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おしゃれな映画

「あとで映画観に行かない?今、おしゃれな映画がやってるんだよ。新宿でもすぐそこでやってる。」「私、映画館気持ち悪くなっちゃうんだよ。人がたくさんいるところダメなんだ。」

ミドリに会うこと、欲しかった服を買うことに続いて、今日三番目に楽しみにしていた映画鑑賞を断られた。でもよく考えたら、そんなことはどうでもよかった。目の前には大好きなミドリがいる。まあまあ楽しそうにもしている。それだけで十分じゃないかと私は思った。人生はいいことばかりが続くことも、悪いことばかりが続くこともない。なんとなく差し引きゼロで終わる。

「ケーキとか食べる?」「いらない。ミルクティーをもう一杯。」私はケーキを食べ、ミドリはミルクティーを飲み、きついタバコを吸いながら、またベラベラ話をした。会ってなかった三か月間にあった話、趣味の話、過去や未来の話を。お互いに何度かトイレに行き、私は明日も仕事なのでそろそろ帰ろうと言った。ミドリはうなずき、そして言いずらそうに口を開いた。

「お金、いくらだったら貸してもらえる?」 

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