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ファンはVtuberに何を求めているのか

 先日こんな興味本位でこんなアンケートを取ってみた。140票と、参加していただいた方、ありがとうございました。140票という数は、アンケートとしては、そこまで確からしい結果ではないかもしれないが、せっかくなのでこの結果を個人的な観点から考察してみようと思う。

選択肢について

 本題に入る前に、なぜ選択肢をこの4つにしたのか話す必要があるかと思う。なんて書き方をすると堅苦しいが、簡単にいえば私がVtuber界隈を眺めていて、大きくこの4種類に大別できるかと思ったからだ。アンケートでは直観で答えていただいたが、今回はそれぞれについて細かくふれてみたい。

○ドラマ性(成長物語)、感動

 最近「活動一周年おめでとう!」という文言をよく目にするようになった。企業勢、個人勢問わず、一年間続けてくるには相応の努力があったと思う。また、「登録者1万人突破おめでとう!」「初のオリジナルソングおめでとう!」「○○に出演おめでとう!」「再生数○万おめでとう!」など、あたたかい声が多い。
 他のコンテンツにもそういった声がある。
 だが、Vtuberは生配信やTwitterなど、比較的レスポンスの返ってくるコンテンツだ。関わりが強いほど、そういった感動が強くなる。
 我々はそこに1つのドラマ性を見出しているのではないだろうか。

○お笑い、面白さ、ネタ

 「面白さ」という要素はとても単純で、とても奥が深い。大抵のコンテンツにはこの「面白さ」が求められる。
 Vtuberを見始めたのも、単純に「面白そうだから」ではないだろうか?
 話題の面白そうなドラマや映画があればみたいと思う。面白い人の話は聞きたくなる。
 そして一度面白いと思った作品は続編がでればみたくなる。
 それをオススメして、面白さを共有したくなる。
 「単純に笑いたいから見る」というのは視聴する立派な理由になり得る。

○歌のうまさ、音楽性

 「歌うまVtuber」として話題になる人が増えたり、オリジナル曲を作ったり、歌合戦などがあったりと、この界隈には音楽に関係する出来事が多い。投稿動画のほとんどが「歌ってみた」の人もいるし、生配信しつつリクエストを受けた歌を歌う活動をメインにしている人もいる。
 ミソシタ、富士葵、ときのそら、MonsterZ MATE、響木アオなどメジャーレーベルに属しながら音楽活動を続けている人も出てきている。キズナアイや輝夜月、樋口楓、響木アオのように音楽ライブを行っているものもいる。また、メジャーでなくとも、各種配信ストアで販売を行っている人もいる。
 しっかりと統計を取っていないのでわからないが、体感的に音楽動画の方が伸びやすい気もする。

○癒し、ぬくもり

 「ASMR」「添い寝配信」など、その手の配信が増えている。
 また、「ママしゅき…」などと言いながら札束を投げまくる大人が増えている(筆者もそちら側の人間である)。
 Vtuberに対して、「ママ」「孫」「彼女」のような感覚で関わるのは、それだけ寄り添いたいという思いであり、支援したいという気持ちの表れだと思う。そして、その中に私たちは癒しやぬくもりを求めているのではないかと思う。
 何も囁き配信などしていなくても、推しが一生懸命ゲームをしていたり、トークしてくれるだけでオタクは「いい……最高…」と限界になるものである。存在してくれるだけで、癒しであり、ツイート一つにもぬくもりを感じれるものなのだ。

考察

 さて、改めて順位を確認してみると
 1位 44% 癒し、ぬくもり
 2位 34% お笑い、面白さ、ネタ
 3位 16% ドラマ性(成長物語)、感動
 4位  6% 歌のうまさ、音楽性

