見出し画像

ターミネーターが百合?やれやれまたオタクの誇張表現か…と思ったので見てきた話

私は百合のオタクとしてさまざまなところから百合の情報を仕入れるようにしているが、そのうちの最たるところがTwitterだ。

百合好きな方でTLを構築するのはもちろん、百合関係の情報を発信してくれる専門アカウントも別でリストに入れてチェックしており、気になる作品があればすぐに調べたり試し読みをするようにしている。数年前から百合関連の書籍やコンテンツはグっと数が増え始め、なかなか一人では情報を集めるのが難しい昨今、こういった同好の士の存在は非常にありがたい。(尚、別でマシュマロにて情報提供もいただいており、こちらもとても助かっている)

そんなある日、私のTLにある情報が流れ始めた。

『ターミネーター見たけど百合だった』

『ターミネーターは百合!今すぐ見に行け!』


今現在そこまで映画フリークというわけでもない私はこれでターミネーターの新作が公開されていることを知ったのだが、この情報を見た時、始めは正直「マジで?」と半信半疑どころか疑が7割くらいの感情だった。

というのも、Twitterを見ている方はヤギ子に百合(と嘔吐)以外のイメージがない方がほとんどかと思うが、実は百合にハマる前は映画を良く見ており、ターミネーターは私にとっても良く知る映画シリーズの一つだった。よってターミネーターがどのようなストーリーで、どのような作風かもそれなりに分かっているつもりだったのだが、それが百合と言われたとき、あまりにもその2つが結びつかなすぎて、「さすがに嘘だろ」と思わずにはいられなかったからだ。

正直なところ、百合のオタクの方々の情報は非常に助かっている反面、こういった一般作品における「◯◯は百合!」系の情報は非常に眉唾なケースも少なくないと思っている。私も自戒しているが、インターネットでは誇張したり大げさに言ったりするほうが拡散されたりウケたりする傾向にあるため、どうしても1の情報をあたかも10のように言う方も多いのだ。(何度も言うが自戒はしている)

よって「◯◯って百合なんだ!見てみよ!」と信じて見に行ったり読んだりした結果、「正直そこまで百合ではなかったな…」と肩透かしを食らうパターンを、私は以前から何度も経験してきた。もちろんその方が嘘を言っているわけではなく、単に私の好みに合わなかったものもあることにはあるが、どう考えてもそれだけではないケースもあり、「せっかくの百合好きの情報なのに逆に信じられない」というパラドックス的な懐疑心がいつしか私の内には芽生えてしまっていたのだ。(それだけに自らの発信する情報精度には特に気を使っているつもりだ)

しかしながら情報網が発達している昨今、少し調べれば複数の方の感想は見当たるし、書籍であれば試し読みが見つかることも多いため、以前に比べればそういった言及に惑わされることも少なくはなっていた。よって今回もすぐ「ターミネーター 百合」でTwitter検索をかけてみたのだが、それなりに言及している方も多く、しかもガッツリ百合のオタクというわけでもなさそうな方でも同様の発言をされていたりと、なるほど確かに多くの方にそう思わせるだけの何かはありそうだということはすぐに理解できた。

ただ、あのターミネーターが???というところがさすがにまだ信じられなかった私は、もう少しだけこの映画の情報を調べてみることにした。

『ターミネーター』シリーズとは

あまり説明する必要もない気がするが、このシリーズはざっくり言うと『人間 vs 機械の戦争が行われている未来から、機械軍にとって厄介な人間側の重要人物を消すために、過去にターミネーターと呼ばれるロボット兵器が送り込まれ、それを阻止する人間側が送り込んだ兵士それに守られる主人公を描いたバトルアクション映画』と言ったところだ。

無題

ちなみに84年の1作目から計5作が制作されているが、2がめちゃくちゃヒットした有名作で、正直2しか見たことないという方も多いんじゃないかと思う。かくいう私も全てのシリーズは見ておらず、2は6~7回以上は見たが、1は一回だけ、3も一回は見たがあんまり覚えていないという具合だ。

よって主に2のイメージから話すが、このシリーズは恐ろしく強いターミネーターから主人公達が逃亡し、反撃し、多くの犠牲を伴いながら何とかギリギリ勝利するという緊迫感のある内容になっており、いつターミネーターが襲ってくるか、何故狙われているのか、どうやって倒せば良いのか…そういった手に汗握るハラハラドキドキ感が一つの売りと言えるだろう。

また、ターミネーター=シュワちゃんというイメージが強いと思うが、そこから想起されるように、基本的にはアクションシーンが見せ所のかなり肉体派の映画であり、そういったところが全くこの作品と百合が結びかない理由の一つでもあった。

※ちなみに、一応話題作なのでいろんな方に見られることを想定して書いておくが、『百合』とは狭義の意味では「女性同士の恋愛関係」を表す言葉だが、現在百合を愛好する者たちの間では「女性同士の何らかの特別な結びつき及び感情」という広義の意味で使われることが多く、その点をご留意いただきたい。今回も特に恋愛という意味で使ってはいない。

