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映画 「ソルト」(2010年公開)

個人的所感によるあらすじ

CIAエージェントとして働くイヴリン・ソルトは、自分でも知らないうちにロシアのスパイの容疑をかけられてしまう。身に覚えのない嫌疑を晴らすため、そして自分を陥れた黒幕の正体を暴くため、あらゆるスパイ技術を駆使したソルトの孤独な逃亡と戦いが始まった・・・・

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ちょっとネタバレな感想

私の好きな映画のひとつに「シュリ」という韓国の映画がある。
二重スパイになるために子供の頃から養育され、それが正しいと教えられ、
初めての愛を知ったときにその自分の運命と愛の板ばさみで苦しむ、
そして愛した男のために、自分を犠牲にする、そんなストーリーだ。

この「ソルト」という映画も、これと基本は同じだな、と感じた。


ただ違うのは、ソルトの正体だ。彼女はCIAの味方なのかそれともロシアの二重スパイなのか、ラスト近くまではグレーな存在として描かれる。
行動も一転二転、つい白か黒か、な視点で見てしまいそうになるが、見終わってもどかしさを感じるのは、彼女は途中までどちらでもなかったからだと思っている。


自分の運命も役割も嫌というほど知っている。
それを裏切ることはもはやできないことも知っている。
なぜならそれは子供時代から身に付けられたアイディンティだから。

だからこそ、彼女にできることはこの穏やかな日常が少しでも長く続いて欲しいと、来るべき時から心をそむけて、ただこの時間が一日でも長く続くように、ただ祈ることだけ。

それが登場時のイブリン・ソルトだったのではないだろうか。


けれども、愛する伴侶を誘拐されたとき、自分に疑いをかけられたとき、彼女は悟る。
どうあっても、やりたくなくても、やらなければ彼を救えない。
けれどもやりたくない。
けれどもやらなければ、やったと思わせなければ彼の命はない。
そしてそれを実行した時点で、彼を救えてもこの生活は終わりだと。

そんな彼女の苦渋の決断の直後、彼女の目の前で、無残にもその彼が”処刑”される。

そのとき初めて、文字通り彼女は「ソルト」になったのだと思う。
泣きもせず叫びもせず、冷静に、彼女は変化していく。
訓練された自分を最大限に利用する凶器、もしくは狂気となるために。

見ている私たちの前で。

これはそんなスパイの誕生物語だ。
それ以上でもそれ以外でもない。
それを単なる悲劇と片付ける権利は、私たちにはない。

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