映画 「クヒオ大佐」(2009年公開)
個人的所感によるあらすじ
職業は米軍特殊部隊ジェットパイロット、父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ。
湾岸戦争が始まった90年代初頭。怪しげな日本語と華麗なる経歴を振りかざしては、女たちを落としていく恋愛詐欺師・クヒオ大佐。そんなクヒオを信じ、献身的に愛し続ける弁当屋の女社長しのぶ。
自然博物館のエリート学芸員の春、ナンバー1ホステスの未知子もまた彼のターゲットとなり、そんなころしのぶの放蕩弟が戻ってきて・・・。
ちょっとネタバレな感想
クヒオ大佐は実在していたらしい。
とはいえ、この映画の中のクヒオ大佐は、ある意味「堺雅人の”クヒオ大佐”」というファンタジーとみるべきだろう。
薄幸である意味かわいそうな女性を演じさせたらピカ一の松雪泰子、こういう気の強くてもろい上昇志向の強い女の子を演じさせたらはまり役の満島ひかり、ちんぴらで勝手で情の深い困ったオトコそのままの新井浩文と、この映画はほぼキャスティングの勝利と言っていいと思う。
作中で、どう考えても怪しいクヒオ大佐に、なぜ女性がそんなしょうもない騙され方をしたのかという疑問が、さりげなく投げかけられてくる。
しのぶ、春、未知子とそれぞれ理由は違うだろうが、結局のところ彼女たちにとっては、つらい現実に現れた「王子様」であり、孤軍奮闘の自分を望んでくれた人物であり、だからたぶんクヒオが本物かどうかというのはあまり関係なかったように思える。
だまされてもよかった、と言ってしまうと陳腐だが、クヒオもつらい現実から逃げるために夢と現実が入れ替わってしまった人物であり(という風に思える描写が出てくる。実際はどうかわからないが)だからその入れ替わった夢の方が現実だと受け入れてくれる女性を求めていた、ということなのではないだろうか。
たぶん双方、そこに自分の役割を見出せたことが、むしろ幸せに感じていたように思えるのだ。
「騙したのではない。相手が望むようにしただけだ。」
詐欺はもちろん犯罪だが、詐欺という意識がなければ、それはおろかな嘘でもある。
嘘に逃げたい弱い人間が作り出した夢が交差するとき、彼らのような傍からみたらこっけいな出来事が、これからも現実に起こりうるのかもしれない。
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