【書評】ドリルを売るには穴を売れ
最近マーケティングの本が面白くていろいろ読み漁っています。
今回読んだのはこちら
『ドリルを売るには穴を売れ』佐藤義典・著。
初版は奥付によると2007年1月10日。やや古い本ではありますがマーケティングの本質をとらえていて、今読んでもためになる本だと思います。
著者の紹介
本書の構成
■序章 ”マーケティング”脳を鍛える
◆サブストーリー プロローグ 宣告
■第一章 あなたは何を売っているのかーーベネフィット
◆サブストーリーPART1 屈辱
■第二章 誰があなたの商品を買ってくれるのか?ーーセグメンテーションとターゲット
◆サブストーリーPART2 奮闘
■第三章 あなたの商品でなければならない理由をつくるーー差別化
◆サブストーリーPART3 希望
■第四章 どのようにして価値を届けるか?ーー4P
◆サブストーリーPART4 確信
■第五章 強い戦略は美しい
◆サブストーリーPART5 決着
おわりに
内容について
本書の構成で見てお判りの通り、各章にサブストーリーというものが挟まれる。
これは小説仕立てにして書かれたマーケティング実践物語である。
新人女性社員が傾きかけたイタリアンレストランの経営を、上司や店員、いとこのコンサルタントの協力を得て立て直していくというサクセスストーリーになっている。
マーケティング論のページについては入門書然としていて、門外漢の自分にもわかりやすく基礎中の基礎を丁寧に書いているという感じがした。
逆に言うとマーケティングの現場の最前線ですでに働いている人達にとっては既知の内容だろう。
本書の半分はサブストーリーであり、こちらが良いアクセントになっている。本編での説明を実践例として描きつつ登場人物のキャラクターでスムーズに読ませる。
この本の売れる要素
マーケティングの本の面白いところはその本の売り方の戦略自体にマーケティングの手法が垣間見えるところだと思う。
この本の成功は第一にタイトルが最高だというところだと思う。
『ドリルを売るには穴を売れ』
語呂が良い。日本人に親しみがある7・5調のリズムである。
余談であるが2000年代後半ごろはレギュラーの「あるある探検隊」やオリエンタルラジオの「武勇伝」のような7・5調のリズムネタが流行ったころだったと記憶している。
言葉の意外性も人々の興味を惹きつける。
「穴を売る」という言葉は相応にインパクトがあり、しかも形のない価値をも売るのだというマーケティングの本質をきれいに言い表している。
正直このタイトルだけでもこの本は勝ったも同然ではないだろうか。
あとは、繰り返すがサブストーリーとして小説を載せたのも差別化として成功している。
人はやはりストーリーが好きだ。ストーリー仕立てのものは記憶に残りやすい。
本編のお堅い内容を忘れてしまう人でも、ストーリーにおいて実践されたマーケティングの手法はきっと忘れずに覚えていられるだろう。
ただ、レストランの名前に「そーれ・しちりあーの」を提案するのは今の時代だとちょっと古く感じてしまった。
うんうん、2000年代前半ってひらがなの(4文字くらいの)タイトルのアニメとかいろいろ流行ったもんね。
おわりに
誰が読んでも面白いです。
単純にサブストーリーの小説だけでも読みごたえがあるし、本編での図表をふんだんに使った解説も入門的で読みやすい。
マーケティングの基礎を知りたい人、ゆくゆくは企業を考えている大学生などはぜひとも読んでおいて損はないと思いました。
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