかに
「あっ、EDMっていいじゃん」って思った人もいるのではないか?

あるいは「Up-to-date feat. かしこまり / MonsterZ MATE」を聴いて

「えっ、ラップってちょっとバカにしてたけど、ちゃんと聴くとかっこいいし、メッセージ性すごいじゃん!」って感じた人もいるのではないか?

「なにか」/93poetry【 Prod.Sorabeats】を聴いて

「ポエトリーリーディングっていうジャンルがあるんだ!めっちゃ心にくるじゃん!」って思った人もいるのではないか?

大枠のカテゴライズが存在することによって生まれてきた楽曲(俗に言う文化の脈、つまり「文脈」)もあるし、そのカテゴライズによって日の目を浴びるようになった楽曲も多数存在する。

AZKiさんのチャンネルで行われた#音楽を止めるな企画447 Recordsのチャンネルでは「VTuber楽曲」「バーチャルに関係している人の楽曲」を募集し流し続けることで、その界隈に興味を持ってる人がチェックし
「この界隈にはこういう音楽をつくる人もいるのか!」と新たな出会いを生んだ

また拙著であるが

こういった記事の読者も「VTuberの中でこういう音楽があるのか」という視点でチェックしている人も多くいると思うし、そういう視点で見る人が増えることによって、ピックアップが成立するとも思っている。

その上で、じゃあなんで「カテゴライズとしては段々と意味をなさなくなっている」のかについて触れていきたい。

①「VTuber楽曲」の性質が増えてきている

先ほど

VTuberが関与している楽曲」が「VTuber楽曲」として扱われているようにみえるし、私自身もそういう扱いをしている。

関与の仕方は様々であり
・VTuber自身がボーカリストとして歌うもの
・VTuber自身が作曲したもの(インストも含む)
・VTuberが作曲し、他の誰かに歌ってもらったもの
もっと枠を広げれば
・VTuberのために書かれたファンメイドの楽曲
 ⇒向けられた本人が歌唱を行うケースも多く存在する

と述べたが、これは色んなケースが出現してきた結果こうなってきたんだと思っている

VTuberオリジナル楽曲=キャラクターソング的なニュアンス」は初期から存在するし、現在も存在する

このように自己紹介がそのまま歌になったもの

アニソンでいうところのキャラクターソングのように、本人の言動やキーワードが入ってるような楽曲

グループのテーマソングのようなもの

コールに本人の名前が使われているものなども存在する

この歌といえばこのVTuber」という代名詞のように扱われることもあるほど、キャラクターソングの色が強いものもある。

また、この「バーチャル」ということをテーマにした歌も多く存在する

タイトルの通りVTuberについて歌ったもの

バーチャルYouTuberという存在について考察した歌

バーチャルという存在の中で「いのち」について考えた歌(余談ではありますが、ぜひ概要欄にのっているライナーノーツまでお読みいただければと思っています)

バーチャルとリアルについての可能性について歌ったもの

こういったものは、「VTuber」という文脈があったからこそ生まれてきた歌だと思うし、だからこそ深く考えさせられる歌でもあると思っています。

さらに目線を変えれば、バーチャル空間を生かしたアーティストもおり

……と、だんだんここまでくると音楽性の中に
キャラクター性やバーチャル性がなくてもVTuber楽曲として成立しているように思うんですよね

何が言いたいかっていうと、だんだんと
「VTuber楽曲ってキャラクターソングとは言い切れないよね」っていう環境になってきてるんだなって思っています

これは
「VTuber楽曲の幅が広がったよね!」とも捉えられるし
「VTuber楽曲っていえばこういうものだよね!」とは言いにくくなってきているなって思ってきています

界隈によっては
○普段は配信者として活動している人がなんらかの形でオリジナル楽曲を手に入れるケース
○音楽アーティストとして活動することがメインで、様々な楽曲を発表していくケース
は別物として扱われるものなのかもしれませんが
VTuber界隈はその「ごった煮感」を良しとして受け入れているので、こういう状況になっているのかなとも思ってます(上記のメリットの話に帰結するのかなって)

何度もいうように、この状況を悪というつもりはなく
むしろ私も「だからこそ面白いよね」って思ってる側なんですが
カテゴライズって考えたときには、この部分が難しいんだろうなって考えてます。

②VTuber楽曲はロック?エレクトロニクス?ポップス?

これはその曲によるとしか言いようがないし、楽曲のジャンルについて外野が「これは○○だ」というのは野暮だと知っている。

ただまぁ、調査程度にiTunesのジャンルを覗いてみると
「エレクトロニクス」で販売されている曲が多いように感じるが、「オルタナティブ」にも「アニメ」にも見かける

逆をいえば「VTuberだから〇〇な曲じゃないとダメ」という概念はないという表れでもあるとも思う

ただ、そういった住み分けは邪魔なようで、大事な役割も担っているような気がするので、これまた難しいところだなぁと思う

というのは
「VTuberファンだからVTuber楽曲はチェックする」ということはあっても
そのVTuberファン以外へのアプローチが難しいなぁとも思っているから

