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映画 「オカンの嫁入り」(2010年公開)

個人的所感によるあらすじ

月子(娘)と陽子(オカン)は、母ひとり子ひとりで仲良く暮らしてきた親子。
ある日、陽子が酔っ払って若い金髪の男・研二を連れて帰ってくる。「おかあさん、この人と結婚することにしたから」 あまりに突然のことに、とまどう月子は、とっさに部屋を飛び出してしまう。
母に裏切られたという思いから、月子は陽子に対しても、研二に対しても頑なに心を閉ざすが、大家のサク、陽子の職場のセンセイ=村上ら月子と陽子を家族同然のように見守ってきた周囲の者たちが、二人の間を何とかとりなそうと必死になる。しかしこの娘と母はそれぞれにある秘密を抱えていて・・・・

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ある意味非常にあざとい映画である。
けれども、それ以上に素晴らしく地味でしみじみ暖かい映画だ。


いきなり年下の男と結婚すると言い出す母親と、それに反発する娘。
娘に言い出せない秘密を抱えた母親と、過去の傷から立ち直れない娘。
とにかくお互い素直ではないが、この素直でない行動が、どう見ても愛し合ってる間にしか見えない二人。

そこにたぶん素直でいい奴、でしかない母親の再婚相手や親戚以上におせっかいで身内感覚の大家のおばちゃん、そして長年家族同様に過ごしてきた、母親の勤め先の初老の医者という、数少ない登場人物が、やわらかく絡みつき、物語を形成する。

考えてみれば、愛しているからこそ相手のことが気になるのだ。
気になるから、恥ずかしい、どう返されるか怖い、という感情が起きる。
そんな二人を暖かく見守る周囲と、それを実はよく理解している母娘。
けして豊かにも贅沢にも過ごしては来なかっただろう二人だけど、もしかしたら幸せってこういうことだろうか、と思わせる骨太ななにかがある。

大竹しのぶと宮崎あおい、新旧芸達者な名女優の対決でなければ、ただのべたべたの物語になったかもしれない。
特に、実年齢20歳近く若い男性と並んで見事にカップルに見える大竹しのぶのイノセントさと魅力には、しみじみ感嘆してしまった。

いくら愛していても相手を思っていても、この状態が永遠に続くわけではない。
そんな考えてみたら当たり前のことをふと思い出して、見終わった後にふと想い浮かべた人に電話でもしようかと思ったりする、そんな作品だ。

そしてなにより、重いテーマでありながら、最後までほぼお涙頂戴の物語にしなかった、温かい笑いだけでまとめたその一点に敬意を表したい。

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