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感動した記事の話

 すごい記事に出会った。

 能登半島地震の発生直後にテレビで流れた、避難を呼びかける力強い声。その呼びかけの裏に何があったのかを紹介する、NHK広報局の記事だ。

 書いているのは、NHKのアナウンサーで、「命を守る呼びかけ」プロジェクトの事務局長を務めている方。記事の中では、自然災害発生時にこれ以上犠牲者を出さないために立ち上がった同プロジェクトの歩みだけでなく、著者自身の来歴や災害報道との関わり方、地域の人々同士の呼びかけを強化していくために始まった防災教室のことなども書かれている。

 それら全体を、「ことばで命は救えるのだろうか」という問いが貫いている。

 被災地で体を張り、手を動かして働く人を前に、ことばの無力さを痛感した。先祖代々の土地を守らなければならないなど複雑な事情を抱えた人に、呼びかけが届かなかった。「ことばの力では、人の命を救うことはできないのではないか」と打ちひしがれる。それでも、「あきらめるわけにはいかない」という思いで、新しいプロジェクトの立ち上げに参加し、災害時の呼びかけを練り直す。さらに、メディアの呼びかけ以上に地域住民同士の呼びかけが力を持っていることに注目して、呼びかけを考えるための授業を展開する。それは著者自身が、ことばの力を信じ直すプロセスでもあったという。

 心が震えた。

 何年も、何十年も、1つの問いを心に刻み、何度も打ちひしがれながら、あきらめることなく、「命を守る呼びかけ」を考え続け、命を救うことばの輪を広げていく。なんて素晴らしい仕事なんだろう。なんて素敵な姿勢なんだろう。そう思った。

 社会人7年目になり、仕事について思いを巡らすことが増えてきた。右も左もわからず言われたことをやるだけの段階からちょっぴり抜け出し、工夫を凝らすことを覚えてきた中で、ルーティンワークをこなすだけに止まらない仕事の在り方を考えるようになった。そんな時期に入ったからこそ、人の仕事ぶりがいかにすごいか、わかるようになったのかもしれない。

 もう1つ。この記事を読みながら、「ことばの力」について考えてみたいと思った。命を救うことばが必要になるのは、限られた場面かもしれない。だが、人の心に訴え、人を動かし、命を救うことにもなる「ことばの力」というものは、もっと広く考えることができると思う。

 僕自身、自分の思い・考え・感想を伝える時は、ことばを使う。この日記もそうだ。普段からことばを使い、ことばで自分を表現しようとする身として、「ことばの力」を考えることは、とても大事なことじゃないかと、今更ながら気付いた。

 ことばにどんな力を込めたいのだろう。どんな力を宿したいのだろう。すぐに答えは出ないかもしれないけれど、問いを携えていきたいと思った。

     ◇

 哲学カフェ「偽善」の振り返りの途中でしたが、この先書きたい内容と、それに必要な文字数を考えた結果、平日の夜に書き進めるのは断念し、普通の日記を書きました。振り返りの続きの方は、もう暫くお待ちください。

(第211回 2月1日)

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