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相手の身になって
最後に手紙を書いたのはいつだろう?
思い出そうとしても、いつ手紙を書いていたかもはっきりしないし、それはものすごい遠い昔のように感じる。たぶん中学生のころまでさかのぼるだろう。祖父母に宛てて、手紙を書いた記憶がおぼろげにある。
手紙を日常的に書くのは、めずらしいことになった。
今の時代、LINEやメールなど手紙に代替するツールがあるので、なかなか手紙を書く機会というのは訪れない。
もし書くとしたら、誰かから貰った手紙に返事をするぐらいだろう(それもすこしめんどくさい・・・)。自ら手紙を出す行為は、いまや考えられない。
わたしは、もっぱら手紙派という人もなかにはいるかもしれないが・・・。
こんなことをふと思ったのも、以下の本を読んだからである。
遠藤周作『十頁読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』
なんとも挑戦的かつ印象的なタイトルだ。
この本では、手紙を書くうえでの心構えが綴られる。
ちょっとしたことでも手紙を書けば、相手に好印象を与えることが出来るとか、筆不精の直し方、書き出しの秘訣やシチュエーション別の手紙の書き方などなど。たとえ手紙を書かなくても、その内容をコミュニケーションのコツと捉えれば、とても参考になることが多い。
ちなみに、3分の1ぐらいはラブレターの書き方。
で、ぼくが一番心に響いたのは、この箇所。
真情や真心がいくらみなぎっていても、人によってそれを表現するのがウマい人と下手な人があります。真心100%も表現力が50%では相手に50%しか通じないかもしれません。その場合、その手紙はやはり50%の手紙です。
いくらほとばしるような想いがあっても、相手に届かないのではとても悲しい。
自分のなかで「これは面白い」と思っていても、相手にその真意が伝わらないのは、もったいない。
では、どうすれば伝わるようになるのかというと、
表現力のコツをただちに会得する方法があります。それが「相手の身になって」という方法なのです。
けれども、この方法も今日、明日にすぐ身につくというわけではありません。手紙を少しずつ書いてたえずこの手紙が、「相手の身になって」みれば、「受け取る側の身になって」みれば、どういう印象、どういう感想をもつかを考えているうちに少しずつ自分のものになると言えます。これは、残酷なような言い方ですが、本当です。
相手の身になって、考えること。
自分の思いだけではなくて、それを受け取った相手がどう感じるかを想像すること。
受け取る側の気持ちを考えるまでがセットで、相手に伝えるということなのだ。
このことを肝に銘じて、書くことを続ければ、すこしずつ伝える術が身につく。
これは、相手に迎合するということではなくて、自分が思ったことをいかに伝えるかという工夫を凝らすことだ。
ぼくも文章を書く者のはしくれとして、読んでくれる人のことをまったく意識しないで書いてきたわけではない。
けど、何かの縁で読んでくれた人がどう感じるか、という部分を今後はもっと意識していきたい。
一朝一夕にはいかないけど、「相手の身になって」考えて、すこしでも伝わる文章が書けたらいいなと思う。
Twitter:@hijikatakata21
最後まで、読んでくださってありがとうございます!