VTuber楽曲の幅が広がるたびに思うのは
「これ、VTuberファン以外にも届いてほしいし、界隈の文脈知らなくても十分に楽しめる音楽だよなぁ~」って曲は、どうアプローチしていけばいいのか

私の昔話になるが、こんなことがあった

 私は高校時代吹奏楽部に所属していた。文化祭の時期になると、「今年は何を演奏しようか」などの話題で盛り上がった。場合によっては新しい譜面を買ってくれることもあった。
 新しい譜面を買うには、みんなが納得して「それを演奏しよう!」ってなる必要がある。私は「Tank!」を希望したのだが、ジャンルがアニメに分類されており、先輩から「それアニメの曲でしょ~?オタクじゃ~んwww」と一蹴され、ジャンルが足かせになる場面を痛感した。

ちなみにこの曲である。めちゃくちゃかっこいいので全然余談だけど聴いてほしいですね。たぶん聴いたら「この曲か!」ってなる人も多そう。

何がいいたいかっていうと
いかに楽曲がよくても「アニソン」というだけで弾かれたことを考えると
VTuberという文化を毛嫌いしている人からすると、ある種の機会損失に繋がっているんじゃないかってことを危惧しています

私一人が危惧したところでどうこうできる問題ではないし
「だからこうした方がいい!」っていう解決策も見いだせていないんだけれど
なんというか、そういう弊害が怖いなぁってぼんやり思ってます

このあたりに関しては、大手トラックメイカーさんが参入して名曲を作ったり、音楽レーベルが関与することで信頼を獲得していくことで
一般音楽とVTuber楽曲の境目がどんどんなくなっていくことによって
なくなっていくと思ってるんですけどね

これはボカロ曲が最初は「オタクの曲」ってバカにされていた時期もあったけど、長い時間をかけて、様々な取り組みやアーティストの関わりがあって一般化されていったような、そういうものなのかなって

あと、そういう風に毛嫌いがなかったとしても
純粋にVTuber楽曲が増えていくことによって、数が多いゆえに相対的に埋もれていく曲も増えていくことへの懸念でもあります

和ロック好きだったら覇優雅エミちゃんとかいいよね~」
みたいな感じで
こういうのが好きだったらこれもオススメだよ」を探るときにジャンルなどは役に立つ場面もあるので
そういうのがもっともっと垣根無く広がればいいなぁって思っています

③この方はVTuberでいいの?問題

問題っていうほど困ってはいないけれど、判別が難しい人が増えてきているなぁととも思っています。
本人が「VTuberです」と自称して活動していればいいんですが、そうじゃないけれどVTuber楽曲やバーチャルの音楽に関わってる人もいるわけです

たとえばエハラミオリさんはVTuber文化に深く関わってる大切な人の一人だと思うし、VTuberさんの楽曲にも多く関わっています。
ただ、彼自身はVTuberではないです。そうなった場合、彼の楽曲はVTuber楽曲と呼べるのでしょうか?

彼がVTuberさんに楽曲提供したものはVTuber楽曲と呼べると思いますが
彼本人の楽曲はVTuber楽曲と呼ぶべきかは線引きの難しいものだなぁとも思います。いや、楽曲は素晴らしいのでVTuber楽曲かどうかを問わず聴いてほしいし、これ以上掘り下げるのは野暮だなと思うのでいいません。

あるいは、VRC内で活動しているアーティスト=VTuberではないということだったり
アカウントにオリジナルキャラクターを準備して音楽を作っている人が全員Vtuberというわけでもない
リアルでも活動しつつも、ライブなどではバーチャルの強みを生かして活動する人もいる
逆にリアルの素性を絶対に隠すためにバーチャルを利用して本当にやりたい自己表現をおこなってる人たちもいる

そもそもとしてVTuberの定義自体も不安定である以上、そこに区分するかどうかも不安定であるというものだったりする
まぁ、逆をいえば、自称すれば誰でもVTuberたりえる時代だったりもするわけです

……って考えたときに「この楽曲はVTuber楽曲と区分していいのか?」と疑問になることもしばしばあるわけです。
そのためだけに本人に「VTuberですか?」と聞くのも野暮がすぎるし
「VTuberじゃないからその人の曲を聴かない」っていうのもおかしな話である

終わりに

そんなこんなで不明瞭な点もまだまだ多い(と私が勝手に思っている)VTuber楽曲の世界ですが

だからこそ好きだし、奥深いし、いろんなドラマがあるし、面白いなぁとも思っています。

たびたび言ってるんですが、そもそもバーチャル界隈というものが、才能の坩堝だと思っています
同じバーチャル界隈だから」という理由だけで、本来あり得なかったような組み合わせが成立することが多々あるわけです(俗にいうインターネット交通事故)

その上、全体を統括してるレーベルも存在しませんし、完全なリストも存在しません

だからこそ仲良し同士がくっついて一緒に面白い楽曲を作ったりできる世界なんだろうなぁとも思っていますし
リスト一覧が存在しないからこそ、みんなして再生リストにまとめようとしたり、記事にまとめようとしたり、Twitterで「これもいいぞ!」って言い合ったりするんだろうなって思います

そう、だから、こんだけ長々書いておいて、実はこんなことを考えること自体野暮だったりするんだろうなって思っています(笑