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【感想】アイドルをネトストするゲーム作った奴が「トラペジウム」観たよ

わかったよ見たよ!!!!!!!!!




こんにちは。HIJIKIと申します。普段はインディーゲームの制作などをしています。

アイドルマスターやアイドルアニメが好きで、今年2月には、失踪したアイドルのSNSをネトストするアドベンチャーゲームを作成しました。

PCで遊べるぜ!


そんな属性のため、トラペジウムがタイムラインで話題になり始めると「ひじきは行け」「絶対好きそう」と言われまくり、ゲーム制作で死んでいた身体を引きずって豊洲まで行ってきました。

ちょうど夕日が綺麗


・乃木坂出身の作者が書いてる
・なんかギスギスするらしい
・主人公がサイコ

程度の情報で言ったので、なんというか……色々びっくりしましたね…………。



ネタバレを含みます



東ゆうとかいう女

東ゆうをどう思うかで賛否が分かれると言っても、的外れではないでしょう。
インターネット見てないけど頭の中にあるからわかるよ。大体カスとかサイコパスとか吐き気を催す邪悪とか言われて最終「映画の感想を誇張するオタク」に関する議論勃発っしょ?
実際だいぶ「こ、こいつ……」という言動が多いし、彼女に全面的に共感するのは難しい。

あの空気で初手「綺麗な服と髪型で踊ること」を
幸せとしてアピールするの、なんか怖くない?


なぜかといえば……東ゆうの動機がしっかり描写されないからに尽きるでしょう。
映画を観ていれば東ゆうが「強烈にアイドルに惹かれた」経験があり、アイドルになるという夢を抱いていることはわかります。しかしそれはほとんど「言葉」でしか語られないのです。


別のアニメの話をします。(許してね)
アイドルマスター ミリオンライブ!の第1話は、主人公が偶然行ったライブがきっかけで「アイドルになりたい!」という夢を持つ姿が描かれます。そのライブが10:30〜からなのですが、素人目にも気合が入った演出であることがわります。

このくらい力が入った描写だと、確かにこれはアイドルに憧れるよね!と芯から納得できるわけです。というか、ここまでじゃなくても幼い頃の東ゆうがTVや生のライブを見て「わぁ〜〜✨✨」くらいあるじゃん? 大体。普通のアニメなら。あったはあったけど……。
東ゆうは「人って光るんだ」と述懐しますが、そのアイドルがどんな風に光って見えたのか、観客にはよくわからないのです。

なのに他校に忍び込んでまで東西南北のアイドルを集めようとしたり(マジで何?八犬伝?)、発狂寸前の友人を見てもこんすて発言したり。
動機の描写は薄いのに行動力と熱意は強烈な女……だから「ヤバい」と言われがちなんだろうな〜と観ていて思いました。意図的にやってる気がするので、だからダメだと思ったわけではないのですが。


個人的には「くるみちゃんや南さんは可愛いのに、アイドルになろうとしないとアイドルにはなれない。それって勿体無い(大意)」が本人の意思を無視した思想で大変興奮しましたね……自作品で「あなたがアイドルをやらないのは世界の損失」という意味のセリフを書いた身としては……。

アイドルを「人を救う事業」と形容する様


電車の意味

東ゆうの他は勿論くるみ、蘭子、亀井の3人も多分に印象に残ったのですが、電車が印象的な作品だとも思いました。
東ゆうが電車に乗っているシーンから始まるし、東ゆうが孤独でなくなったことが4人でワイワイ電車移動する描写でわかるのも良かったですね(ひとりだとボックス席、座らんもんね)

また電車で「流れ」の話をするのも芸コマです。電車はまさにその流れに従って利用するものですし。

舞台には上手と下手があり、右が上手、左が下手とされています。このシーンの電車の進行方向は左……つまり上手から下手に進んでいますね。この上→下というのは低きに流れる水のように自然な流れを表すそうな。
「流れに逆らわずに」という蘭子の台詞に合わせてるのか?と思えば、画面に映っている景色は当然下手から上手に流れています。下→上の動きは不自然さ・ネガティヴさを喚起することがあるので、この場面の真意は……などと深読みすると楽しいですね。

