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まほうつかいのひ(掌編小説)

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ぼくはまほうつかいとあった
まほうつかいはおんなのこで
ぼくがわるいやつにたべられそうなときにたすけてくれた
おんなのこはぼくにいった
このひにこのこうえんにちかづけるなんてきみはとくべつなんだね
もうあぶないからつぎはきちゃだめだよ
そしてぼくはおうちにかえった

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ぼくは、ま法使いと会った。
前に会った女の子だ。
前は女の子に助けてもらってばかりだったから、次は女の子を助けるために行った。
でも石を投げてもバットでたたいてもかい物はたおれなくて、女の子が出した火でかい物はやられた。
「またきみなの、来たらダメって言ったじゃない。スキャフトロは危ないのよ。」
と女の子におこられて、ぼくは泣いてしまった。
また助けてもらってしまった。

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僕は魔法使いと会った。
今度こそ女の子の力になるためだ。
剣道を習って、筋トレもして、この日に備えた。
公園に行くとやはりスキャフトロがいた。
そしてスキャフトロと戦う女の子もいた。
僕は竹刀で思いっ切り奴らを叩いた。
奴らは痛がったけど、竹刀も折れてしまった。
それでも予備を5本持っていったから、一体のスキャフトロを転ばすことができた。
転ばしたスキャフトロは女の子の魔法の炎で燃やされた。
女の子は言った。
「この世界の人間がスキャフトロにダメージを与えられるなんて信じられない!あなたはオルニストなの?」
オルニストの意味は知らないけど、少しだけ女の子の力に慣れたことが嬉しかった。
それにしても不思議だ。
何故って、女の子はいつまで経っても女の子のままだからだ。

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僕は魔法使いと会った。
今回こそスキャフトロを倒すために。
おじいちゃんの家の倉庫にしまわれていた刀を持って行った。
公園に行くと女の子はもうスキャフトロと戦っていた。
僕は刀を使ってスキャフトロを2体倒した。
女の子は
「ありがとう、お陰で助かったわ。」
そう言った。
女の子の名前を聞くとフラウラだと答えてくれた。
僕は他にも今まで疑問に思っていたことを全て聞いた。
スキャフトロの正体、この日に出現する理由、女の子は何者か?、オルニストの意味……。
どれも信じられないけど、そもそも今までのことも誰に言っても信じてもらえなかった。
僕だけが知っていれば良い。
僕は次の時も助けに来ることを誓った。

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僕は魔法使いと会った。
スキャフトロを倒さないとこの世界が滅びてしまう。 その事実が無ければ今日は公園に行かなかっただろう。
僕はこの世界に残った最後のオルニストだから仕方ない。
フラウラと余り話すことなく僕は帰宅した。
何せ明日は早い。

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僕は魔法使いと会った。
スキャフトロを倒した後でフラウラにもう僕を解放して欲しいとお願いしたけれど、当然ムリだった。
今日もここに来るために上司に土下座して有休をとった。
みんなの蔑むような視線が痛かった。
生きるのはとても辛い。

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僕は魔法使いと会った。
泣いても彼女は許してくれない。
「世界のため」に自分の命を懸けさせられる。
そして別世界の住人であるスキャフトロをただ斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って…
心が弱くてごめんなさい。
無能の役立たずでごめんなさい。
僕がオルニストでごめんなさい。

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僕は魔法使いと会った。
こんなゴミクズみたいな世界を救っても何の意味もない。
愚かな人々は救う価値もない。
そもそも僕や彼女みたいな極小数の英雄の善意で成り立っているこんな世界。
最早とっくに壊れていると言っても過言ではないだろう。
こっちの世界が滅びても彼女の世界には何の影響もないのに、本当に彼女は偉いと思う。
いや、偉さも突出し過ぎて反対に愚かなくらいだ。
一通り奴らを倒した後で彼女にそう言った。
彼女はゴチャゴチャとうるさかったけど、次はもう来ないことを言い残して帰った。



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僕は魔法使いと会わなかった。
世界はそれでも滅びなかった。

2/29
僕は魔法使いと会った。
何年振りの外出だろう。
爽やかな気持ちで僕は彼女の背中に刀を振り下ろした。
最初からこうすれば良かったんだ。
この世界を救う本当の方法はスキャフ――

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