あこがれからはだいぶ見捨てられて（新大久保のための下書き）

明日が来るのが怖い。そんな風に「怖い」って思えれば、それが大人になった証なんだろうな。
明日が来ること、明日へと進むこと、明日から逃げること、それぞれにちがいがある。そして私は、いつから進むことを忘れてしまったんだろう。

こんなの待ち望んでた明日じゃない。それでも、明日へと生きてゆかなくちゃいけないんだろうなあ。お金を稼がないといけないんだろうなあ。
しゃべり終えたらおなかがへるから。しゃべり終えたらねむくなるから。

あこがれからはだいぶ見捨てられて、寄り添いの一つも感じられない。私、自分なりにけっこう頑張ったと思うんだよ。立ち直る？どこへ、何をしに立ち直るの？
人生上手くいかなくなって、今度は上手くいかない人生のために生活を延長させるの？……そう、それがきっと正解なんだろうなあ。
でも、走馬灯のように今までの人生がよみがえって……私、自分なりにけっこう頑張ったと思うんだよ。

世界中から嫌われてる気がしてたまらないんだ。思い出の地を求めてさまよってる幽霊みたいな気持ち、いつまで続ければ良いんだろう？少しずつ勇気を出して前に進んでみても、何だか悪い夢にうなされてるみたいな、好きな食べ物を無理やり食べ続けさせられてるみたいな、むなしさだけが残ってしまうんだ。
そのうちに身体中がちくちくと傷んでくる。苦味がじんましんみたいに広がってくる。自分自身でいることにアレルギーを感じる。全身が冷たい。冷たい時間はまるでしんとした湖みたい。眠りに就けない罰を受けてるみたい。

私はどこへと進めばいいんだろう？私はどこへと逃げればいいんだろう？いっそのこと、未来あふれる誰かに、私の人生のすべてを託したい。そしたらこんな子どもっぽい気もちも、脳みそから赤く破裂していって、それは色とりどりの花になって、愛おしい香りをきっと放つよ。私の走馬灯は誇り高き遺産となって、気まぐれな誰かを救う道しるべにきっとなるよ。
明日が怖いんだ。むしょうに怖い。生きている価値なんてどこにもないように思える。
きらめいた一番の星にどうしてもなりたいのに、なれない自分がいる。しかも、なれない自分をなぐさめ可愛がろうとしている自分が、実は一番ゆるせないんだ。

どこからふたたび歩き出せばいいんだろう。途端にさみしくて、のどが詰まる。この街、新大久保で暮らしていて掴んだ何か、傷んだ何か、憎んだ何かに仕返しがしたい。
でも、そんないたずらな仕返しは若さの特権なんだ。放り投げてしまった若さは進みも逃げもしないで、ただそこに在るだけ。そして私にはもう、若さすら戻ってはこない。

こんなの待ち望んでた明日じゃない。それでも、明日へと生きてゆかなくちゃいけないんだろうなあ。お金を稼がないといけないんだろうなあ。
しゃべり終えたらおなかがへるから。しゃべり終えたらねむくなるから。
……そう、それがきっと正解なんだろうな。