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書きだした日のこと

深夜のあるファミレスで、友達に「何か書いてみれば?」と言われたことを思い出す。

ぼくはそれを真に受けて、創作をはじめた。

とりあえず、最初はコピー用紙に思うがまま書きつらねた。そして、それをパソコンで清書する。

なんだか二度手間のようだけど、なぜかあの頃のぼくは自分の字で書くというアナログな手法にこだわった。

早速、出来た作品(作品というのもおこがましい)をまたもや深夜のファミレスで、友達に見せる。

人がほとんどいなくなった店内で、コピー用紙をめくる音がやけに大きく聞こえ、手持ち無沙汰になったぼくは、ドリンクバーで飲み物をおかわりしにいく。

席に戻っても、友達は紙をめくっていて、時間を埋めるように、ぼくはオレンジジュースをちびちびと飲んだ。

ようやく顔を上げた友達が、「いい」とお世辞でもほめてくれたことに安堵した、あの瞬間からぼくは、なにかを書いていこうと思った。

書くことが何につながるかわからなかったけど。

それから、自ら100本ノックと評して、とりあえず100の物語を作ることにした。

だいたいが、800字から2000字くらいの短めの話。なかには詩のようなものも混じっていた。

途中、休止期間があったものの、なんとか完走したときには一年が経過していた。

今考えるとよくもまあ、そんなことをやったなと思うのだけど、あの頃は、子どもが新しいおもちゃを手に入れ夢中になるように、没頭して机に向かっていた。

最初、人に見せるときは心臓が飛び出そうだったけど、最後のほうではもう見せることには抵抗はなくなっていて、結構どっしりしていたと思う(ドキドキももちろんしていたが、多少マシになった)

数をこなすことは、文章力アップよりも恥を乗り越える術を身につけることかもしれない。

ちなみにこれが一番最初に書いたものがたり。恥を忍んでさらす。下手なのは悪しからず。


『赤いライオン』
ライオンは生まれた時から真っ赤か
お父さんとお母さんは悩みました
この子みんなと仲良くやっていけるかしら
赤いライオンはいつも仲間はずれ
一緒にひろい草原を走り回りたいのに
みんなは言うんだ
「お前はみんなと違うんだ」
みんなと違うことはわるいこと?
トボトボと歩いていると
真っ赤な夕日が目にしみました
「君は赤くて大きいのに誰からも愛されていいね」
赤いライオンはかなしくつぶやきました
赤いライオンはどうにかして
みんなと同じ色になろうとしました
けれど、うまくいきません
それを見ていた黄色いゾウはいいました。
「何をしているんだい?」
「みてのとおり、毛の色を変えているのさ」
「どうして?」
「これだとみんなと遊べないからさ」
「ハッハッハッ」
「なにがおかしい?」
「そんな赤い毛のライオンは君だけだろう?すばらしいことじゃないか」
「けどみんな僕のことを笑うし・・・」
「僕も黄色いゾウだから笑われたさ。みんな灰色だからね。けど今では自分の毛の色が大好きさ」
「どうして?」
「簡単なことさ。自分を好きになったんだ」
黄色いゾウは、去っていきました。
赤いライオンは毛の色を変えるのをやめました。
今は、この赤い毛がなんだか誇らしくなっていました。


この頃は、やたら絵本や児童文学を読んでいたので、その影響が色濃い。

たまに、100本ノックで書いたものを読み返すときがあるのだけど、そのとき、はまっていた小説の影響がモロに出ていて、自分で書いたものが間接的に読書履歴みたいになっているので面白い。

もう深夜のファミレスに行くことはなくなったけど、あのときの思いつきが今もこうやって書いていることにつながっていると思うと、すこししみじみした。



#エッセイ #コラム #日記

Twitter:@hijikatakata21

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