電車はメタファーとして超優秀なので様々な含意がありそうですが、その辺はトラペジウムガチ勢に解釈を任せたいと思います。(キセルの話とか……)


ちなみに聖地とされる千葉県九重駅が最寄りだとすると、度々背景に映っていた代々木駅までは3時間かかります。

心を壊すにはあまりに容易な通勤時間。(あれ週何回くらい行き来してるんですかね……)


アイドルアニメなのか?

いやいやアイドルアニメでしょ。ライブもやるし最近のアイドル作品では標準装備(※諸説)の炎上描写もあるし……でも、表題のような疑問が浮かびました。


「アイドルでやる意味が無い」と言いたいわけではありません。しかし「アイドルになることが決まってアイドルになってから」の描写がダイジェスト気味なこと、翻って映画前半の尺を何に割いていたかを考えると、もっと抽象的なテーマを伝えたいのでは?と思うのです。そのテーマは……書くと恥ずかしいのですが「夢」と「友情」なんでしょう。

あそこまで3人が着いてきたのは、4人でいる時間が楽しかったから。そう思えたのも、映画の前半で(駆け足ながらも) 互いの関係を築き上げたから。
しかし、東ゆう以外にとって「アイドル」は学業との両立やプライベートの制限を続けてでもやりたい夢ではありませんでした。でも、それが普通だと思います。どれ程仲がいい友達でも大学や就職先まで同じ場所を選ぶことはほとんど無いのですから。

全員でアイドルを続けることはなかったけれど、蘭子が自分の途を見つけたように、決して無駄な時間ではなかった。何より、大人になってからも集まれる関係を築けたことは本当に尊い糧ですよね。



トラペジウムとは「台形」を意味する散開星団のことだそうです。星団は近くにあるように見えても、実際には星同士の距離がとても離れています。

東西南北も、東ゆうが本来なら関わるはずのない人間を繋いだことで生まれました。あたかもバラバラの星の間に勝手に線を繋げて星座を作るように。
東ゆうはそれだけではなく下心でボランティア活動を行っていましたが、そこで出会った車椅子の少女・サチが結局のところ彼女の「アイドル」という夢を繋ぎ止める役割を果たしました。

東ゆうがめちゃめちゃ打算で動き、夢を追う余りライン越えの失言を繰り返したのは事実ですが、彼女がガムシャラに夢に向かってもがいて作った人とのつながりが肯定されたような終盤の展開は、雑に観に行った私にも充分"刺さる"、いい映画でした。




でもやっぱくるみのヒステリー演技と瞳孔ガン開きでアイドルの魅力を語るシーンが一番刺さったかな!!!!(癖だから……)




以下雑多な感想

・オープニング、割と王道のアイドルソングをBGMにしていたのに突然令和のキレキレ音楽流れてきてびっくりしたね

・羊宮妃那さんの時点で一旦💯を付けました。上擦ったウィスパーボイス最高!!最高!!

・けろりらさんが原画だからたまに絵にぼざろを感じる

・くるみのヒステリー「こうなる人、原作者の周りでもいたんだろうな……」という質感があるよな

・亀井が妊娠した状態で学生時代の集まりに来てくれたの、丁度最近同じようなことが会ったのでリアリティを強く感じた

・絶対千年に一人の美少女意識してるよなぁ!!

・全然真司の話してない。八年後に個展開いてるの偉すぎるね


おわりだよ〜〜





(天性の「アイドル」の光に灼かれた女の業を2時間程度で味わえるアドベンチャーゲームです。トラペジウムが気に入った、アイドルものに興味がある方は……よかったら覗いてみてね……)

(宣伝終わり)



画像引用元:アニプレックス公式チャンネル

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