 正直かなり以外な結果であり、興味深いデータだと思った。
 私の予想では

 1位 お笑い、面白さ、ネタ
 2位 歌のうまさ、音楽性
 3位 癒し、ぬくもり
 4位 ドラマ性(成長物語)、感動

 だと思っていたからだ。
 人により好みがあるのは承知の上で、それでもみんな「面白いものをみたい」というつもりで見てると思ったからだ。そして、どこの見ても歌の動画が出ているし、みんな歌を聞く。歌という需要はとても高いと思っていた。癒しを求めているのはわかるが、どちらかと言えばその目的は少数派なのではないだろうか。そして、ドラマ性はあくまでおまけ程度だろうと。

 結果としては私の読みは大きく外れていたわけで。
 それらを踏まえた上で思うことを書いてみようと思う。

現代人はVtuberに癒しを求めている

 たぶん、学校終わりや仕事終わりに、電車でゆられながらみたいのは、お笑いではなく癒しなのだろう。その需要とVtuberの活動はマッチングしているのかもしれない。もしかすると、Vtuber側からはお笑いとして提供しているコンテンツも、我々の目には癒しとして映っているのかもしれない。
 推しがコメントを読み上げてくれるだけで救われている命も少なくないのではないか? ある種の自殺予防にすらなっているとすら思う。

 当然癒し専門のVtuberもいる。youtubeで「Vtuber 癒し」で検索をかけてみれば、その需要を感じることができる。

 面白いデータとして「家長むぎ」のアーカイブの再生数を見てほしい。

 3Dのカラダお披露目配信は別として、基本的なアーカイブの2万前後なの対して「むぎの入眠配信」シリーズだけ異様に高い。

 初回に至っては2時間半に及ぶ長時間配信にも関わらず、10万再生を超えている。これは明らかに、アーカイブを何度も聞き直している人たちがいると思う。それだけ需要があるということにはならないだろうか。

Vtuberにおける音楽はキャラクターに依存している説

 たぶん、去年の5月頃にアンケートをとったら、音楽はもう少し上位にあったと思う。そして、音楽というコンテンツに需要がないかというとそんなことはないのではないかと思う。

 何がいいたいかというと
 「好きな歌を歌っているVtuberがあるから興味がある」だったものが
 「好きなVtuberが歌っているからその歌に興味がある」へと逆転していったのではないか、という話である。

 たとえばYuNiちゃんの動画一覧をみてほしい。

 「エイリアンエイリアン」「砂の惑星」「シャルル」など話題になった曲の再生数が特に多い。これは、「YuNiちゃんだから聞いてみよう」よりも「シャルル歌ってるから見てみよう」という人が多いからだと思う。

 YuNiちゃんのすごいところは、有名曲だけ再生数が伸びているわけではないところだと思う。「シャルル」の580万再生に比べると見劣りするかもしれないが、どの動画にも数十万再生されているのは、すごい。

 そして、初めてのオリジナル曲「透明声彩」は126万再生されている。オリジナル曲は「シャルル」のように「この曲知ってるから聞いてみよう」ということは起こりえない。なぜ再生されるかと言えば
 ①YuNiちゃんのオリジナル曲ということに興味をもって再生した。
 ②話題に上がっていたから。(オススメ動画などにサジェストされる)
 ③知り合いから紹介されたから。
 などの理由になる。
 ①の理由で再生数が伸びていたのだとしたら
 「好きなVtuberが歌っているからその歌に興味がある」に繋がる。
 動画のタイトルやコメント、見た目、Twitterでの発言。それらからキャラクター性を感じ取り、より好きになっていくのだと思う。

 花譜ちゃんにも、似たようなことが起きているような気がする。興味深い点としては

 このようなプロモーションから始まり

 このような報告なんかもしている。雑談放送も何もしていないのだが、ここからキャラクター性を感じ取ることができる。その魅力に惹かれている人も少なくないのではないだろうか。

MonsuterZ MATEのように、歌について振り返ったり

響木アオのように歌に対する思いを語ってみたりと、その様子を垣間見ることで、「好きなVtuberが歌っているからその歌に興味がある」という思いも強まるのではないだろうか。