普段映画を見に行く際にあまり多くの情報を仕入れることはしない派の私だが、そういったイメージのつかなさと、ほぼ2の記憶しか無いけど大丈夫か?という2点が気になっていたため、今回ばかりは映画の公式サイトを訪れることにした。

今回の新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』について

調べて一番「へえ!」と思ったことが、この新作が「2の続編として作られている」ということだ。細かい背景はここでは省くが、何度も見て完璧に頭に入っている2の続編であるなら予習無しでも問題なさそうだとすぐに安心できた。

そして設定を見た時に百合だと言われている理由に合点がいったのだが、今作は守られる主人公及びそれを守る未来から来た兵士両方女性なのだ。

画像2


この左のダニーが守られる主人公であり、右のグレース未来から来た兵士である。そして何を隠そう、この二人こそが今回「ターミネーターが百合だった」と言われる理由を一手に引き受けているキャラクターたちだ。

守り、守られる関係というのは関係性としても鉄板ではあるし、ターミネーターシリーズにおいてもここのポジションに置かれる二人には何らかの絆が芽生えていると思う。(というか、1ではベッドシーンになってたしね)(まあそれがわりと物語上重要なことではあるのだけど) 

よってさすがの私もこの時点で「へえ~いいやんけ」とこの映画を見るには十分な期待を持つことが出来た。

あとここは百合とは関係ないのだが、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンがめちゃくちゃかっこいいというのも興味を引くポイントの一つだ。

画像3


詳しい説明は省くが「ターミネーター全部殺すウーマン」と化したスーパーおばあちゃんの存在は、間違いなくこの作品の魅力の一つだろう。戦う婆さんはかっこいいと玄海で学んだ。(幽白ね)

画像4


とまあこういう形で、わりと女性がメインで活躍する映画である。こういうところも百合好きにとってはポイントが高いのではないだろうか。

で、実際百合なの?というところだが、まあお分かりの通り、ヤギ子としてもこのような記事を書く程度には「ターミネーターは確かに百合だった」と言える内容だった。

ただ、具体的にどう百合なのか?というところが最も肝心かと思われるため、以下ネタバレの無い範囲での紹介と、後半には見た方向けにネタバレ有りの感想パートをお送りする。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』はこういう百合(ネタバレ無し版)

まず映画の公式サイトに書かれている範囲+核心に触れない程度の情報のみで紹介していこう。それすら嫌という方はこんな記事を読んでないで今すぐ見に行くことをオススメする。

登場人物の一人、守られる側の「ダニー」は、自動車工場で勤務するごく普通の一般人だ。今回突然ターミネーターの襲撃を受けることになるが、何故自分がそんなことになってしまったのかも全く分からない。ここは視聴者である我々も同じであり、物語が進むにつれダニーと共に真相を知ることになっていく。

そして守る側の「グレース」は未来から来た強化型人間と呼ばれる兵士だ。少しの傷はもろともせず、数分間という制限付きだがめちゃくちゃに強い機械のターミネーターとも互角に渡り合うだけの戦闘能力を有している。目的はダニーをターミネーターから守ることであり、あらゆる手段でダニーを生かすために奮闘する。

まず特筆すべきはこのグレースの、命がけでダニーを守ろうとする騎士精神である。もちろんそれが任務なので当たり前ではあるが、それ以上にダニーに対して何かしらの特別な思い入れを感じさせる程度には、序盤からとにかくダニーの護衛に全てを注いでいる。

そのあたりの理由は視聴者もダニーも序盤ではまだ分からないので、「何故は分からないし目的も分からないがとにかく守ってくれる強い人」としてグレースの存在は映るのだが、その様子は我々の業界で言うとちょっとまどマギの暁美ほむらっぽいと感じる方もいるのではないだろうか。そういう意味で序盤は微妙にまどほむ的要素が10%くらい感じられるような関係性だと思ってもらえるとイメージしやすいかもしれない。(全然感じられなかったらゴメン)

しかしながらこの要素だけではこのダニーとグレースの関係性、及び何故ターミネーターが百合と言われるのかという理由には足先ぐらいしか踏み入れていない。実際は「グレースにとってダニーとはどういう存在なのか?」という部分が明かされる中盤以降で関係性の解像度がグっと上がるのだが、残念ながらさすがにネタバレなのでこの段ではそれについて話すことは出来ない。

ただし、物語が進むにつれ逆に「ダニーにとってグレースはどういう存在になっていくのか?」という部分も変化があるという点は付け加えておきたい。よって、お互いにとってお互いが特別な何かしらの関係である・になるという描写があることは保証するし、またそれが物語上も大きな鍵になることも補足しておこう。このあたりが「ターミネーターは百合」と評判になっている大きな理由であると思う。

さて、詳しく話せない中でなかなかお伝えするところが難しかったのだが、少しでも興味をもっていただけただろうか?ちなみにターミネーターシリーズを見ていない方でも、この記事に書いてある内容ぐらいを知っておけば問題ないと思う。(もちろん2を知っている方ならより楽しめると思うが)

「ターミネーター」「百合」という一見交わらなさそうな題材だが、その2つが交わったとき、こんなにも強大なSF百合要素のある作品になるのかとなかなか味わえないような良質な体験がそこにあるので、もしご興味を持っていただけた方は是非とも劇場に足を運んでほしい。

