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映画 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2013年公開)

個人的所感によるあらすじ

精神を病んだデンマーク国王クリスチャン7世の侍医となったストルーエンセは、王の唯一の理解者となり、友人として親交を深めていく。一方、孤独な王妃カロリーネもストルーエンセに心ひかれ、2人は恋仲になる。
啓蒙主義に傾倒するストルーエンセはやがて王の言動を操り、事実上の摂政として政治改革を進めていく。一度は成功したかに見えた改革は、しかしそれを快く思わない貴族たちの陰謀に巻き込まれていく。

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ちょっとネタバレな感想

事実と真実は違う。
わかっているようで意外と混同されがちなことだ。

一方から見れば悪であっても、それが本当に悪であったのか、それとも美しくも愚かな信念から派生した善だったのかは、結果としての「事実」からはけしてわかることはない。

ちまたにあふれる歴史の解釈はあくまで全て「if」だ。
だからこそ答えはなく、永遠の興味をかきたてる。

ヨハン・フリードリヒ・(フォン・)ストルーエンセ(Johann Friedrich (von) Struensee。
デンマークの国王クリスチャン7世の侍医として君臨し、事実上の摂政として政治を操ったと言われる人物。
デンマークでは教科書にも出るほどの有名な人物らしいが、どちらかというと王に取り入り、王妃を堕落させ、反対派にとらえられた後は自分の保身のみに走った人物として、あまりいい印象に描かれることはないと聞く。
日本の歴史でいうと、田沼意次か井伊直弼というところだろうか。

しかし、この作品の中のストルーエンセは、むしろ控えめで冷静で理想に溢れ、ただ自分の信じる正義と周りの幼さに巻き込まれた不幸な男性として描かれる。この映画でストルーエンセを初めて知った人は確実に彼を悲劇のヒーローとして見るだろう。
彼と抜き差しならない関係に陥る王妃も、むしろ国民に人気のあった国王を裏切った(さらには王を虐待していたという説もあるらしい)悪女として知られるそうだが、やはりこの映画の中では孤独の中で静かにたたずむ薄倖の女性として描かれている。

ストルーエンセは本当に悪人だったのか。
それとも理想と愛に目を曇らせ足元を見誤っただけの愚かな善人だったのか。
結果として彼は断首された罪人として、王を操り栄華ほしいままにした悪人として名を残したが、面白いことに彼が実行した改革は時を経て後世でまた返り咲いているのだ。

クリスチャン7世は、ストルーエンセ処刑の3年後、1775年に描いた絵にこのように書いたらしい。

"jeg havde gerne reddet dem begge to"
(2人とも助命できればよかったのに)。

王妃も最後まで彼をかばい、嘆願書を書いたとの記録があるらしい。
本当に利用されただけの人物が、特に異性が、本当にそこまで願ったりするだろうか。

それは、その場、その時間軸の中に実際にいた人間でなければ永遠にわからないことだけれど。

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