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映画「イーディ、83歳 はじめての山登り」(2020年)

個人的所感によるあらすじ


ロンドンで暮らすイーディは30年間にわたって夫の介護を続けてきたが、娘にはその苦労を理解してもらえず、老人施設への入居を勧められている。そんなある日、イーディはフィッシュアンドチップス屋の店員のふとした言葉をきっかけに、かつて父親と登ろうと約束していたスコットランドのスイルベン山に登ることを決意。夜行列車でスコットランドへ向かった彼女は、偶然知り合った地元の登山用品店の青年ジョニーをトレーナーとして雇い、山頂を目指すための訓練を開始する。
誇り高く頑固なイーディはジョニーと衝突を繰り返すが、彼の丁寧な指導のもと人に頼ることの大切さに気づいていく。ついに準備を終え、念願のスイルベン山に挑むイーディだったが・・・。

ちょっとネタバレな感想


正直、荒唐無稽な内容だという人が大多数だと思う。いくら子供のころの夢を果たしたいからと言って、悪天候の中、ほぼ経験もない80代の老女が一人きりで険しい山頂を目指すなど、本格的に登山をする人だったら目を剥きそうな自殺行為だ。

けれども、この作品を登山を描いた映画でなく、抑圧された女性が解放される物語と考えればどうだろう。
夫を30年介護する生活に、周囲の不理解。古い慣習にがんじがらめになったまま無駄に過ごした人生。
もちろん、家庭生活に無駄なんてものはない。けれども、イーディにとっては、やりたかったこともできず、我慢をしても周囲の理解も得られず、ただ主婦としての自分しか求められない人生でもあったのだ。

そんな彼女が人生の最終章で見つけた目標、それが子供のころに父親とした約束であり、その山頂に立つこと。
だからこそ、周囲に止められても、一人になってもがむしゃらに目指したのだろう。新しい自分の人生のために。

いやむしろ一人で登らなければいけなかった。そうでなければ彼女は苦しかった人生に落とし前がつけられなかったのだから。

さまざまな偶然などご都合主義という批判もあるだろうし、こんなスタンスで山に入るなんて!、とお怒りの向きもいるだろう。彼女を一人で行かせたジョニーに対する周囲の批判と被るし、現実であればそれが正しい選択のはずだ。

これはあくまでもおとぎ話。素直でない老女が苦しみを昇華させる物語。
だからこそ、山頂にたどり着いたイーディの晴れやかな表情を見れば、彼女をここに導いたすべてのものに必然を感じられるのかもしれない。

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