 登録者3500人を超えたらオリジナル曲を制作するとなっていた「さくらみこ」などに関しては、みこちゃんにとっても、ファンにとっても嬉しいものであり、まさに「好きなVtuberが歌っているからその歌に興味がある」というパターンだと思う。

 このように考えた時、Vtuberに関しては歌がうまいよりも、もっと別の理由が絡んでくるため、順位としては低いものになったのかもしれない。

ドラマ性について

 人の感受性やVtuberに対する考え方にもよるし、あまりこういうのは好きじゃないけれど「活動初期から好きだった」と「最近になって好きになった」などによっても違うと思う。

 また、あくまでドラマ性は付随するものであって、求めて見るものではない、と思っていた人も多かったのではないのかとも思った。

 それでもやはりVtuberには魂がある。生きている。
 喜ぶし、笑うし、泣くし、へこむし、くやしがるし、嫌がる。
 だからこそ、見てるこっちはハラハラするし、一緒に喜べる。

 もしかしたら、来年またアンケートを取り直したら順位は全然違ってくるのかなとも思う。

リプでもらった意見について

 「バーチャルを普遍化するパイオニアになってほしい」という意見をいただいた。
 まだまだVtuberの一般認知は厳しい。だが、Vtuberのポテンシャルはとても高いと思う。Vtuberによってバーチャルに興味をもってもらえる可能性は高い。そして、バーチャルは遊びだけでないということも伝えられるパイオニアになり得るとも思う。

 たとえば、この技術がもっともっと一般化されれば、「塾よりこっちの方がいい」なんて未来がくるかもしれない。

 実際には体験できないことを体験できるVRのよさを生かしたこんな取組もある。

 こんな風にバーチャル従業員が紹介をする取組もある。存在しているだけで興味をひくというのは、広告としてすごい。また、そのうち商品説明をバーチャルでしか見せられないような表現で行うなどにも繋がってくるだろう。

 新しい取り組みへのパイオニアとしても、Vtuberの活躍の場があると思う。

「技術や知識などの獲得を目的」という意見もいただいた。
もともとyoutube上には「○○の方法について」などの講座系の動画も多かった。それだけでもためになるのだが、「可愛い子が可愛い声で面白く紹介してくれたら」つい見入ってしまうだろう。ゆえにそういった需要もあると思う。

例えば、Live2Dについて知りたい時に、長い文章を読んで理解するのと、この動画をみる、どちらが良いだろうかって考えれば後者の方が多いのではないだろうか。

 解説の幅は広く、音楽について、ソフトについて、ゲームについて、生け花についてなど、たくさんあります。

 アイドル部の八重沢なとりさんが江戸糸あやつり人形についての解説をするなど、こういった方面の活躍もあるのは、今後の活動の幅の広がりに繋がりそうですね。

結局何を求めているのか

 人それぞれ、というと投げやりですが、逆にいえばどの方面にもまだまだ伸びしろがあるのではないかな、と思いました。
 このまま多種多様な活動があっていいと個人的には思ってます。
 たぶん、その活動がどんどんリンクしていって、それが誰かの目に留まったり、相乗効果を起こしたりしていっていくのかなって。

 個人的に好き勝手いわせてもらうのであれば
新しい文化圏へ絡んでいくのは大手の仕事であり
新しい可能性を広げていくのは新人や個人勢の仕事なのかなとも思います。
 それは、個人勢の2D勢であった「バーチャルゴリラ」さんが「NHKバーチャルのど自慢」へでたり

企業勢とも絡んだり、VEEMの社長になったりできる界隈だからこそいえることと思います。

 界隈の人数が増えることで、登録者数百人なんてこともざらになってきましたが、そういう人の活動にも需要はあると思うんです。
 ニッチな活動でも、ささる人にはささります。他の記事でも個人的に紹介していますが、埋もれてるのがもったいない方がたくさんいます。
 飽和状態だから見つかりづらいのかもしれないんですけどね…

 

 また、もう少し界隈の動きが変わったら、アンケートを取り直して比べてみたいですね。最後までお読みいただきありがとうございました!