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最適な方法を

おとといくらいからピアノを弾き始めている。

楽譜をネットプリントで印刷しようと思ったのだが、クローゼットの奥を探ったら、『ピアノで奏でる ドラマ&映画名曲選』なる本を見つけて、肩慣らしに、この本の中にある曲を弾いてみることにした。

選んだのは、ショパンの「別れの曲」

久しぶりに見る楽譜は、まるで暗号のようだ。これはヘ音記号だから「ソ」でいいんだよなと、確認しながら鍵盤を叩く。最初こそ、おそるおそるといった手つきだったが、だんだんと指が先に動き出す。

まず右手だけで弾いて、次に左手を合わせる。30分も弾けば、かろうじて聞けるレベルの演奏になっていた。体は、「別れの曲」の指の動作をちゃんと覚えていたのだ。暗譜して弾けるまでにはしばらくかかりそうだが、時間が解決してくれるだろう。


ただ、夢中で弾き終わった次の日、筋肉痛になった。両腕がだるくて、左胸あたりが張っている。

ピアノを弾く筋力がなくなったのかとも思ったが、たぶん余計な力が入っていて、体がガチガチになっているのだ。ピアノを毎日のように弾いていたときは、筋肉痛になることはなかった。当時、自然にできたことがいまはできない。

もっとなめらかに体を使うように、翌日からはなるべく力を抜いて、弾くようにした。意識してみると、難しいと自分が感じている箇所に来た際に、肩のあたりにグッと力が入っているようだった。リラックス、リラックスと自分に言い聞かせて、ふたたび鍵盤に指を置く。

体の使い方はだんだんわかってきたが、今度は指の動きがおろそかになる。力を抜きすぎて、指先にまで神経がいきわたっていない。リラックスという意識が今度は逆に邪魔になる。

前述のことを踏まえて、うすーくリラックスしながら、なるべくなにも意識しないように(海の昆布のように揺れるイメージ)弾いてみると、ようやく自分なりに納得いく演奏ができた。

この感覚を継続していこう。しかし、昔はこの感じを無意識でやっていたのだろうか。ずいぶんと複雑なことをやっていたのだなと、いまになって思う。

現在は意識的にやらないとできないが、いつかは無意識でもできるようになりたい。かといって、昔に戻りたいというわけではなくて、いまの状態で最適な方法が見つかればいいなと思っている。気持ちも体も子供のころとは変わっている。

あとひとつ、ここ数日ピアノを弾いていて思うのは、昨日と違う実感があるというのはポジティブな気分をもたらすということ。

昨日は「別れの曲」をとぎれとぎれにしか弾けなかったのに、今日はある程度スラスラ弾ける。昨日の自分より進歩しているのが目に見えるというのは精神健康上かなりいい。停滞するときも来るだろうが、それでもまったく進まないということはないだろう。

「指をもっと立てて」と、ピアノの先生にしょっちゅう言われていた。でも、そのとき直さなかったので(というかどうしても直らなかった)いまも第一関節あたりまで鍵盤にべとっとつく。

この弾き方のほうがスムーズに指を運べるのだ。自分にとって弾きやすい方法を体はたぶん知っている。



#エッセイ #コラム #日記


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