以下、蛇足ながら私のネタバレ感想を書いておくので、視聴前の方はここまでだ。それでは。

ヤギ子Twittterもよろしくね










ネタバレ感想:『ターミネーター:ニュー・フェイト』

さて、まず映画全体の感想だが、個人的にはなかなか満足度の高い作品だった。序盤から明らかに「T2」を意識した構成になっており、ああこれは「T2」の再演をやろうとしているんだなということがすぐに分かったため、見る側としてもそういう姿勢になって見ることが出来た。(例えば工場から抜け出してカーチェイスになる場面で、トラックから飛び移ってきたREV-9が車の後ろにしがみつくところとかT2のオマージュだなと思うし)

REV-9についてはT-1000のほうがさすがにインパクトがあったかな、という感じだった。ドロドロの黒さの不穏さや耐久性、分裂といった手強さはあったが、T-1000はT-800からの進化の衝撃と表情の無さからくる不気味さみたいなものが際立っていたので、キャラ立ち的にはT-1000に軍配が上がっていたと思う。

あとサラ・コナーとT-800は本当にファンサービスという感じで良かった。もちろん話の構成として無くてはならない存在だけど、最悪どうとでもなる立ち位置ではあると思うし。風貌はすっかり変わった二人だけど、十分に魅力的だったと思う。(家庭を持っていたT-800にはちょっと笑ったが)


で、だ。


そんなことはぶっちゃけどうだっていい。百合だよ百合。もう一回言っておこう。


確かにターミネーターは百合だった。



たぶん数年前の自分に「お前2019年にターミネーターは百合だったって言ってるぞ」って言っても信じないと思う。それくらい衝撃的な現象だった。

いやとにかく関係性の構造がお上手だなと思う。ダニーにとってグレースは自分を救う救世主であると当時に、グレースにとってはダニーが自分を救ってくれた救世主でもあるという構図は、関係性を生業としている我々にとっては素晴らしいの一言につきるだろう。

特に未来のシーンでダニーがグレースから名前をきいたときの反応は、それと知っている者だけが分かる程度の繊細な表情やセリフの変化でその時のダニーの心情を表しており、恐らく万感の思いであっただろうがそれを飲み込み、しかしわずかにそれが表れているのが分かるという、些細ではあるものの演者さんの演技力の高さに思わず感心してしまうシーンだった。

また、ターミネーターシリーズの展開的にも恐らくグレースは死別してしまうのだなということが途中からじわじわと感じられるのだが、結果としてグレースが最期に命を委ねたのがダニーであったというところも悲しくはあるが熱い展開の一つではある。グレースが命を救ってもらったのもダニーであることを思うと、その瞬間からずっとグレースの命はダニーと共にあったとも言えるのだろう。

そしてラストシーン、自分と出会う前の、もしかすると未来によっては自分と出会わないかもしれないグレースを温かな眼差しで見つめ、もう二度と死なせないという決意を胸に運命へと立ち向かっていくダニーのシーンはこの物語の締めとして相応しいものだったように思う。『ターミネーター:ニュー・フェイト』は1作目から続く人間と機械の戦いというテーマに加え、人間ドラマとしても魅力的な作品であった。


ちなみに。


ネットを検索していると下のような記事がヒットしたのだが、実際本作はレビューの段階から「女性同士の親密な関係性」が取りざたされることが多かったそうだ。

この「女性同士の親密な関係性」という表現がなるべく具体的な言及を避けたギリギリの言い回しのようでかなり面白いのだが、言ってしまえば上記で言うところの狭義の百合=女性同士の恋愛要素に近い何かということだろう。

監督やキャストさんの語るところによればそのような意図はないということだが、それは私としてもそのように解釈することは確かに物語の本質からは少しズレてしまうだろうと考える。(もちろんそう考えることは自由だが) それよりもダニーとグレースの巧妙な関係性の構造や、それにまつわるドラマティックな展開に我々としては舌鼓を打つというほうが、素材の味をそのまま活かして楽しめるのではないかと思うし、それは十分に我々の好きな「百合」の範疇だろう。

さて、この作品のなかなかニクいところが、こうなってくるともう一回見たくなるというところだ。特に現代でダニーと出会ってからのグレースの表情や行動、セリフなどをもう一度見ると、恐らくまた何か発見があるのではないかと思う。映画に限らず同じ話を2回見ることはあまりしない(1回目の体験を反芻したい派なので)私だが、機会があればもう一度見てみるのもアリだなと思っている。

ちなみにノリで3年前の『貞子 vs 伽椰子』ぶりにMX4Dで見たのだが、こっちで見て良かったなと思う程度にはわりと良かった。初めはガタガタいって気が散らないかなと思ったのだが、ほどよく画面の臨場感とマッチして個人的にはなかなか楽しむことが出来た。でも数年に一回程度でいいね。高いし。(2,900円)

あ、恩人に手出しが出来ないグレースをひっくり返してのダニー攻めでお願いします。(オ~~イ)


ヤギ子Twitterもよろしくね(再)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?